- 2025年11月10日
【肝臓病専門医が警鐘】子どもの脂肪肝が急増中。原因はお菓子やジュース?

近年、日本の成人のおよそ3人に1人がかかっているとされる脂肪肝。肝臓病専門医として長年肝臓診療に携わる中で、私たちはこの病気がもはや一部の人の問題ではないことを痛感しています。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、機能が大きく低下するまで自覚症状が出にくいのが特徴です。放置すると肝炎、肝硬変、肝臓がんへと進行し、糖尿病や肥満、さらにはぎっくり腰や認知症といったあらゆる不調の引き金にもなり得ます。
今回は、見逃されがちな脂肪肝の真の原因と、あなたの肝臓を守るために今すぐ始めるべき具体的な対策についてお伝えします。
1. 脂肪肝の真実:原因は「お酒」だけではない
ひと昔前は「脂肪肝=お酒の飲み過ぎ」とされてきましたが、現在ではアルコール以外による代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)が激増しています。
現代病の最大の原因は「糖質の摂り過ぎ」!

肝臓病専門医は、脂肪肝の最大の原因は、糖質の摂り過ぎであると考えています。
摂取した脂質や糖質(ブドウ糖)がエネルギーとして消費されずに余ると、肝臓で中性脂肪に変換され蓄積されます。ご飯やパン、麺、果物、お菓子といった甘いものに多く含まれる糖質は、脂肪蓄積の大きな要因となります。
特に、ジュースや清涼飲料水、果物に多く含まれる果糖は、ブドウ糖よりも肝臓で直接脂肪に変わりやすいため、過剰摂取は要注意です。
どんな人でもかかるリスクがある
脂肪肝は、お酒を飲む人、飲まない人、男性、女性に関わらず、場合によっては小学生であってもかかる可能性があります。
また、痩せているからと安心はできません。体重が少なくても筋肉量が極端に少ない「隠れ肥満」の状態では代謝が低下し、脂肪が蓄積されやすくなります。さらに、痩せ型の脂肪肝は、炎症を伴うMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)に進行しやすい傾向があることも指摘されています。MASHに進行すると、肝硬変や肝臓がんへと繋がる危険性が非常に高まります。
2. 肝臓からのSOSサインと進行リスク

肝臓は予備能力が高いため、病気が進行しても全身倦怠感や疲れやすさといった漠然とした不調でしか現れないことが多いです。
しかし、肝硬変へと進行し、非代償性肝硬変(末期状態)に陥ると、生命を脅かす深刻な症状が次々と現れます。
進行期の主な危険なサイン
- 黄疸(おうだん):皮膚や白目が黄色くなる。
- 腹水・むくみ:お腹に水が溜まる、足がパンパンにむくむ。
- 肝性脳症:集中力の低下、昼間の眠気、手が羽ばたくように震える(羽ばたき振戦)。
- 手掌紅斑・クモ状血管腫:手のひらの不自然な赤みや、胸や肩のクモの巣状の血管腫。
- 吐血・黒い便(タール便):食道・胃静脈瘤破裂の可能性があり、命に関わる緊急事態。
3. 今日からできる!脂肪肝を改善する生活習慣
肝臓は再生能力が非常に高い臓器であり、生活習慣を見直すことで脂肪を落とし、代謝、解毒、免疫をパワーアップさせることが可能です。
① 食事の「ゆる糖質オフ」と食べ方の工夫

- ゆる糖質オフ:糖質をすべてカットするのではなく、ご飯、パン、麺、お菓子などの糖質を少し減らす「ゆる糖質オフ」がおすすめです。
- ゆっくり食べる:早食いは脂肪肝のリスクを高めます。満腹感を感じるまで約20分かかるため、一口30回噛むなど、ゆっくり食べることを意識し、食べ過ぎを防ぎましょう。
- 肝臓を助ける食材:食物繊維:野菜、きのこ類、海藻類を積極的に摂り、糖質の吸収を穏やかにします。
- 良質なタンパク質:ダメージを受けた肝臓の修復には、青魚(オメガ3脂肪酸)や大豆製品(豆腐、豆乳など)が有効です。ただし、ベーコンやウィンナーなどの加工品は控えましょう。
- コーヒー:1日1~2杯のコーヒーは、クロロゲン酸の作用により肝臓の炎症を抑える効果が研究で示されています。
② 継続可能な運動習慣

- 有酸素運動:ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動を、週に3回、1日30分程度行いましょう。軽く汗ばむ程度の「早歩き」は、体力アップや脂肪燃焼に最適です。
- 筋力トレーニング:筋肉量を増やして基礎代謝を上げること(脂肪が燃えやすい体づくり)も効果的です。
4. 諦めない未来へ:「沈黙の臓器」を見つけるための次の一手

「生活習慣を見直して頑張っているのに肝臓の数値が改善しない」場合、それは単純な脂肪肝ではなく、すでにMASHや肝硬変に進行している兆候かもしれません。
肝臓病専門医による正確な診断を
肝臓病の真の状態を知るには、血液検査だけでは不十分です。肝臓の脂肪の蓄積具合や、硬さ(線維化)の兆候までは分かりにくいからです。腹部超音波(エコー)検査は、痛みなく安全に肝臓の脂肪の重症度(軽度・中等度・高度)を評価し、線維化の兆候を確認できる非常に有用な検査です。
肝硬変と診断されても「希望」を捨てないで

従来の治療法では、一度硬くなった肝臓を完全に元に戻すことは困難とされてきました。肝移植が唯一の根治治療ですが、ドナー不足などの課題があります。
しかし、現在、幹細胞を用いた肝臓再生医療が、この限界を打ち破る新たな希望として注目されています。
当院では、患者様ご自身のお尻の脂肪組織から採取・培養した幹細胞を点滴で体内に戻す治療(自己脂肪由来幹細胞点滴療法)に取り組んでおります。
幹細胞は、肝臓の炎症を抑え、線維化の進行を抑制・改善し、残存肝細胞の修復・再生を促進する可能性が期待されています。これにより、肝機能の数値改善はもちろん、倦怠感の軽減、腹水やむくみ、肝性脳症のコントロールなど、生活の質(QOL)の向上に繋がることが期待されます。
重度の肝不全の症状(腹水、むくみ、肝性脳症など)がある場合でも、肝臓がんなど体内にがんがある状態を除いては、再生医療を受けていただくことが可能です。効果には個人差がありますが、半年から1年かけて徐々に改善が見られるケースが多くみられます。
「もう治らない」と絶望する前に、幹細胞治療という新しいアプローチについて、ぜひ一度肝臓病専門医にご相談ください。
さいとう内科クリニックからのお知らせ

当院の院長は、日本肝臓学会 肝臓病専門医であり、日本超音波医学会 超音波専門医でもあります。専門的な知見に基づき、患者様一人ひとりの肝臓の状態を精緻に診断し、標準治療に加え、再生医療という新たな選択肢をご提案します。
遠方にお住まいの方や来院が難しい方には、オンラインでの事前相談も受け付けております。ご本人様だけでなく、ご家族からのご相談も歓迎いたします。
あなたの肝臓の健康と、より良い未来のために、私たちが精一杯お手伝いさせていただきます。
- 院長
- 斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology - 所在地
- 〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり) - 電話
-
- 電話:078-967-0019
- 携帯電話:080-7097-5109