• 2026年1月5日

【肝臓病専門医が解説】「食べてすぐ寝ると牛になる」は本当?食後の「ごろ寝」が肝臓を救う意外な理由

「食べてすぐ横になると牛になるよ!」

子供の頃、行儀が悪いと親や祖父母からこう言われた経験はありませんか?

昔からの言い伝えでは「行儀が悪いこと」の代名詞とされてきましたが、実は医学的な視点、特に肝臓病専門医の視点から見ると、この言葉には意外な真実と、大きな誤解が隠されています。

今回は、食後すぐに「ゴロ寝」をすることが体に良いのか悪いのか、肝臓のメカニズムに基づいた「正解」についてお伝えいたします。


1.肝臓にとって、食後のゴロ寝は「最高の薬」

結論から言うと、肝臓をいたわるという意味では、食後すぐに横になることは医学的に「推奨される行動」です。

なぜなら、肝臓の働きと血流量には密接な関係があるからです。

食事をすると、胃や腸で消化吸収された栄養分は、血液に乗って肝臓へと運ばれます。肝臓はこの栄養素を分解・合成したり、有害物質を解毒したりするために、大量の酸素とエネルギー(血液)を必要とします。

しかし、人間の体は重力の影響を受けています。食後に立ったり動いたりすると、血液が筋肉や脳に分散してしまい、肝臓に十分な血液が届かなくなってしまうのです。

【姿勢による肝臓への血流量の変化】

横になっている時(臥位)100%(ベストな状態)
立っている時(立位)70%に減少
歩いたり動いたりしている時50%まで激減

このように、食後すぐに動き回ると肝臓への血流が半減してしまい、せっかくの栄養処理や解毒がスムーズに行われません。

逆に、食後にゴロリと横になることで、重力から解放され、小腸から肝臓へたっぷりと血液を送り込むことができます。 これが、肝臓の修復・再生を助ける「最高の薬」と言われる理由です。


2.「牛になる(太る)」のリスクは本当か?

では、「牛になる(太る)」という言い伝えは嘘なのでしょうか?

実は、これにも医学的な根拠があります。ここでの重要なポイントは、「横になって休むこと」と「本気で眠ってしまうこと」の違いです。

食後すぐに「熟睡(睡眠)」してしまうと、以下のリスクが生じます。

  • 脂肪肝のリスク増大: 睡眠中はカロリー消費が基礎代謝のみに低下するため、余ったエネルギーが脂肪として蓄積されやすくなります。特に夕食後すぐに寝てしまう習慣は、肝臓に脂肪がたまる「脂肪肝」の大きな原因です。
  • 消化不良と逆流性食道炎: 胃の活動が停滞し、消化不良を起こしやすくなります。また、完全に平らな状態で寝ると胃酸が逆流しやすくなります。

つまり、「食後に横になって肝臓を休めるのはOK」ですが、「そのまま朝まで寝てしまうのはNG」というのが医学的な正解です。


3.肝臓病専門医が教える「正しい食後の過ごし方」

肝臓を守りつつ、太ったり胃を荒らしたりしないための「理想的な食後のゴロ寝スタイル」をご紹介します。

時間は30分〜1時間程度

肝臓に血液を集めるには、食後30分〜1時間程度の休息が理想的です。

「熟睡」はしない

あくまで「休憩」です。テレビを見たり、読書をしたりして、起きている状態を保ちましょう。

頭と足を少し高くする

クッションを使って頭を少しだけ高くすることで胃酸の逆流を防げます。また、足を少し上げることで、下半身の血液が肝臓に戻りやすくなり、さらに血流アップが期待できます。


まとめ:肝臓を愛するなら、食後はゆったりと

「食べてすぐ寝ると牛になる」という言葉は、行儀作法や肥満予防の観点からは一理ありますが、「沈黙の臓器」である肝臓を守るためには、食後の休息は不可欠です。

特に、お酒を飲む方や、健康診断で肝臓の数値(AST, ALT, γ-GTP)が高めの方は、肝臓が疲れている証拠です。食後は無理に動かず、「今は肝臓に栄養を送っているんだ」という意識で、ゆったりと横になって体を休めてあげてください。

ただし、夕食は就寝の3時間前までに済ませること、そしてお菓子やジュース、果物などの「果糖」の摂りすぎに注意することも、肝臓を守るためには忘れないでくださいね。

さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
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兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
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