- 2025年12月6日
見過ごさないで!全身のしつこいかゆみは「肝臓からのSOS」かもしれません

「皮膚は内臓の鏡」という言葉があるように、皮膚に現れる異常は、時に身体の奥深くで起きている異変を知らせるSOSサインです。特に、全身を襲うしつこいかゆみ(掻痒感)は、肝臓や胆嚢、腎臓など、重要な内臓の病気が関係しているケースがあり、決して見過ごしてはいけません。
今回は、肝臓の病気によってかゆみが起こるメカニズムと、その裏に潜む危険なサイン、そして新たな希望となり得る治療法について、お伝えいたします。
1. 肝臓病による「かゆみ(掻痒感)」の正体
皮膚のかゆみには、乾燥、アレルギー、炎症など様々な原因がありますが、肝臓の病気が原因で起こるかゆみ(掻痒感)は、その性質が大きく異なります。
なぜ肝臓が悪くなるとかゆくなるのか?

肝臓は、脂肪の消化吸収を助ける胆汁を生成し、分泌する役割を担っています。肝硬変などの肝臓の病気によって肝機能が著しく低下すると、この胆汁の流れが滞る(胆汁うっ滞)状態に陥ります。
その結果、胆汁に含まれる「胆汁酸」などのかゆみを引き起こす物質が血液中に逆流し、全身を巡って皮膚に蓄積されます。この物質が皮膚の神経を刺激することで、激しいかゆみが発生すると考えられています。
また、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる症状)が強くなると、体中に強いかゆみを伴うことが多く、これは肝機能が低下していることを示す重要なサインです。肝硬変や原発性胆汁性肝硬変(原発性胆汁性胆管炎)といった病気は、特に全身のかゆみ症状が現れることが知られています。
肝臓病によるかゆみ(掻痒感)の5つの特徴

肝臓病が原因で起こるかゆみは、以下のような特徴を持ちます。
- 見た目に異常がない:皮膚に発疹や赤みがないのに、体の内側からくるような強いかゆみを感じます。この状態は皮膚掻痒症として現れることがあります。
- 全身がかゆい:特に背中やお腹、手足など、広範囲にわたってかゆみが生じます。
- かいても治まらない:かきむしってもかゆみは治まらず、むしろ悪化することがあります。
- 夜間に悪化し、不眠の原因になる:横になるとかゆみが強くなり、睡眠を妨げるほどつらくなることがあります。
- 市販薬が効きにくい:一般的な抗ヒスタミン薬などでは効果が見られにくい傾向があります。
2. かゆみとともに現れたら危険!進行した肝臓病のサイン

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、病気がかなり進行するまで具体的なサインを送らないことが特徴です。しかし、かゆみ(掻痒感)は、肝機能が著しく低下し、病気が非代償性肝硬変という深刻な段階に移行している可能性を示唆します。
全身のかゆみに加えて、以下のような症状が一つでも現れた場合は、肝臓病が進行している危険なサインです。すぐに肝臓病専門医にご相談ください。
- 黄疸:肝臓がビリルビンを処理できず、皮膚や白目が黄色っぽくなる。尿の色が濃い茶色になるのもサインです。(進行度:非代償期)
- 全身倦怠感・強い疲労感:肝臓の代謝機能が低下し、エネルギーが十分に作れず、有害物質が体に溜まる。(進行度:代償期/非代償期)
- むくみ・腹水:肝臓がアルブミンを十分に作れず、血管から水分が漏れ出す。または肝臓が硬くなり血液の流れが悪くなる。(進行度:非代償期)
- 手掌紅斑・クモ状血管腫:肝臓でのホルモン分解が滞ることで、手のひらや胸・肩に赤い血管が浮き出る。(進行度:非代償期)
- 肝性脳症:肝臓が解毒できないアンモニアなどの有害物質が脳に影響を及ぼす(集中力低下、手の震え/羽ばたき振戦、昼間の強い眠気など)。(進行度:非代償期)
3. 肝臓病によるかゆみの対処法と新たな希望

肝臓病に関連したかゆみの場合、皮膚表面を冷やしてかゆみを鎮める応急処置は可能ですが、根本的な対処法は、原因となっている肝臓病を治療することです。
全身のかゆみや、上記の危険なサインに心当たりのある方は、自己判断せずに医療機関、特に肝臓病専門医を受診し、詳細な検査を受けることが不可欠です。さいとう内科クリニックの院長は、日本肝臓学会の肝臓病専門医であり、超音波専門医でもあるため、肝臓の状態を精緻に診断できます。
従来の治療と限界
従来の肝硬変の治療では、つらいかゆみを抑える薬など症状に応じた対症療法が行われてきました。しかし、一度硬くなってしまった肝臓(線維化)を根本的に元の状態に戻す有効な標準治療は、残念ながらまだ存在しないのが現状です。
再生医療という新たな選択肢

従来の治療では限界があったこの状況に対し、当院では幹細胞を用いた肝臓再生医療という新しい治療アプローチを提供しています。
幹細胞治療は、患者様ご自身のお尻の脂肪組織から採取した幹細胞を培養し、点滴で体内に戻す治療法です。この幹細胞は、損傷した肝組織に集まり(ホーミング効果)、以下の働きが期待されています。
- 炎症の抑制:肝臓で起きている慢性的な炎症を抑える。
- 線維化の抑制・改善:肝臓が硬くなる原因である線維組織の生成を抑え、すでに進行した線維化の抑制や改善を促す可能性がある。
この治療は、肝機能そのものの回復を促すことで、結果的にかゆみの原因となる物質の蓄積を減らし、全身倦怠感の軽減、腹水の減少、肝性脳症の改善、QOL(生活の質)の向上にも繋がる可能性を秘めています。
特に、再生医療は肝硬変の症状が深刻になる前の段階で検討いただくことで、残された肝機能の回復を促し、進行を遅らせる可能性が高まります。
4. 諦めないでください

「沈黙の臓器」が送るかゆみというサインは、あなたの健康を左右する重要なメッセージです。もし原因不明のしつこいかゆみがある場合は、決して「ただの肌荒れ」と放置せず、肝臓病専門医にご相談ください。
さいとう内科クリニックでは、従来の標準治療をしっかりと行いつつ、幹細胞を用いた肝臓再生医療を並行して行うことで、患者様一人ひとりに合わせた最適な治療をご提案しています。
たとえ、肝硬変の症状が深刻になっていたとしても決して諦めないでください。強い倦怠感や腹水、肝性脳症がある非代償性肝硬変の方でも、肝臓再生医療を行うことにより、半年から1年かけて、これらの症状が少しずつ改善していく症例がみられています。
遠方にお住まいの方や、すぐに来院が難しい方のために、オンラインでの事前相談も受け付けております。どうぞ、お一人で悩まず、お気軽にお問い合わせください。
- 院長
- 斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology - 所在地
- 〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり) - 電話
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