- 2025年7月10日
脂肪肝から肝硬変に進んでしまった…。「もう治らない」と諦める前に知ってほしい、肝臓の線維化と再生医療の話

「健康診断ではただの脂肪肝だったはずなのに、いつの間にか肝硬変にまで進んでしまった…」
「もう治らないと医者に言われて、絶望しています…」
もしあなたが今、このような後悔や深い絶望感を抱えているなら、そのお気持ち、痛いほどよく分かります。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、症状が出にくいため、気づいた時には病気が進み、肝硬変と診断されるケースも少なくありません。
これまでの肝硬変治療は、残念ながら硬くなってしまった肝臓を元の柔らかい状態に戻すのではなく、病気の進行を少しでも遅らせ、症状を和らげることが主な目的で、「根本的に治すのは難しい」と考えられてきました。
しかし、医学は日々進歩しています。近年、「再生医療」という新しいアプローチが、肝硬変治療に大きな希望の光をもたらそうとしています。「もう治らない」と諦めてしまう前に、ぜひ知っていただきたい情報です。
肝臓の「線維化」とは何か?なぜ「元に戻らない」と言われるのか

肝硬変とは、B型肝炎やC型肝炎といったウイルス感染、長期間にわたるアルコールの飲みすぎ、あるいは近年増えているアルコールとは無関係に起こる脂肪肝(特にNASH:非アルコール性脂肪性肝炎)などが原因で、肝臓に慢性的な炎症が起こり、その結果、肝臓全体が硬く変化してしまった状態を指します。
炎症によって肝臓の細胞が壊れると、体はそれを修復しようとしますが、その過程で「線維(せんい)」という硬い組織がたくさん作られてしまいます。この線維が増えすぎると、肝臓は弾力を失ってゴツゴツと硬くなり、血液の流れも悪くなります。
その結果、肝臓本来の重要な働き(栄養の代謝、有害物質の解毒、胆汁の生成など)が十分にできなくなり、黄疸、むくみ、腹水、意識障害(肝性脳症)といった様々な症状が現れてきます。さらに、肝臓がんが発生するリスクも非常に高くなる、深刻な状態なのです。
かつて、一度線維化が進んだ肝臓は「元に戻らない」と言われてきたのは、現在の標準的な薬物療法では、線維組織そのものを直接分解したり、肝臓を元の柔らかい状態に修復したりする薬剤がなかったためです。一般的な治療は、腹水を減らす利尿剤、肝性脳症を改善する薬、かゆみを抑える薬といった対症療法や、原因疾患(ウイルス性肝炎など)への治療が中心でした。根本的な機能回復には「肝臓移植」という選択肢もありますが、ドナー不足や年齢・身体的制限、高額な医療費など、多くの課題があるのが現実です。
しかし、希望はあります。肝臓の線維化そのものに働きかける再生医療

標準治療の限界を前に、「もう治らない」と絶望している方もいらっしゃるかもしれません。しかし、近年の医学の急速な進歩により、希望は確実に存在します。
こうした状況の中で、大きな期待を集めているのが「再生医療」、特に「幹細胞(かんさいぼう)」を用いた治療です。
幹細胞とは、私たちの体の中にある特殊な細胞で、様々な種類の細胞に変化する能力(分化能)と、自分自身を複製する能力(自己複製能)を持っています。この幹細胞の力を利用して、傷ついた臓器や組織の機能を回復させようというのが、再生医療の考え方です。
再生医療、特に「(自己脂肪由来)幹細胞点滴療法」は、従来の治療法とは異なり、肝臓の線維化そのものに働きかける可能性を秘めている点が、最大の希望として注目されています。
点滴で投与された幹細胞には、以下のような働きによって、傷ついた肝臓の回復を助ける可能性が期待されています。
- ホーミング効果: 幹細胞は、体の中で炎症が起きている場所や傷ついた場所に自然と集まっていく性質があります。
- 抗炎症作用: 肝臓で起きている慢性的な炎症を抑える働きがあります。炎症が線維化の大きな原因であるため、これを抑えることは非常に重要です。
- 線維化抑制作用: 肝臓が硬くなる原因である線維組織の生成を抑える可能性があります。これにより、肝臓の線維化の進行を食い止めることが期待されます。
- 組織修復促進: 傷ついた肝細胞の修復を助けたり、新しい血管の形成を促したりする物質を分泌します。このパラクリン作用により、肝臓が持つ本来の回復力を高めることに繋がります。
この幹細胞点滴療法は、肝機能の改善や線維化の進行抑制、だるさなどの自覚症状の緩和といった効果が期待され、研究が進められています。ご自身の細胞を使うため、拒絶反応のリスクがないというメリットもあります。
硬くなった肝臓にアプローチできる可能性がある治療について、一度詳しく聞いてみませんか?

脂肪肝から肝硬変に進んでしまったことへの後悔や、未来への絶望感は、決して一人で抱え込む必要はありません。
「もう治らない」と諦めてしまう前に、肝臓の線維化への新たなアプローチを可能にする再生医療は、あなたの肝臓の機能を回復させ、生活の質を取り戻すための希望となり得る治療法です。
当院では、再生医療に関するCuronを利用したオンライン事前相談も受け付けております。硬くなった肝臓にアプローチできる可能性がある治療について、ぜひ一度、専門医にご相談ください。