• 2025年2月22日
  • 2025年10月7日

肝硬変の最新治療法と研究の進展

再生医療が切りひらく新たな可能性

こんにちは、さいとう内科クリニックの院長、斉藤雅也です。
肝硬変は、肝臓の線維化が進行し、肝機能が著しく低下する慢性疾患です。全世界で約5,000万人以上が罹患しており、進行すると肝不全や肝がんのリスクが高まる深刻な病態です。現時点で根治的治療法は肝移植のみですが、ドナー不足が大きな課題となっており、新たな治療法の開発が求められています。
近年、再生医療の進展により、肝硬変に対する革新的な治療法が登場しつつあります。最新の研究成果をもとに、肝硬変治療における新たな希望となるアプローチをご紹介します。


1. iPS細胞由来の肝臓オルガノイド移植による新たな治療法

東京大学医科学研究所と横浜市立大学の研究グループは、ヒトiPS細胞を用いた肝臓オルガノイド移植により、肝線維化(肝硬変)の改善が可能であることを発見しました。

肝臓オルガノイドとは?

オルガノイドとは、幹細胞を特定の条件下で培養することで、臓器の組織構造や機能の一部を再現した細胞構造体です。従来の人工的な肝細胞とは異なり、より生体に近い構造を持つため、肝臓の機能回復が期待されています。

iPS細胞由来の肝臓オルガノイドがもたらす革新

本研究では、ヒト肝前駆細胞、ヒト血管内皮細胞、ヒト間葉系細胞の3種類を用いて、新たな肝臓オルガノイドを開発しました。これを移植することで、肝線維化が改善されることが確認されました。
従来の治療法とは異なり、単に細胞や臓器の機能を補助するのではなく、免疫制御を介して肝臓の炎症を抑えることで線維化を改善するという新たな治療コンセプトが提案されています。

どのように肝硬変を改善するのか?

  • iPS細胞から作製した肝臓オルガノイドを肝硬変モデルに移植すると、炎症抑制性マクロファージ(M2マクロファージ)が誘導される。
  • これにより、肝臓内の炎症が抑制され、線維化の進行がストップ。
  • 移植後、肝機能や生存率の改善が認められた。

この研究成果は、肝移植に代わる新たな治療法としての可能性を示唆するものであり、今後の臨床応用が期待されています。


2. 肝星細胞の炎症機構を標的とした新たなアプローチ

肝硬変の進行には、肝星細胞と呼ばれる細胞が重要な役割を果たしていることが知られています。東京医科歯科大学の研究チームは、肝星細胞が肝硬変を引き起こすメカニズムを解明し、新たな治療標的としての可能性を発見しました。

肝星細胞とは?

肝星細胞は、ビタミンAを貯蔵する役割を持つ肝臓の細胞ですが、慢性肝炎や肝障害が起こると活性化し、肝線維化を促進するコラーゲンを過剰に産生してしまいます。

炎症性肝星細胞の抑制がカギ

研究チームは、肝星細胞の中でも特に炎症を進行させる「炎症性肝星細胞」に着目し、以下の重要な発見をしました。

  • A20という分子が、肝星細胞が炎症性に変化することを抑制。
  • A20が欠損すると、炎症促進物質(ケモカイン)が異常に増加し、肝炎が悪化。
  • さらに、炎症を引き起こすリン酸化酵素「DCLK1」を特定し、これを抑制することで炎症の抑制が可能に。

この研究成果により、DCLK1を標的とした新たな肝硬変治療薬の開発が進められています。


3. 肝硬変の治療はどこまで進んでいるのか?

現在、肝硬変の治療は薬物療法と生活習慣の改善が中心ですが、進行した肝硬変には限られた治療法しかありません。しかし、今回紹介したiPS細胞を用いた再生医療や肝星細胞を標的とした新薬開発が進むことで、これまで困難だった肝線維化の改善が現実になるかもしれません。

今後の展望

  • iPS細胞技術のさらなる進化 肝臓オルガノイドの移植技術が進めば、肝移植を必要とせずに肝機能を回復させる治療が可能になるかもしれません。
  • 新たな分子標的治療薬の開発 DCLK1を標的とした薬剤が開発されれば、慢性肝炎の段階から早期に治療を開始し、肝硬変への進行を防ぐことができる可能性があります。

近年の研究により、肝硬変治療において大きなブレークスルーが生まれつつあります。 特に、iPS細胞由来の肝臓オルガノイド移植や炎症性肝星細胞を標的とした治療は、これまで治療が困難だった肝線維化を改善する可能性を秘めています。肝硬変は、まだ完全に治癒できる疾患ではありませんが、再生医療と分子標的治療の発展により、新たな治療法が現実になる日もそう遠くはないかもしれません。今後も肝硬変治療の最新情報をお届けしていきますので、ぜひご注目ください。


参考文献・情報元
東京大学医科学研究所・横浜市立大学「ヒトiPS細胞由来肝臓オルガノイド移植による肝線維化治療法の開発」

東京医科歯科大学「肝星細胞による炎症機構の解明と肝硬変の治療へとつながる発見」

Science Translational Medicine, The FASEB Journal


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