• 2025年5月22日

【肝臓専門医が解説】赤ちゃんから大人まで B型肝炎ワクチンの重要性

【はじめに】

「B型肝炎」という病気と、それを予防する「B型肝炎ワクチン」の重要性について、肝臓専門医の視点から分かりやすく解説します。「B型肝炎」は、感染した時期やその後の経過によって、「肝硬変」や「肝がん」といった深刻な病気に進行する可能性がある、決して他人事ではない病気です。しかし、「B型肝炎」はワクチンで予防が期待できる病気でもあります。このブログが、ご自身や大切なご家族の健康を守るための一助となれば幸いです。

B型肝炎とは? – 静かに忍び寄る肝臓の脅威

B型肝炎ウイルスの基礎知識

  • 感染経路:血液や体液を介して感染(母子感染、性交渉、医療行為、ピアスの穴あけなど身近な行為にもリスクが潜むこと)。
  • 一過性感染と持続感染(キャリア):感染時期や免疫状態によって経過が異なる。

感染するとどうなる?

  • 急性肝炎の症状:倦怠感、食欲不振、黄疸など。劇症化するリスクも。
  • 慢性肝炎:自覚症状がないまま進行し、肝硬変や肝がんへ。
  • 無症候性キャリア:症状がなくても他人に感染させる可能性。日本におけるキャリアの推定数(約100人に1人とも)。

特に注意が必要なケース

  • 乳幼児期の感染:キャリア化しやすく、将来の肝がんリスクが高い。
  • 成人の新たな感染:気づかないうちに感染し、パートナーや家族にうつしてしまう可能性。近年問題視されている遺伝子型AのB型肝炎についても触れる。

B型肝炎ワクチンとは? – 未来の健康を守るための強力な盾

ワクチンの種類と効果

  • 不活化ワクチンであること。
  • B型肝炎ウイルスの感染を予防し、急性肝炎やキャリア化を防ぐ。
  • 最大のメリット:「がん予防ワクチン」としての側面。将来の肝がんリスクを大幅に低減。

ワクチンの安全性

  • 長年にわたり世界中で使用されている安全性の高いワクチン。
  • 一般的な副反応:接種部位の赤み・腫れ・痛み、発熱、倦怠感など(一時的なものが多い)。
  • まれな重篤な副反応(アナフィラキシーなど)についても触れ、気になる症状があればすぐに医師に相談するよう促す。

免疫ができる仕組み

  • ワクチン接種によりHBs抗体が作られ、ウイルスが侵入した際に体を守る。

【第3章】赤ちゃん・子どものB型肝炎ワクチン – 生まれてくる命を守るために

なぜ赤ちゃんにワクチンが必要?

  • 母子感染のリスクと予防策(母親がキャリアの場合の健康保険適用の予防内服・ワクチン接種)。
  • 家庭内感染・集団生活での感染リスク。
  • 乳幼児期に接種するメリット:高い抗体獲得率、キャリア化の阻止。

定期接種としてのB型肝炎ワクチン

  • 対象年齢:原則として0歳児(生後1歳に至るまで)。
  • 標準的な接種スケジュール:生後2ヶ月に1回目、生後3ヶ月に2回目、生後7~8ヶ月に3回目(合計3回)。
  • 同時接種の推奨:生後2ヶ月から他のワクチン(ロタ、肺炎球菌、五種混合など)と同時に接種することで、効率的に免疫を獲得。同時接種の安全性についても言及。

接種間隔がずれてしまったら?

基本的な考え方は、まずは3回接種を完了させることが大切です。規定のスケジュールからずれても、医師に相談し適切な対応を行ってください。


【第4章】大人のB型肝炎ワクチン – 自分と大切な人を守る選択

大人でもワクチンが必要な理由

  • 新たな感染機会は誰にでもある(性的接触、医療行為、海外渡航、コンタクトスポーツなど)。
  • パートナーや家族への感染拡大を防ぐ責任。
  • 年齢が上がると抗体獲得率がやや低下する傾向があるため、早めの検討が推奨される。

特に接種が推奨される成人

  • 医療従事者、救急隊員、介護・保育職員など血液や体液に触れる機会の多い方。
  • 家族にB型肝炎キャリアがいる方。
  • 血液透析を受けている方。
  • 海外(特にB型肝炎流行地域)へ長期滞在・渡航する方。
  • その他、感染リスクが高いと考えられる方(詳細は医師に相談)。

任意接種としてのB型肝炎ワクチン

  • 接種回数とスケジュール:原則3回(例:初回、1ヶ月後、6ヶ月後)。
  • 費用:任意接種の場合は自費診療(医療機関によって異なるため要確認)。

妊娠中・授乳中の接種について

B型肝炎ワクチンは不活化ワクチンのため、妊娠中・授乳中でも安全に接種可能とされているが、必ず事前に医師に相談するよう記載。


【第5章】ワクチン接種後のこと – 効果と持続性、抗体検査について

抗体はできた? – HBs抗体検査

  • 一般的には定期接種後の抗体検査は必須ではない。
  • 検査が推奨されるケース:母子感染予防の場合、医療従事者、免疫不全状態の方など。
  • 抗体価の目安:感染予防に必要な最低値(10mIU/mL)、十分な防御レベル(100mIU/mL)。

ワクチンの効果はいつまで続く?

