- 2026年4月9日
【肝硬変の食事療法】食べてはいけないものと、肝臓の「自己修復力」を高めるための栄養知識

こんにちは。 神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。
肝硬変と診断された方、あるいはご家族が診断された方にとって、「毎日の食事をどうすればいいのか」は最も切実な悩みのひとつです。インターネットで検索すると「あれもダメ、これもダメ」と制限ばかりが目につき、何を食べれば正解なのか分からなくなってしまう方も多いのではないでしょうか。
確かに、進行した肝臓を守り、合併症を防ぐために「控えるべきもの」は存在します。しかし、それ以上に大切なのは、肝臓の機能を助け、自己修復力を引き出すための「必要な栄養素」を正しく摂ることです。 今回は、肝臓病専門医の視点から、肝硬変で食べてはいけないものと、積極的に補うべき栄養知識についてお伝えします。
■ 肝硬変の進行を防ぐために「食べてはいけないもの・控えるべきもの」

まずは、肝臓に負担をかけず、深刻な合併症を防ぐための基本的な食事制限について整理しましょう。
塩分の多い食事(漬物、干物、汁物など)
肝硬変が進行すると、お腹に水が溜まる「腹水」や足のむくみが出やすくなります。塩分(ナトリウム)は体に水分を溜め込む性質があるため、腹水がある場合は1日あたりの塩分摂取量を5〜6gに厳密にコントロールする必要があります。
鉄分の多い食品(レバー、シジミなど)
「肝臓にはレバーやシジミが良い」というイメージをお持ちの方も多いですが、C型肝炎やMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎:旧NASH)由来の肝硬変の場合、鉄分が肝臓に過剰に蓄積し、かえって酸化ストレスを生んで炎症を悪化させる危険性があります。自己判断での過剰摂取は控えましょう。
生の魚介類や生肉
肝硬変になると、細菌やウイルスに対する免疫力が著しく低下します。生の魚介類(特に夏場のカキなど)に潜むビブリオ・バルニフィカス菌などに感染すると、重篤な状態に陥るリスクがあるため、食材は必ず中心部までしっかり加熱してください。
アルコール類
言うまでもありませんが、アルコールは肝臓にとって最大の負担となります。肝硬変の原因がアルコール性であってもなくても、絶対的な禁酒が基本です。
■ 制限ばかりは逆効果?肝硬変における「栄養失調」の落とし穴

食べてはいけないものを意識するあまり、極端な食事制限をしてしまう方がいらっしゃいますが、実はこれは非常に危険です。 肝臓は、食事から摂った栄養を体に使える形に変えて貯蔵する「エネルギー工場」です。肝硬変になるとこの機能が落ちるため、慢性的なエネルギー不足(栄養失調状態)に陥りやすくなります。実際、「肝硬変患者さんが1日絶食することは、健康な人が3日間絶食したのと同じくらい状態が悪くなる」と報告されているほどです。
エネルギーが足りないと、体は自分の筋肉を分解して補おうとします(サルコペニア)。筋肉は、肝臓が処理しきれない有毒な「アンモニア」の解毒を肩代わりしてくれる重要な組織です。筋肉が減ると、アンモニアが脳に回って意識障害を引き起こす「肝性脳症」のリスクが跳ね上がってしまいます。 そのため、かつては厳格なタンパク質制限が推奨された時代もありましたが、現在は筋肉量を維持するために、バランスの良い食事を「1日4〜5回の少量頻回食」などに分けてこまめに摂ることが推奨されています。
■ 肝臓と筋肉を助ける「BCAA」と「タウリン」
筋肉の低下を防ぎ、肝臓の機能をサポートするために特に意識したいのが、特定のアミノ酸です。
BCAA(分岐鎖アミノ酸)

筋肉の合成を促し、エネルギー源となるアミノ酸です。肝硬変の患者様は血中のBCAAが不足しやすいため、これを補給することで肝臓の機能の指標である血中アルブミン値の改善や筋肉量の増加、ひいては肝性脳症の予防や改善が期待できます。当院の院長は、血中アルブミン値が3.4mg/dl以上の肝硬変患者様にはBCAA顆粒(リーバクト)が血中アルブミン値をより高めることができると国際医学誌にて論文発表を行っております。(出典:Intern Med 2014; 53(14): 1469-75)また、血中アルブミン値が3.4mg/dl未満の進行した肝硬変患者様にはBCAAを含む成分栄養剤(アミノレバンEN配合散)が血中アルブミン値を高めることができると考えています。
タウリンとL-カルニチン

イカ、タコ、ホタテなどの魚介類に多く含まれる「タウリン」は、肝細胞の修復や機能維持に重要な働きをします。 また、肝硬変が進行して起こる「肝性脳症」の治療において、当院の院長は「L-カルニチン(エルカルチン)」という成分が症状改善に有効であることを本邦で初めて報告しました。さらに、その研究の中で、「治療前に体内の血清タウリン濃度が高い患者様ほど、L-カルニチンによる肝性脳症の改善効果が得られやすい」という新たな指標を発見し、国際医学誌にて論文発表を行っております。(出典:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224)
日頃からタウリンをはじめとする必要な栄養素を意識して取り入れ、肝臓をサポートできる体づくりをしておくことは、医学的な観点からも非常に重要だと言えます。
■ 食事療法と並行して考えたい「肝臓再生医療」という選択

正しい食事・栄養療法は、肝硬変治療の絶対的な土台です。しかし、すでに肝臓の線維化(硬くなること)が進行している場合、食事療法や現在の標準的な治療だけで、元の柔らかく正常な肝臓に戻すことは難しいのが現状です。
そこで、食事療法や標準治療と並行して検討したいのが「幹細胞を用いた肝臓再生医療」です。 これは、患者様ご自身の臀部(お尻)の皮下脂肪から採取・培養した幹細胞を、点滴で体内に戻す最新のアプローチです。幹細胞が肝臓に集まり、慢性的な炎症を抑え、線維化の進行を抑制・改善し、傷ついた組織の修復を促す効果が期待されています。当院で肝臓再生医療を受けられた肝硬変患者様において、幹細胞点滴後半年から1年経過したタイミングで、肝臓の数値の改善や腹水、肝性脳症、黄疸の改善がみられるケースがあり報告させていただいています。また、肝臓再生医療は、ご自身の細胞を使用するため、拒絶反応のリスクが極めて低いのも大きな特徴です。
毎日の食事で肝臓への負担を減らし筋肉を維持しつつ、再生医療で細胞レベルからの機能回復を目指す。この両輪が、これからの肝硬変治療における大きな希望となります。
■ 今の治療に「限界」を感じて諦めていませんか?

日々の診療の中で、「これ以上、今の標準治療だけでは肝機能を回復させることが難しい」と告げられ、流れに身を任せて諦めかけている患者様を数多く診てきました。 しかし、まだできることは残されているかもしれません。

さいとう内科クリニックでは、標準治療ではカバーしきれない進行した肝炎・肝硬変の患者様を少しでもサポートしたいという強い思いから、新たな選択肢として「幹細胞を用いた肝臓再生医療」を提供しています。 「もう打つ手がないのだろうか」と一人で抱え込まず、まずは肝臓病専門医にご相談ください。遠方の方やご来院が難しい方でも、ご自宅からお話しいただける「Curon(クロン)を利用したオンライン事前相談」を受け付けております。ご家族からのご相談も歓迎いたします。
- 院長
- 斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology - 所在地
- 〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり) - 電話
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- 電話:078-967-0019
- 携帯電話:080-7097-5109
- アクセス
- 当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。
