• 2025年8月21日

「肝機能障害」の症状をチェック!疲れやすさやだるさの原因は?

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、病気がかなり進行するまで具体的な症状が現れにくいという特徴があります。そのため、「最近、どうも疲れやすいな」「体がだるい日が続く」といった漠然とした不調は、単なる疲れや加齢のせいだと見過ごされがちですが、実は肝臓からの大切なSOSサインかもしれません。

このブログでは、肝機能障害によってなぜ特定の症状が現れるのか、その背景にある肝臓の機能低下に焦点を当てながら、見逃してはならないサインと、早期発見の重要性についてお伝えします。


肝臓の「疲れ」からくるSOS:機能低下と症状のつながり

肝臓は、私たちの体で以下のような生命維持に不可欠な多岐にわたる重要な役割を担っています。

  • 代謝機能: 栄養素をエネルギーに変えたり貯蔵したり、タンパク質などを生成します。
  • 解毒作用: アルコールや薬物、老廃物などの有害物質を無害化して排出します。
  • 胆汁の生成・分泌: 脂肪の消化吸収を助ける胆汁を作ります。
  • 血液の調整: 血液凝固因子を生成し、古くなった赤血球を破壊します。
  • ホルモンの調節: 体内のホルモンバランスを調整します。

肝機能障害は、これらの機能が何らかの原因で十分に果たせなくなった状態を指します。その結果として、以下のような症状が現れます。

見逃せない肝臓からのサインと、その機能的な背景

  • 全身倦怠感・慢性的な疲労感: 肝臓の代謝機能が低下し、エネルギーが十分に生成されなかったり、体内の有害物質を解毒しきれずに蓄積されたりすることで引き起こされます。十分な睡眠をとっても疲れが取れない場合は注意が必要です。
  • 食欲不振・吐き気・胃もたれ: 消化・吸収に関わる肝臓の働きが弱まることや、腹水による胃の圧迫によって、食欲が落ちたり、吐き気を感じたりすることがあります。
  • 黄疸(皮膚や白目の黄変、尿の濃色化): 肝臓が古くなった赤血球の分解物である「ビリルビン」をうまく処理・排泄できなくなるため、血液中にビリルビンが増加し、皮膚や白目、尿が黄色く(濃い茶色に)なります。
  • むくみ・腹水: 肝臓が血液中の水分バランスを保つ「アルブミン」というタンパク質を十分に作れなくなると、血管から水分が漏れ出し、足などのむくみや、お腹の中に水が溜まる腹水が生じます。これにより息苦しさを感じることもあります。
  • 集中力の低下・昼間の眠気・羽ばたき振戦(肝性脳症): 肝臓がアンモニアなどの有害物質を解毒しきれず、毒素が脳に影響を及ぼすことで生じます。初期には見当識障害や性格の変化が見られることもあります。
  • 出血しやすい・あざができやすい: 肝臓が血液を固めるために必要な凝固因子を十分に作れなくなるため、鼻血や歯ぐきからの出血が止まりにくくなったり、ぶつけた覚えのないあざができやすくなったりします。
  • 手掌紅斑・クモ状血管腫・男性の女性化乳房: ホルモンの分解が滞ることで、手のひらが赤くなったり、胸や肩にクモの巣状の血管腫が現れたり、男性の場合乳房が膨らむことがあります。
  • お酒に弱くなる: 肝臓のアルコール分解能力が低下しているサインです。

これらの症状は、他の病気でも見られることがありますが、複数当てはまる場合や長く続く場合は、肝臓からの重要なメッセージである可能性が高いです。


肝機能障害を早期に発見するために

症状がほとんどない初期の段階で肝機能障害を発見するためには、定期的な健康診断が最も確実な方法です。健康診断の血液検査では、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPといった肝臓のダメージや働き具合を示す数値がチェックされます。

  • ASTとALT: 肝細胞が損傷を受けて血液中に漏れ出す酵素であり、数値が高いほど肝細胞の破壊が多いことを示唆します。
  • γ-GTP: アルコール性肝障害の指標として知られていますが、アルコールを飲まない人の脂肪肝(NAFLD/NASH)や胆道系の異常でも上昇します。
  • アルブミン: 肝臓の合成能力を示す重要な指標で、数値が低いと機能低下が疑われます。
  • 血小板数: 肝硬変が進行すると減少することがあり、線維化の進行度合いと関連します。

これらの数値は、単独ではなく総合的に判断することが大切です。また、腹部超音波(エコー)検査では、肝臓の形や大きさ、脂肪の蓄積具合、線維化の兆候などを視覚的に確認できます。さいとう内科クリニックの院長は、肝臓病専門医かつ超音波専門医として、これらの検査を丁寧に行い、患者さんの肝臓の状態を精緻に診断しています。


「もう治らない」と諦める前に:肝臓再生医療という選択肢

肝臓の線維化が進んで肝硬変に至ると、従来の治療法では完全に元に戻すことは難しいとされてきました。しかし、近年注目されている幹細胞を用いた肝臓再生医療は、新たな希望をもたらす可能性があります。

この治療は、患者さんご自身の臀部の皮下脂肪から採取・培養した幹細胞を体内に点滴で戻すことで、肝臓の炎症を抑えたり、線維化の進行を抑制したり、残存する肝細胞の修復や再生を促したりする作用が期待されています。これにより、肝機能の改善や、だるさ、腹水などの症状の緩和、ひいては生活の質(QOL)の向上に繋がる可能性があります。

特に、重症な肝不全の症状(腹水、むくみ、肝性脳症、倦怠感、黄疸、食道胃静脈瘤破裂など)がある場合でも、肝臓がんを始めとしたがんがなければ、肝臓再生医療を受けていただくことが可能です。効果が現れるまでに半年から1年ほどの時間がかかることもありますが、当院での治療により、肝機能の数値の改善や倦怠感の改善など、徐々に症状の改善を実感される患者さんもいらっしゃいます。

あなたの肝臓の未来のために、専門医にご相談を

「ただの疲れだろう」と自己判断せず、ご自身の体からのサインに耳を傾け、気になる症状があれば、早期に専門医へ相談することが非常に重要です。 さいとう内科クリニックでは、肝臓病専門医である院長が、肝臓再生医療に関するオンライン事前相談(Curonを利用)も受け付けており、患者さんの状態に合わせた最適な治療法を共に考え、未来への希望を育むサポートをしています。

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