- 2026年1月12日
【肝臓病専門医が解説】お酒を飲まなくてもなる脂肪肝「MASLD」の正体と、肝硬変を回避するための5つの鉄則

近年、世界中の肝臓病学において、一つの重要な転換期を迎えました。
これまで「NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)」と呼ばれてきた、お酒を飲まない人の脂肪肝の名称が、2023年に「MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」へと変更されたのです。
この名称変更は、脂肪肝が単なるアルコール以外の原因による脂肪の蓄積ではなく、代謝異常(メタボ)に深く根差した病気であることを明確に示しています。
「症状がないから大丈夫」「単なる肥満だろう」と放置していると、MASLDはMASH(脂肪肝炎)を経て肝硬変や肝がんへと静かに進行します。
本記事では、肝臓病専門医の立場から、MASLDのリスクと、肝硬変という「手遅れ」の状況を回避するための具体的な生活習慣改善の鉄則、そして諦めない未来としての肝臓再生医療について解説します。
1. 脂肪肝「MASLD」の正体:なぜ代謝機能が鍵なのか
1-1. 代謝異常が原因であることを示す新病名
従来のNAFLDは「アルコール以外の原因」と大まかに定義されていましたが、新しい名称MASLD (Metabolic dysfunction Associated Steatotic Liver Disease) は、代謝機能障害が脂肪肝の背景にあることをはっきりと示しています。
MASLDの新たな診断基準は、以下の生活習慣病(代謝異常)に罹っている、もしくは予備軍であるという点が含まれています。
- お腹まわりの脂肪が多い(内臓脂肪)
- 高血圧、高血糖、脂質異常症(中性脂肪や悪玉コレステロールが高い)
- インスリンが効きにくい(インスリン抵抗性)
裏を返せば、生活習慣病の根っこにMASLDが潜んでいる可能性が高いということです。
1-2. 痩せ型でも安心できない「MASH」リスク
脂肪肝は「太っている人だけ」「お酒を飲む人だけ」の病気ではありません。特に、痩せ型の方でも脂肪肝になる「隠れ肥満」のケースがあり、これは筋肉不足による基礎代謝の低下や遺伝的・体質的要因が関与しています。
重要なのは、痩せ型の脂肪肝は、肥満型の脂肪肝に比べて炎症を伴うMASH(脂肪肝炎)へと進行しやすいという事実が指摘されている点です。MASHは放置すると肝臓に線維化(硬さ)が生じ、肝硬変や肝がんへとつながる極めて危険な病態です。
2. 肝臓からのSOSサイン:見逃してはいけない体からのメッセージ

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、肝機能の3分の2以上が失われるまで症状が出にくいという特徴があります。そのため、以下のような「なんとなくの不調」の中に隠れたSOSサインを見逃さないことが、早期発見・早期治療に繋がります。
■全身倦怠感・慢性的な疲労感(初期〜進行期)
・エネルギー生成の低下、有害物質の解毒処理の滞りが原因です。
・頻繁な「こむら返り」(足のつり)(代償性肝硬変の初期サイン)
・肝臓の機能低下による分岐鎖アミノ酸やカルニチンの代謝異常が関与しています。
■食欲不振・吐き気(初期〜進行期)
・消化・吸収に関わる胆汁の生成が滞るために起こります。
■手掌紅斑・クモ状血管腫(中期〜非代償期)
・肝臓でのホルモン分解が滞るため、手のひらがまだらに赤くなったり、血管が浮き出たりします。
■黄疸・全身の強いかゆみ(非代償期・進行期)
・ビリルビン色素の排泄障害や胆汁酸の逆流により起こります。
■腹水・むくみ(非代償期)
・アルブミン合成能力の低下や門脈圧亢進により水分が血管外に漏れ出します。
■肝性脳症(非代償期・危険)
・アンモニアなどの有害物質が脳に達することで、集中力の低下、昼間の眠気、羽ばたき振戦などが起こります。
3. 代謝を復活させる!専門医が教える5つの鉄則

MASLDを改善し、肝硬変への進行を防ぐためには、根本原因である代謝機能の異常を正すための厳格で継続的な生活習慣の見直しが不可欠です。
鉄則1:糖質・脂質摂取を賢くコントロールする食事法

何を食べるかだけでなく、「どう食べるか」が脂肪肝のリスクを大きく左右します。
- 隠れた糖質に要注意:ご飯、パン、麺類などの主食の過剰摂取、および清涼飲料水やジュースに含まれる果糖(フルクトース)は、ブドウ糖よりも肝臓で直接脂肪に変わりやすいため、特に控えましょう。
- ベジファーストの徹底:食事の最初に野菜、きのこ類、海藻類を摂りましょう。豊富な食物繊維が血糖値の急激な上昇を抑え、肝臓への負担を軽減します。
- 良質なタンパク質:ダメージを受けた肝臓の修復には、良質なタンパク質(青魚、大豆製品など)が重要です。
- 食べ方・時間:早食いはカロリーオーバーと血糖値の急上昇を招くため、一口30回を目安にゆっくり噛みましょう。夕食は就寝3時間前までに済ませるのが理想です。
鉄則2:継続可能な有酸素運動と筋トレの組み合わせ

