• 2026年2月5日

【肝臓病専門医が解説】純烈・酒井一圭さんを襲った「お酒を飲まない脂肪肝」の恐怖。余命宣告の裏にあるMASLDとは?

神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

先日、人気歌謡グループ「純烈」のリーダー、酒井一圭さん(50)がテレビ番組で、過去に医師から「生活改善しないと余命17年、寿命は60歳」と宣告されていたことを明かし、大きな話題となりました。

酒井さんのケースで特に衝撃的だったのは、彼が「お酒を一滴も飲めない(下戸)」にもかかわらず、重度の脂肪肝と診断されていた点です。

「お酒を飲まないから肝臓は大丈夫」

そう思っている方は多いかもしれませんが、現代医学においてその常識は覆されつつあります。今回は、酒井さんの事例を元に、お酒を飲まない人に急増している脂肪肝(MASLD)の正体と、命を守るための対策についてお伝えいたします。


1.お酒を飲まないのに、なぜ脂肪肝に?

酒井さんは、ブレーク前の体重78kgから、忙しくなった43歳時には102kgまで激増していたそうです。

原因として「食べられる時に食べていた」「早食い」などが挙げられていますが、これこそが、非アルコール性の脂肪肝、現在はMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)と呼ばれる病態の典型的な原因です。

MASLD(マッスルディー)とは

以前はNAFLDと呼ばれていましたが、現在はMASLDという名称が使われ始めています。これは、肥満、糖尿病、脂質異常症などの「代謝機能の異常」が原因で肝臓に脂肪が溜まる病気です。

メカニズム

食事で摂った糖質や脂質がエネルギーとして消費されずに余ると、肝臓で中性脂肪に変換されて蓄積されます。特に、酒井さんのように短期間で体重が増加するような食生活は、肝臓への脂肪蓄積を加速させます。


2.医師が指摘した「早食い」の危険性

報道によると、酒井さんは「早食い」も原因の一つとして指摘されたそうです。実は、早食いは肝臓にとって非常に大きな負担となります。

血糖値の急上昇

人間の体は食事を始めて約20分後に満腹感を感じるようにできています。早食いをすると、満腹を感じる前に食べすぎてしまい、カロリーオーバーになりがちです。

脂肪の蓄積

よく噛まずに飲み込むと血糖値が急激に上がり、インスリンというホルモンが大量に分泌され、余った糖をせっせと脂肪に変えて肝臓に溜め込んでしまいます。

対策

一口につき30回噛んでゆっくりと食べることを意識するだけで、血糖値の上昇を抑え、脂肪肝のリスクを下げることができます。


3.「余命」という言葉の意味と、MASHへの進行

酒井さんが「余命」を告げられた背景には、単なる脂肪肝から、より深刻なMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)へ進行するリスクがあったと考えられます。

沈黙の進行

脂肪肝(MASLD)の一部は、肝臓に炎症が起きるMASHへと進行します。さらに放置すると、肝細胞が壊れて硬くなる「線維化」が進み、取り返しのつかない肝硬変や肝がんへと至ります。

寿命を縮める理由

肝硬変に進行すると、肝不全や食道静脈瘤の破裂など、命に関わる合併症のリスクが飛躍的に高まります。酒井さんへの「余命」という警告は、このままの生活を続ければ肝硬変・肝がんへのルートに乗ってしまうという、医師からの強いメッセージだったと言えます。


4.肝臓を守るために今できること

酒井さんは診断後、食生活の改善に取り組み、現在は定期的に人間ドックを受けているそうです。これは非常に素晴らしい判断です。

まずは検査を

血液検査(ALT、AST)だけでなく、腹部エコー検査を受けることが重要です。エコー検査では、肝臓の脂肪の蓄積具合(輝度)や、肝臓が硬くなっていないか(線維化の兆候)、肝臓がんはないか(腫瘍性病変の有無)について視覚的に確認できます。

食事と運動

「ベジファースト(野菜から食べる)」を徹底し、糖質の過剰摂取(特にお菓子やジュース、果物の果糖)を控えることが基本です。また、スクワットなどの筋トレで筋肉を維持することは、肝臓の代謝を助け、休息させることにつながります。


まとめ:肝臓は「再生」できる臓器です

酒井さんのように、適切なタイミングで生活習慣を見直せば、肝臓は元の健康な状態に戻る力(再生能力)を持っています。

しかし、もしすでに肝臓が硬くなり(線維化)、標準治療だけでは改善が難しい段階に進んでしまっている場合は、ご自身の細胞を用いた「肝臓再生医療(幹細胞治療)」という新たな治療法もあります。私たちは、肝硬変のため不安に苛まれ、困っている皆さんを決して見捨てたり諦めたりしません。肝臓病専門医とともに二人三脚でこの病気に対峙していきましょう。

さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
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兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
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