• 2025年12月1日

痩せ型でも安心できない!「沈黙の臓器」肝臓が硬くなる前に知るべき3つの危険


神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、非常に我慢強い臓器です。そのため、病気がかなり進行するまで、私たちに分かりやすいSOSサインを出してくれません。「最近、なんとなく疲れているだけ」と見過ごしがちな不調の裏で、肝臓では静かに、しかし確実に病気が進行している可能性があります。

特に、現代の食生活と深く関わる「脂肪肝」は、「ただ脂肪がついているだけ」と軽く見られがちです。しかし、これを放置すると肝臓に炎症が起き、やがて肝臓が硬くなる「肝硬変」や「肝臓がん」、さらには心筋梗塞や脳梗塞といった全身の病気につながる恐れがあるため、厳重な注意が必要です。


1.「痩せているから大丈夫」は通用しない!隠れた肝臓リスク

脂肪肝の原因といえば、肥満、アルコール、糖尿病が三大原因とされています。しかし、「太っていないから自分には関係ない」と思い込むのは危険です。 実は、日本人を含むアジア人は、欧米人に比べて肝臓で脂肪を燃やす力が弱く、痩せ型であっても肝臓に脂肪を溜め込みやすい体質だと言われています。

痩せ型でも脂肪肝になる「隠れた原因」

  • 筋肉不足による「隠れ肥満」: 体重が軽くても、筋肉が極端に少ない状態です。筋肉はエネルギーを消費する工場のようなものなので、筋肉が少ないと代謝が落ち、食べたエネルギーが脂肪として余りやすくなります。
  • 食生活の偏り: 痩せていても、菓子パンやジュース、加工食品など、糖質やカロリーの高いものを好んで食べていませんか?特にジュースなどに含まれる「果糖」は、肝臓で直接脂肪に変わりやすいため注意が必要です。

さらに重要なのは、痩せ型の脂肪肝は、太っている人の脂肪肝よりも、炎症を伴う「MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)」という危険な状態に進みやすいという点です。 MASH(マッシュ)は、放置すると肝臓が硬くなる肝硬変や、肝臓がんに直結します。「痩せているから」と油断している人こそ、早めの対策が必要なのです。


2. 肝臓を救う3つの習慣:食事、運動、そして栄養素

脂肪肝の改善には、生活習慣の見直し、特に食事と運動の改善が最も重要かつ効果的です。

食事の「質」と「食べ方」を変える

1.糖質と脂質のコントロール: 脂っこい食事だけでなく、ご飯やパン、麺類などの主食、そして甘いお菓子やジュースといった「見えない糖質」の摂りすぎを控えましょう。

2. 「ベジファースト」と「よく噛む」: 食事の最初に野菜を食べることで、血糖値の急上昇を防げます。また、早食いは満腹を感じる前に食べ過ぎてしまう原因です。一口30回を目安によく噛み、ゆっくり味わって食べましょう。

3. 肝臓の味方になる食材: 傷ついた肝臓の修復には、良質なタンパク質(青魚、大豆製品、鶏むね肉など)が必要です。また、野菜、きのこ、海藻類に含まれる食物繊維は、体の掃除役として働きます。

4. ビタミンEを積極的に: アーモンドやウナギなどに含まれるビタミンEには、肝臓の炎症や線維化(硬くなること)を防ぐ効果が期待されています。ただし、サプリメントからではなく、なるべくそういった食材から摂取しましょう。

運動と意外な助っ人

1.有酸素運動: ウォーキングや軽いジョギングを「1日30分、週3回以上」行うのが目安です。肝臓にたまった脂肪を燃やしましょう。

2.筋力トレーニング: スクワットなどで筋肉量を増やすと、基礎代謝が上がり、自然と脂肪が燃えやすい体になります。

3.コーヒー: 実は、コーヒーに含まれるクロロゲン酸には、肝臓の炎症を抑える効果があるという研究結果があります。1日1~2杯、砂糖なしで飲むのがおすすめです。

4.十分な休息: 横になって寝ている姿勢は、立っている時よりも肝臓への血流が1.5倍に増えます。しっかり睡眠をとることは、それだけで肝臓の修復・再生につながります。


3.「もう治らない」と諦めない:硬くなった肝臓と再生医療

肝硬変とは、慢性的な炎症が続いた結果、肝臓の中に線維(コラーゲンのようなもの)が増えすぎて、全体が岩のように硬くなってしまった状態です。 これまで、一度硬くなってしまった肝臓を、薬や食事だけで元の柔らかい状態に戻すことは非常に難しいとされてきました。 病気が進み、肝臓が機能を果たせなくなると(非代償性肝硬変)、黄疸(白目や体が黄色くなる)、腹水(お腹に水が溜まる)、肝性脳症(意識がもうろうとする)といった重い症状が現れ、生活の質が大きく下がってしまいます。

幹細胞を用いた新しい希望

しかし近年、これまでの治療の限界を超える「再生医療」が、新たな選択肢として注目されています。 これは、患者さん自身の脂肪などから採取した「幹細胞」を培養して増やした後、点滴で体に戻す治療法です。幹細胞には、以下のような働きが期待されています。

  • 炎症を抑える:肝臓で起きている火事(慢性的な炎症)を鎮めます。
  • 線維化を抑え、改善する:肝臓が硬くなる原因である線維が増えるのを防ぎ、すでに硬くなった肝臓の組織を柔らかくするよう働きかけます。
  • 修復を助ける:傷ついた肝細胞を治す物質を出し、肝臓が本来持っている回復力をサポートします。

さいとう内科クリニックでは、この新しい治療により、肝機能の数値(ASTやALTなど)が良くなったり、だるさや腹水、むくみが楽になったりするケースが見られています。「もう手立てがない」と諦める前に検討できる、希望の光となる治療法です。


4. 肝臓からのSOSを見逃さないために

肝臓病は自覚症状が出にくいため、定期的な健康診断を受けること、そして普段の小さな体調変化を見逃さないことが大切です。 特に、「しっかり寝ても疲れが取れない」「足がよくつる(こむら返り)」「手のひらが赤っぽい」といった症状は、肝臓からの初期のSOSかもしれません。

健康診断で血液検査の数値(AST、ALT、γ-GTPなど)の異常や、脂肪肝を指摘されたら、「まだ大丈夫」と自己判断せずに、必ず肝臓病専門医に相談してください。専門的な画像検査(腹部エコーなど)で肝臓の「硬さ」や脂肪のつき具合を正確に調べることが、将来の肝硬変や肝臓がんを防ぐための最も確実な一歩です。

今日から生活習慣を見直しつつ、もし肝硬変へと病気が進んでしまっていたとしても、医療の進歩によって「諦める必要はない」ということを、ぜひ知っておいてください。

さいとう内科クリニックでは、他の様々な疾患に対する再生医療は一切行っておらず、あくまで肝臓病に特化した再生医療を行っています。肝臓病の標準治療を基本としつつ、並行して肝臓再生医療を行っていくスタンスをとっています。他の医療機関で、「治療法がない」と言われた方にも、決して諦めることなく向き合っています。気になっておられる方は、お気軽に当院までご相談ください。

さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり)
電話
  • 電話:078-967-0019
  • 携帯電話:080-7097-5109