運動は、肝臓にたまった脂肪を燃焼させ、インスリンの働きを良くする重要な要素です。
- 脂肪燃焼ペースのウォーキング:週に3回程度、1日30分程度の軽く汗ばむ早歩き(会話がしづらくなるくらい)を目標にしましょう。これは体力アップや脂肪燃焼に効果的です。
- 筋力トレーニング:筋肉量を増やし基礎代謝を上げることにより、脂肪が燃えやすい体を目指しましょう。筋力トレーニングはテレビを見ながらといった、ながらトレーニングを1日10分程度でも効果が期待できます。
鉄則3:十分な休養と正しい睡眠を確保する

肝臓の修復・再生には、質の良い睡眠と休養が不可欠です。
- 血流を増やす姿勢:横になっている姿勢は、立ったり座ったりしている姿勢よりも肝臓にいく血流が1.5倍に増えるため、肝臓の修復・再生につながります。
- リラックス:就寝前の入浴などでリラックスし、良質な睡眠時間を確保しましょう。
鉄則4:サプリメントと飲酒習慣を見直す

健康を意識するがゆえの行為が、かえって肝臓に負担をかけることがあります。
- サプリメントの過剰摂取:プロテインや海外製サプリメントの過剰摂取は、肝臓に負担をかける可能性があります。サプリメントの成分は肝臓にとって解毒すべき異物であり、無駄に服用することは負担をかけてしまうことを知っておく必要があります。
- アルコール摂取量:アルコール性肝障害の場合は完全な禁酒が必須ですが、MASLDの方も肝臓の負担を減らすため、飲酒量を大幅に減らすか、休肝日を設けましょう。
鉄則5:血液検査だけでなく腹部超音波(エコー)検査を定期的に受ける

採血結果が正常であっても、脂肪肝や肝硬変が進行していることがあります。脂肪肝の進行度や、肝臓の線維化(硬さ)を正確に知るためには、腹部超音波(エコー)検査が不可欠です。
- 腹部超音波(エコー)検査:痛みや被曝の心配なく、肝臓の脂肪の蓄積具合を軽度・中等度・高度の3段階で評価できます。脂肪が多い肝臓は「白っぽく」見えます。肝がんなどないかについても評価できます。
- 肝硬度測定:エコー検査と組み合わせて、肝臓の線維化(硬さ)の進行度を数値で評価できます。
さいとう内科クリニックの院長は、日本肝臓学会肝臓病専門医であり、日本超音波医学会超音波専門医でもあるため、これらの専門的な検査に基づき、精緻な診断と最適な治療計画を提供できます。
4. 「もう治らない」と諦めない未来:再生医療による画期的な治療

生活習慣の改善や標準治療に努めているにもかかわらず、肝臓の数値が改善しない、あるいはすでに肝硬変へと進行していると診断された場合でも、決して諦める必要はありません。
従来の治療の限界と肝移植の課題
肝硬変は、長年の炎症によって肝臓が線維化して硬くなった状態であり、従来の薬物療法では硬くなった組織を根本的に元に戻すことは困難でした。唯一の根治治療である肝移植には、ドナー不足、高額な医療費、手術リスク、そして健康なご家族(ドナー)への大きな肉体的、精神的負担という課題が伴います。
肝臓再生医療が拓く「標準治療のその先」
さいとう内科クリニックでは、この従来の治療の限界を打ち破るべく、幹細胞を用いた肝臓再生医療という画期的な治療法を提供しています。
この治療は、患者様ご自身のお尻の皮下脂肪から採取・培養した幹細胞を点滴で体内に戻す自己脂肪由来幹細胞点滴療法であり、拒絶反応のリスクが極めて低いというメリットがあります。
再生医療に期待される作用
幹細胞は、損傷した肝組織に集まるホーミング効果を持ち、以下の働きを通じて肝臓の回復をサポートします。
- 線維化の抑制・改善:肝臓が硬くなる原因である線維組織の生成を抑え、進行を抑制してくれます。さらに、長期的には線維化が改善する可能性もあります。
- 炎症の抑制(抗炎症作用):慢性的な炎症を抑え、肝細胞へのダメージを軽減してくれます。
- 組織修復促進:残存する肝細胞の修復や再生を促します。
これらにより、腹水やむくみのコントロール、倦怠感の軽減、肝性脳症の症状緩和といったQOLの向上が期待されます。
5. 諦める前に、肝臓病専門医にご相談ください

MASLDは、代謝異常という根本原因を抱え、放置すれば肝硬変に至る危険な病気です。健康診断で肝臓の数値の異常や脂肪肝を指摘されても、「症状がないから大丈夫」と自己判断せずに、肝臓病専門医に相談することが最も重要です。
肝臓再生医療は、肝硬変の症状が深刻になる前の段階で検討していただく方が、残された肝機能の回復を促す可能性を飛躍的に高めます。また、肝硬変の症状が深刻になってしまった方にとって、肝移植を待つ間の「橋渡し(ブリッジ治療)」としても、有効な治療法となり得ます。
さいとう内科クリニックでは、標準治療を基本としつつ、その限界を補う再生医療を提供することで、「もう治療法がない」と言われた方にも希望を灯すことを目指しています。
ご本人様だけでなく、ご家族からのご相談も承っております。お電話によるお問い合わせならびに、Curon(クロン)を利用したオンライン事前相談も可能ですので、どうぞお気軽にお問い合わせください。一人で悩まず、私たちと一緒に二人三脚で病気に立ち向かっていきましょう。
- 院長
- 斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology - 所在地
- 〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり) - 電話
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- 電話:078-967-0019
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