  • 3回接種で得られた免疫は、多くの場合20年以上持続すると考えられている。

追加接種(ブースター接種)は必要?

  • 一般的には不要とされることが多いが、感染リスクが非常に高い環境にある場合や、抗体価が著しく低下した場合など、医師の判断で検討されることがある。

【第6章】肝臓専門医からのメッセージとQ&A

改めてワクチンの重要性を強調

  • B型肝炎は予防できる病気であり、ワクチンはその最も有効な手段の一つ。
  • 肝臓の健康を守るために、正しい知識を持ち、適切な行動を。

よくあるご質問

Q1: ワクチンの副反応が心配です。

A: B型肝炎ワクチンは、長年にわたり世界中で使用されている安全性の高いワクチンです。多くの方には副反応は起こりませんが、一部の方には以下のような症状が出ることがあります。

  • 一般的な副反応(接種後数日以内に現れることが多いです):
    • 接種した場所の症状: 赤み、腫れ、痛み、しこり、かゆみなど。これらは通常、数日で自然に治まります。気になる場合は、冷たいタオルなどで冷やすと症状が和らぐことがあります。
    • 全身の症状: 発熱(通常は38℃以下)、だるさ、頭痛、関節痛、筋肉痛、寒気、食欲不振など。これらも通常は数日で軽快します。発熱時は、安静にし、水分を十分に摂取してください。市販の解熱鎮痛剤を使用することも可能ですが、特に小さなお子さんや持病をお持ちの方は、事前に医師や薬剤師にご相談ください。
  • まれな副反応(頻度は非常に低いですが、注意が必要です):
    • アナフィラキシーショック: 接種後30分以内に起こることが多い重いアレルギー反応です。じんましん、呼吸困難、顔面蒼白、めまい、意識の混濁などの症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。接種後は、念のため30分程度は医療機関内や連絡が取れる場所で様子を見るようにしましょう。
    • その他、非常にまれですが、神経系の障害などが報告されています。

ほとんどの副反応は一時的で軽いものですが、接種後に気になる症状が出た場合や、症状が長引く場合は、自己判断せずに速やかに接種した医療機関またはかかりつけ医にご相談ください。事前に副反応について理解しておくことで、安心してワクチン接種を受けていただけるかと思います。

Q2: 費用はどれくらいかかりますか?

A: B型肝炎ワクチンの費用は、接種の目的や年齢によって異なります。

  • 定期接種の場合(原則0歳児):
    • 生後1歳に至るまで(標準的には生後2ヶ月、3ヶ月、7~8ヶ月の3回)の赤ちゃんが対象となる定期接種は、公費負担(無料)で受けることができます。
    • お住まいの市区町村から予診票が送られてきますので、指定の医療機関で接種を受けてください。
  • 任意接種の場合(上記以外の方):
    • 定期接種の対象年齢以外のお子さんや、大人の方がB型肝炎のリスクに備えて接種する場合は、任意接種となり、費用は全額自己負担(自費診療)となります。
    • 費用は医療機関によって異なり、1回あたりおおよそ5,000円~10,000円程度が目安です。B型肝炎ワクチンは通常3回の接種が必要ですので、合計で15,000円~30,000円程度かかることになります。
    • 具体的な金額については、接種を希望される医療機関に直接お問い合わせください。
    • 企業によっては、福利厚生としてワクチン接種費用の一部または全額を補助している場合もありますので、お勤め先にご確認いただくのもよいでしょう。
  • 保険適用となるケース(任意接種でも例外的に):
    • 母親がB型肝炎キャリアの場合の赤ちゃんへのワクチン接種: 母子感染予防のために行われる抗HBs人免疫グロブリン(HBIG)との併用によるワクチン接種は、健康保険が適用されます。
    • HBV再活性化のリスクがある治療を受ける場合: B型肝炎ウイルスに過去に感染したことがある方(HBc抗体陽性またはHBs抗原陽性の方)が、免疫抑制療法や化学療法などを受ける際に、ウイルスの再活性化を予防する目的でワクチンを接種する場合、条件によっては保険適用となることがあります。この場合は、主治医にご相談ください。

Q3: 以前B型肝炎にかかったことがあるかもしれませんが、ワクチンは受けられますか?

A: 接種前に検査で感染の有無を確認することの重要性。既感染者には効果がない。

Q4: 接種スケジュール通りに受けられなかった場合はどうすればいいですか?

A: 医師に相談し、残りの接種をできるだけ早く受けること。

Q5: ワクチンを3回打てば、絶対にB型肝炎にかかりませんか?

A: 非常に高い予防効果があるが、ごく稀に抗体ができにくい体質の方もいること。必要に応じて抗体検査で確認。


【おわりに】

B型肝炎ワクチン接種は、ご自身だけでなく、周りの大切な人々をも守る行動です。
少しでも疑問や不安な点があれば、遠慮なくかかりつけ医や専門医にご相談ください。
当クリニックでも、B型肝炎に関するご相談やワクチン接種を承っております。

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