• 2025年4月10日

健康診断で「脂肪肝」と言われたら? あきらめないで!生活習慣の見直しで未来は変わるかも

健康診断の結果を見て、「脂肪肝ですね」と言われた経験はありませんか? あるいは、「肝臓の数値が少し高いですね」「中性脂肪が多いです」といった指摘を受け、気になっている方もいらっしゃるかもしれません。

「特に症状もないし、お酒もそんなに飲まないし、大丈夫だろう…」

そう思いたくなる気持ち、よくわかります。でも、脂肪肝は「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓からの、静かな、しかし見逃せないサインかもしれません。放っておくと、将来的に思わぬ病気につながる可能性も…。

でも、心配しすぎないでください! 脂肪肝は、多くの場合、生活習慣を見直すことで改善が期待できるのです。

この記事では、脂肪肝とは何か、その原因やリスク、そして今日から始められる具体的な改善のヒントまで、わかりやすくお伝えしていきます。健康診断の結果を、ご自身の体と向き合う良いきっかけにしてみませんか?


そもそも「脂肪肝」ってどんな状態? なぜなるの?

脂肪肝とは、その名の通り、肝臓に中性脂肪が過剰にたまってしまった状態のこと。美食家が好むフォアグラをイメージすると、少し分かりやすいかもしれません。健康な肝臓の脂肪の割合は通常5%程度ですが、脂肪肝ではそれ以上に脂肪が蓄積しています。

脂肪肝になる原因は、大きく分けて2つあります。

  1. 飲みすぎが原因:「アルコール性脂肪肝」

長年にわたる過剰な飲酒は、肝臓でのアルコール分解に大きな負担をかけ、中性脂肪の合成を促し、分解を妨げます。その結果、肝臓に脂肪がどんどんたまってしまうのです。

  1. 飲みすぎ”以外”が原因:「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」

実はこちらが、近年、食生活の欧米化や運動不足などを背景に急増しています。主な原因は、食べ過ぎ(特に糖質の過剰摂取)、運動不足、肥満、糖尿病、脂質異常症などです。お酒をあまり飲まない方、あるいは全く飲まない方でも発症します。意外かもしれませんが、痩せている方でも筋肉量が少ない場合や、無理な食事制限によるダイエットが原因で「低栄養性脂肪肝」になることもあります。

ちょっと待って!「NAFLD」の中にも要注意なタイプが…

「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と診断されても、「ただ脂肪がたまっているだけでしょ?」と軽く考えてはいけません。NAFLDの中には、単に脂肪がたまっているだけでなく、肝臓に炎症が起こり、徐々に線維化(組織が硬くなること)が進んでしまうタイプがあります。これを「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:ナッシュ)」と呼びます。

NASHは、自覚症状がないまま、肝硬変や肝臓がんへと進行してしまう可能性があるため、特に注意が必要です。NAFLDと診断されたら、自分がNASHのリスクがあるのかどうか、医師に確認することも大切です。


脂肪肝のリスクは肝臓だけじゃない? 知っておきたいこと

脂肪肝を放置するリスクは、肝硬変や肝臓がんだけではありません。

  • 生活習慣病との深い関係: 脂肪肝(特にNAFLD/NASH)は、糖尿病、高血圧、脂質異常症といった他の生活習慣病を合併しているケースが多く見られます。
  • 心臓や血管への影響: 脂肪肝は、動脈硬化を進め、心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる心血管疾患のリスクを高めることもわかってきています。

つまり、脂肪肝を改善することは、肝臓だけでなく、全身の健康を守ることにもつながるのです。


どうやって見つけるの? 脂肪肝のサインと診断

肝臓は「沈黙の臓器」。脂肪がかなりたまっていても、初期段階ではほとんど症状が出ません。だからこそ、定期的な健康診断が早期発見の鍵となります。

  • 健康診断でのチェック項目:
  • 血液検査: 肝臓の細胞がダメージを受けると、AST(GOT) や ALT(GPT) といった酵素が血液中に漏れ出して数値が上昇します。γ-GTP はアルコールの影響や脂肪の蓄積、胆汁の流れの異常などで高くなりやすい指標です。これらの数値が基準値を超えている場合は、脂肪肝の可能性が考えられます。
  • 腹部超音波(エコー)検査: 超音波を当てて肝臓の状態を見る検査です。脂肪がたまっている肝臓は、健康な肝臓に比べて白っぽく(輝度が高く)映し出されます。脂肪のたまり具合(軽度・中等度・高度)を評価することもできます。

診断の注意点

血液検査の数値が正常範囲内でも、エコー検査で脂肪肝が見つかることは珍しくありません。逆に、軽度の脂肪肝はエコーではっきりわからないこともあります。また、これらの検査だけではNASHかどうか(炎症や線維化の程度)を正確に判断するのは難しい場合もあります。気になる場合は、必ず医師に相談し、必要に応じてさらに詳しい検査(線維化マーカーの血液検査や、肝臓の硬さを測る特殊なエコー検査など)について尋ねてみましょう。


あきらめないで!脂肪肝は改善できる!生活習慣改善【5つのポイント】

「脂肪肝って言われたけど、どうすればいいの…?」

大丈夫です。脂肪肝の治療には特効薬はありませんが、生活習慣の改善こそが最も効果的で重要な治療法です。今日からできること、たくさんありますよ!

