• 2026年1月6日

【肝臓病専門医が教える】肝臓を救う「タンパク質」の摂り方。なぜお肉が最高の薬になるのか?

神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

肝臓は500以上の機能を担う「生体の化学工場」ですが、その工場の稼働を支え、組織を修復するための最も重要な「建築資材」となるのがタンパク質です。

今回は、肝臓病専門医の視点から、タンパク質がどのように肝臓を救うのか、そして効率的なタンパク質の摂り方の「新常識」についてお伝えいたします。


1.肝臓はタンパク質の「製造センター」

私たちの体は日々新しく作り替えられる「動的平衡」の中にあり、速い細胞ではわずか0.7日で中身が入れ替わります。肝臓はこの代謝の中心であり、食事から摂ったアミノ酸を材料にして、生命維持に不可欠なタンパク質を合成しています。

アルブミンの重要性

血液中のタンパク質の約60%を占める「アルブミン」は、肝臓でのみ作られます。アルブミンは血管内の水分を保持する「土手」の役割を担っており、数値が3.5g/dL以下に低下すると、血管から水が漏れ出し、深刻なむくみや腹水を引き起こします。

運び屋としての機能

アルブミンは、ビタミンA、鉄、さらには病気の時に飲む「薬」を必要な部位まで運ぶトラックの役割も果たしています。タンパク質が不足すると、せっかく摂った栄養や薬が十分に働かない原因となります。


2.植物性よりも「動物性タンパク質」を優先すべき理由

肝機能を回復させ、効率よくアルブミン値を上げるためには、大豆製品などの植物性よりも、肉・魚・卵といった「動物性タンパク質」を優先することが医学的に合理的です。

アミノ酸スコアの高さ

9種類の必須アミノ酸がバランスよく含まれている指標を「アミノ酸スコア」と呼びます。鶏卵、牛肉、アジなどはスコアが100であり、人間に近いアミノ酸組成を持つため、効率よく筋肉や肝細胞の材料になります。

筋肉が肝臓の「身代わり」になる

タンパク質の代謝で生じる有害なアンモニアは通常肝臓で解毒されますが、実は筋肉にもアンモニアを処理する力があります。良質なタンパク質を摂って筋肉を維持することは、肝臓の「残業時間」を減らし、肝臓が自身の修復に専念できる時間を確保することに繋がります。


3.肝臓の再生を助ける「肝活」の裏技

タンパク質を摂るだけでなく、その効果を最大化する習慣を組み合わせましょう。

BCAA(分岐鎖アミノ酸)の活用

バリン、ロイシン、イソロイシン(BCAA)は、筋肉の合成を促し、肝性脳症の改善や肝臓の負担軽減に直結します。特に鶏むね肉にはBCAAが豊富に含まれています。

食後の「ごろ寝」は最高の薬

食後すぐに横になると、立っている時よりも肝臓への血流量が1.5倍に増えます。血流が増えることで、摂取したタンパク質が効率よく肝臓に届けられ、肝細胞の修復やアルブミンの合成が劇的に促進されます。

「ゆる糖質オフ」との組み合わせ

糖質、特に果糖(フルクトース)は肝臓でダイレクトに中性脂肪に変わるため、タンパク質をしっかり摂りつつ、ジュースや甘い果物を控えることが脂肪肝改善の近道です。


4.食事改善で数値が上がらない方へ:再生医療の選択肢

長年の炎症により肝臓が硬く変化した「肝硬変」の状態では、どんなにタンパク質を摂取しても、製造工場である肝臓そのものの機能が追いつかず、アルブミン値が上がらないことがあります。

当院では、こうした従来の標準治療では限界があった患者様に対し、患者様自身の細胞を用いた「肝臓再生医療(幹細胞治療)」を提供しています。

  • メカニズム: 投与された幹細胞が肝臓の慢性炎症を抑え、硬くなった組織(線維化)の改善を促します。
  • 期待できる変化: 実際に治療を受けられた方で、アルブミン値の上昇や腹水の減少、肝性脳症の改善、体力の回復が見られ、再び旅行や外出を楽しめるようになった事例も報告されています。

まとめ:肝臓はあなたの「家」を守る職人です

タンパク質は、その家を修理するための「最高級の材木」です。いくら腕の良い職人(肝臓)がいても、材木がなければ壁のひび(肝細胞の破壊)を直すことはできません。

さらに、職人が疲れ切っているなら、再生医療という「最新の修復チーム」の力を借りて、土台から立て直すことが必要です。

適切な材料(栄養)を送り込み、働きやすい環境(休息と医療)を整えることで、100歳まで現役で働いてくれる肝臓を作っていきましょう。

さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり)
電話
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