- 2025年11月10日
ダイエットの停滞期は「肝臓のSOS」かも? 頑張っても痩せない隠れた原因

ダイエットを頑張っているのに、なかなか体重が減らない・・・。
その原因を「運動不足」や「食べ過ぎ」だけで片付けていませんか?
実は、あなたの「痩せにくい体質」の背景には、肝臓の健康状態、特に『脂肪肝』が深く関係している可能性があります。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、病気がかなり進行するまで具体的な症状が出にくい特性を持っています。だからこそ、健康診断で異常を指摘されたり、ダイエットの成果が出なかったりといった「小さなサイン」を見逃さないことが、未来の健康を守る鍵となります。
今回は、脂肪肝がなぜ痩せにくさを招くのか、その原因と、肝臓病専門医が推奨する具体的な対策について詳しく解説します。
1. 脂肪肝とは? 代謝工場が機能停止するメカニズム
痩せないのは「肝臓の脂肪蓄積」が原因かも

脂肪肝とは、肝臓の細胞内に中性脂肪が過剰に溜まってしまう状態を指します。正常な肝臓では脂肪の蓄積はほとんどありません。
肝臓は体内の「代謝工場」のような役割を果たし、脂肪の合成、分解、エネルギー変換に大きく関与しています。しかし、脂肪肝になるとこの代謝機能が低下しやすくなります。
その結果、体内で脂肪を効率的に燃やせなくなり、いくらダイエットをしても体脂肪が減りにくい、いわゆる“痩せにくい体質”につながる可能性があるのです。
脂肪肝を引き起こす要因

脂肪肝の主な原因は、肥満や過剰なカロリー摂取ですが、過度の飲酒や運動不足、さらには糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病とも関連が指摘されています。
特に飲酒以外の原因で発症する脂肪肝は代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)と呼ばれ、食べ過ぎや運動不足が主な原因です。
また、脂肪肝は40歳以降の中高年や男性に多い傾向がありますが、若い世代でも食生活の乱れや運動不足から発症するケースが増えています。
さらに、「痩せているから大丈夫」という思い込みは危険であり、痩せ型の方でも極端な食事制限やタンパク質不足、急激な体重減少など、偏った食生活から脂肪肝を指摘されるケースが近年注目されています。
2. 「ただの脂肪肝」ではない! 放置すると招く深刻なリスク

脂肪肝の多くは、初期段階で適切な生活改善を行うことで、正常な肝臓に改善すると言われています。しかし、放置すると深刻な病態へ進行するリスクを秘めています。 肝臓に脂肪が溜まると慢性的な炎症が生じ、これが肝機能障害を進行させる恐れがあります。この炎症が進むと、肝硬変や肝臓がんのリスクが高まると示唆されています。
特に、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)の一部は、炎症を伴う代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)へと進行し、肝臓の線維化(硬くなること)が進み、最終的に肝硬変や肝臓がんへ移行する可能性があります。 肝硬変が進行し機能が著しく低下した非代償期では、腹水やむくみ、黄疸、肝性脳症、食道胃静脈瘤破裂といった命に関わる重篤な合併症が現れます。
3. 肝臓を意識した生活改善の具体的なポイント
脂肪肝の改善には、ただ単に食事制限や運動をするだけではなく、肝臓の代謝負担を軽減する生活習慣の見直しが重要です。
食事と食べ方の改善

脂肪肝改善の約8割は食事で決まると言われるほど、食生活の見直しは重要です。
- 栄養バランスの確保: 脂肪や糖質の摂り過ぎを避け、食物繊維、ビタミン、ミネラルをしっかり摂るよう心がけましょう。サプリメントでこれらを補充しようとするのはできるだけ避けましょう。
- 肝臓に優しい食材: 大豆製品(豆腐、豆乳など)は低カロリーで脂肪代謝をサポートします。
- 食べ方を意識する: 早食いは脂肪肝を悪化させる要因の一つです。食事開始から満腹感を感じるまでに約20分かかるため、一口30回噛むことを意識し、ゆっくり食べましょう。
- アルコール摂取の制限: 過度のアルコール摂取は避けましょう。肝臓に異常を指摘されている場合は、原則として禁酒が必要です。健康な方でも、1日あたりの飲酒量を控え、週に2日以上の休肝日を設けることが推奨されます。
運動習慣の確立

- 有酸素運動の実施: バランスの良い食事と筋力トレーニングを組み合わせることが推奨されています。脂肪肝の改善には、ウォーキングや軽いジョギングといった有酸素運動を週3回、30分程度行うことが効果的です。運動をしないといけないと準備万端にしてから運動に取りかかるというよりは、日常生活の中で運動をうまく取り入れていただくのも、長続きしやすいのでとても良い手です。
- 無理のない減量: 極端な食事制限による急激なダイエットは避け、1ヶ月に体重の5%以内の減量を目安に、無理なく継続することが大切です。
4. 肝臓の深刻なサインに気づいたら:専門家への相談と再生医療の可能性

ダイエットや生活習慣の改善を頑張っているにもかかわらず、脂肪肝の状態が良くならない場合は、自己判断せずに医師の診察や定期的な検査が不可欠です。
肝臓の状態を知るためには、血液検査でAST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの肝機能の数値を確認することや、腹部超音波(エコー)検査で脂肪肝の重症度(軽度、中等度、高度)を把握することが重要です。
従来の治療の限界と再生医療という希望

肝硬変へと進行した場合、従来の治療法では、病気の進行を遅らせたり症状を和らげたりすることが主な目的であり、一度硬くなった肝臓を根本的に元の状態に戻すのは困難とされてきました。
しかし、近年、幹細胞を用いた肝臓再生医療という新たな治療法が注目を集めています。
この治療は、患者様ご自身のお尻の脂肪由来幹細胞を点滴で体内に投与するもので、拒絶反応のリスクが低いというメリットがあります。幹細胞は、肝臓で起きている慢性的な炎症を抑え(抗炎症作用)、肝臓が硬くなる原因である線維組織の生成を抑える(線維化抑制作用)など、肝臓の線維化そのものに働きかける可能性が期待されています。

この再生医療は、腹水、むくみ、肝性脳症、黄疸といった重い症状を持つ非代償性肝硬変の患者様でも治療の対象となり得ます(ただし、活動性のがんがある場合は治療を受けられません)。実際に、極度の体力低下や腹水、肝性脳症により外出が困難だった重症度の高い肝硬変患者様が、幹細胞点滴後に肝機能の数値が改善傾向を示し、歩行や外出が可能になったり、腹水や肝性脳症が改善したりと、生活の質の向上が見られた事例も報告されています。
健康的なダイエットのためにも、肝臓ケアを意識した生活改善に取り組みましょう。
さいとう内科クリニックでは、肝臓で気になることがある方の肝臓の状態を、血液検査や腹部エコー検査でしっかりとチェックし、今後の健康の橋渡しをしていきたいです。
- 院長
- 斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology - 所在地
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