【ポイント1:食生活を見直そう!】

脂肪肝改善の最大のカギは、日々の食事にあります。

  • 「糖質」の摂りすぎにストップ!: 「脂肪」肝という名前ですが、実は脂質の摂りすぎよりも「糖質」の過剰摂取が大きく関わっています。ご飯、パン、麺類などの主食は適量を心がけ、甘いお菓子や菓子パン、ジュースなどはできるだけ控えましょう。特に果物に含まれる「果糖」も、摂りすぎると中性脂肪に変わりやすいので注意が必要です。
  • 飲み物にも注意信号: コーラなどの清涼飲料水、スポーツドリンク、甘い缶コーヒー、加糖ヨーグルト、野菜ジュース(果糖が多いものも)など、飲み物には意外なほど多くの糖分が含まれています。普段の飲み物は、水、お茶、無糖のコーヒー・紅茶などに切り替えるのがおすすめです。
  • 食物繊維は頼れる味方: 野菜、きのこ類、海藻類に豊富な食物繊維は、糖質の吸収を穏やかにして血糖値の急上昇を防いだり、お通じを良くしたりする効果が期待できます。毎食、意識してたっぷり摂るようにしましょう。食事の最初に野菜から食べる「ベジファースト」も効果的です。
  • バランス良く、ゆっくりと: 特定のものを極端に制限するのではなく、主食(適量)、主菜(タンパク質:肉、魚、大豆製品、卵)、副菜(野菜など)をそろえ、バランス良く食べることが大切です。そして、ゆっくりよく噛んで食べることで、満腹感を得やすくなり、食べ過ぎを防ぐことができます。
  • 加工食品とは距離を置く: スナック菓子、インスタント食品、ファストフードなどは、糖質や脂質、塩分が多いだけでなく、添加物などが肝臓の解毒作業に負担をかける可能性も。できるだけ素材を活かしたシンプルな調理法を心がけましょう。
  • 夜遅い食事は肝臓に負担: 就寝前に食べたものはエネルギーとして消費されにくく、脂肪として蓄積されやすいです。夕食は寝る3時間前までには済ませるように心がけましょう。

【ポイント2:体を動かす習慣を!】

運動は、たまった中性脂肪を燃焼させ、インスリン(血糖値を下げるホルモン)の働きを良くするなど、脂肪肝改善に多くのメリットがあります。

  • 有酸素運動で脂肪燃焼!: ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、水泳など、「少し息が弾むけれど、おしゃべりはできる」程度の有酸素運動がおすすめです。まずは1日30分程度、週に3回以上を目標に始めてみましょう。通勤時に一駅分歩く、エレベーターではなく階段を使うなど、日常生活の中でこまめに体を動かす「ながら運動」も効果的です。
  • 筋トレで代謝アップ!: 筋肉はエネルギーをたくさん消費してくれる工場です。筋肉量を増やすことで基礎代謝が上がり、脂肪が燃えやすい体になります。スクワットや腹筋、腕立て伏せなど、自宅でできる簡単な筋トレを週に2~3回取り入れると、さらに効果アップが期待できます。
  • 続けることが何より大切: 大切なのは無理なく、楽しく続けられること。急に激しい運動を始めると怪我の原因になったり、すぐに挫折してしまったりすることも。ご自身の体力に合わせて、少しずつステップアップしていきましょう。

【ポイント3:アルコールは賢く付き合う(アルコール性脂肪肝の場合)】

アルコールが原因の脂肪肝の場合は、何よりもまず「禁酒」または「節酒」することが絶対条件です。完全に断つのが難しい場合でも、飲む量と頻度を大幅に減らす必要があります。どのくらいまでなら大丈夫かは、肝臓の状態によって異なりますので、必ず医師に相談しましょう。

【ポイント4:適切な体重管理を】

肥満がある場合は、減量することが脂肪肝改善に直結します。ただし、急激な減量はかえって肝臓に負担をかけたり、筋肉量を減らしてしまったりするためNGです。1ヶ月に1~2kg程度のゆるやかなペースで、健康的に体重を落としていくことを目指しましょう。

【ポイント5:ストレスを溜めない工夫も】

直接的な原因ではありませんが、ストレスは過食や飲酒につながりやすいもの。自分なりのリラックス法を見つけ、ストレスを上手に解消することも、生活習慣改善を続ける上で大切です。


健康診断は、未来を変えるチャンス

「脂肪肝」という診断は、少しショックかもしれませんが、それは決して「手遅れ」のサインではありません。むしろ、「今ならまだ間に合うよ」「生活を見直すチャンスだよ」という、あなたの肝臓からのメッセージと捉えてみませんか?

脂肪肝は、日々のちょっとした心がけや生活習慣の見直しで、改善が十分に期待できる病気です。健康診断の結果をきっかけに、ご自身の食生活や運動習慣を振り返り、できることから一つずつ、楽しみながら始めてみてください。

あなたの体のために、今日も文句も言わずに黙々と働き続けてくれている大切な肝臓。これからはあなたが、その頑張りに応えて、優しく労ってあげてくださいね。未来の健康は、今日のあなたの選択にかかっています。

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