• 2025年12月6日

亜鉛は「肝臓の救世主」?肝機能の修復と回復を支える必須ミネラルの重要性

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、病気が進行してもなかなか自覚症状が現れません。しかし、その体内で休むことなく代謝、解毒、胆汁生成といった重要な役割を担っており、これらの機能を維持するためには、亜鉛のような必須ミネラルが不可欠です。

今回は、肝臓の健康を守る上で欠かせない亜鉛の役割と、正しい摂取方法、そして見過ごされがちな亜鉛不足のサインについて、肝臓病専門医の視点からお伝えいたします。


1.肝臓の健康を支える亜鉛の重要な役割

亜鉛は成人体内に約2g存在する必須ミネラルであり、そのほとんどは筋肉と骨中に含まれますが、肝臓、膵臓、皮膚などの多くの臓器にも存在しています。

亜鉛による肝機能の維持

亜鉛は、数百種類に及ぶ酵素たんぱく質の構成要素となっており、肝臓内で生命維持に不可欠な様々な反応に関与しています。

  • たんぱく質・DNAの合成:亜鉛は、アミノ酸からのたんぱく質の再合成やDNAの合成に必要です。ダメージを受けた肝細胞の修復や再生のプロセスにおいて、亜鉛は極めて重要な役割を果たしています。
  • 解毒作用のサポート:亜鉛は、体の細胞にダメージを与える活性酸素を除去する酵素の構成成分でもあります。肝臓が担う解毒作用や、体内の炎症を抑える免疫機能のサポートにも欠かせません。

亜鉛の摂取基準

亜鉛の吸収量は、一般的に摂取量の約30%と推定されており、この吸収率を考慮して、1日の推奨摂取量(RDA)が設定されています。例えば、30~64歳の男性では9.5mg、同年代の女性では8.0mgが推奨量となっています。


2.亜鉛不足が肝臓と体に送るSOSサイン

亜鉛は体内で作ることができないため、食事からの摂取が不足すると、様々な健康上の問題が起こります。

見逃せない亜鉛不足の症状

亜鉛が不足すると、たんぱく質やDNAの合成がうまくいかなくなり、以下のような症状が現れる可能性があります。

  • 味覚障害:亜鉛は味を感じる味蕾細胞の産生に必須であるため、不足すると味覚を感じにくくなります。
  • 慢性下痢:消化器系の不調を引き起こす可能性があります。
  • 皮膚炎、免疫機能障害

これらの症状、特に慢性的な倦怠感や食欲不振、だるさは、肝機能障害の初期サインとも共通しており、安易に「疲れのせい」と自己判断せず、肝臓病専門医に相談することが重要です。

肝臓病患者に特に注意が必要な理由

亜鉛の吸収は、食事内容や体調によって左右されます。特に肝臓の健康に不安がある方は、以下の点に注意が必要です。

  • アルコールの影響:アルコールの摂取により、亜鉛の排出量が増加します。飲酒はアルコール性肝障害の主原因であり、肝臓へのダメージを避けるためにも、飲酒量を減らすか、断酒することが非常に重要です。
  • 吸収を妨げる成分:植物性食品に多く含まれる食物繊維やフィチン酸(穀類、豆類に多い)は、亜鉛の吸収を妨げます。また、加工食品に多く含まれる食品添加物も吸収を阻害する場合があります。

3. 肝臓をいたわる亜鉛摂取とサプリメントの落とし穴

亜鉛を積極的に摂るためには、特定の食品に偏らず、バランスの良い食事を摂ることが不可欠です。

亜鉛を豊富に含む食品の例

良質なタンパク質を多く含む食品には、亜鉛が豊富に含まれています。

  • 魚介類:特にかき(養殖/生)は100gあたり14.0mgと非常に豊富です。うなぎの蒲焼(1串100gあたり2.7mg)、かたくちいわし田作り(7.9mg/100g)なども良い供給源です。
  • 肉類:ぶたの肝臓(レバー)(生6.9mg/100g)、牛肉(もも赤肉4.8mg/100g)など。
  • 種実類:かぼちゃ(いり味付け7.7mg/100g)、ごま(いり5.9mg/100g)など。

良質なタンパク質(魚、肉、大豆製品)は肝細胞の再生に不可欠であり、亜鉛を多く含むこれらの食品は、肝臓をサポートする食事として理想的です。

肝臓病専門医からの警告:サプリメントの過剰摂取リスク

亜鉛を含むミネラルやビタミンは重要ですが、サプリメントや健康食品の摂取には細心の注意が必要です。

  • 肝臓への解毒の負担:サプリメントの成分は、肝臓にとってアルコールや老廃物と同じ「異物」として解毒・分解の作業が必要になります。安易にサプリメントを服用することは、肝臓に余計な負担をかけることになります。
  • 過剰摂取のリスク:亜鉛の過剰摂取(耐容上限量:男性40〜45mg、女性35mg)は、銅欠乏や貧血などの健康被害を引き起こすことが知られています。海外製サプリメントや特定成分の過剰摂取が肝機能障害の原因となるケースも報告されています。

諦めない未来のために:肝臓病専門医による正確な診断を

肝臓病は「症状がないから大丈夫」と自己判断して放置すると、脂肪肝からMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)を経て、肝硬変や肝がんへと進行するリスクがあります。

もし健康診断で肝機能の異常(AST・ALTの上昇)を指摘されたり、原因不明のだるさや足のつり(こむら返り)など、肝臓からのSOSサインを感じたりした場合は、決して放置せず、肝臓病専門医にご相談ください。

当院では、日本肝臓学会 肝臓病専門医であり超音波専門医でもある院長が、血液検査や腹部エコー検査、肝硬度測定などで肝臓の状態を精緻に診断し、最適な治療計画をご提案します。

また、従来の標準治療(食事・運動療法、禁酒、内服治療など)だけでは改善が難しい肝硬変に対し、患者様ご自身の細胞を用いた肝臓再生医療(幹細胞治療)という新たな選択肢を提供しています。この治療は、肝臓の炎症を改善し、線維化(硬さ)の進行を抑制・改善する可能性を秘めています。当院においては、幹細胞治療後、半年から1年くらい経ってから、肝臓の数値の改善や自覚症状の改善(倦怠感、腹水、肝性脳症の改善)が見られています。

「もう治らない」と諦めてしまう前に、私たちと一緒に、あなたの肝臓の未来を拓く一歩を踏み出しませんか。オンラインでの事前相談も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり)
電話
  • 電話:078-967-0019
  • 携帯電話:080-7097-5109