• 2025年4月7日

肝機能障害の初期症状とは?気になるサインと早期発見の大切さ

「なんだか最近疲れやすい…」

「食欲がないのは仕事が忙しくて疲れすぎているからかな?」

 そんな、つい見過ごしてしまいがちな体のサイン。もしかしたら、それは「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓からのSOSかもしれません。

肝機能障害は、初期段階では自覚症状がほとんどないことが多く、気づいたときには病状が進行してしまっているケースも少なくありません。しかし、早期に発見し、適切な対応をすれば、重症化を防いだり、改善したりすることが可能です。

今回は、肝機能障害の分かりにくい初期症状や、見逃さないためのポイント、そして早期発見の重要性について、詳しく解説していきます。健康診断で肝臓の数値を指摘された方、日々の体調に少しでも不安を感じている方は、ぜひ最後までお読みください。


肝臓ってどんな働きをしているの?

まず、私たちの体にとって肝臓がいかに重要か、簡単におさらいしましょう。肝臓は主に以下の3つの大切な役割を担っています。

  1. 代謝: 食事から摂った栄養素を体で使える形に変えたり、貯蔵したりします。
  2. 解毒: アルコールや薬、体内で作られた有害物質を分解し、無毒化します。
  3. 胆汁の生成・分泌: 脂肪の消化吸収を助ける胆汁を作ります。

このように、肝臓は生命維持に不可欠な働きを数多くこなす、まさに「体の化学工場」。この肝臓の機能が何らかの原因で低下してしまう状態が「肝機能障害」です。


肝機能障害の原因は?身近に潜むリスク

肝機能障害の原因は様々ですが、近年特に注目されているのが以下の3つです。

  • ウイルス感染: B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスなどへの感染。
  • アルコールの過剰摂取: 長期間の多量飲酒によるアルコール性肝障害(脂肪肝、肝炎、肝硬変)。
  • 生活習慣: 食べ過ぎや運動不足による脂肪肝。特に、アルコールを飲まない人でも発症する非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)や、そこから進行する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が増えています。

これらは誰にでも起こりうる、非常に身近なリスクと言えるでしょう。


見逃さないで!肝機能障害の”気になる初期サイン”

ここが一番大切なポイントです。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれる通り、初期には症状がほとんど現れません。しかし、注意していれば気づけるかもしれない”サイン”があります。

【要注意!「なんとなく不調」に隠れたサイン】

全身倦怠感・疲れやすさ: 「十分寝ても疲れが取れない」「体が重だるい」といった症状は、肝機能低下によってエネルギーがうまく作れなかったり、体内に疲労物質が溜まったりしているサインかもしれません。風邪や単なる疲労と間違われやすいですが、長く続く場合は要注意です。
・食欲不振・吐き気: 胃の調子が悪いと感じていても、実は肝臓が影響している可能性があります。
・腹部膨満感: なんとなくお腹が張る感じがする。特にアルコール性脂肪肝の初期に見られることがあります。

【少し進行すると現れる可能性のあるサイン】

これらの症状が出ている場合は、すでにある程度進行している可能性も考えられます。

黄疸(おうだん): 皮膚や白目が黄色っぽくなる。
・むくみ: 特に足がむくみやすい。
・尿の色が濃くなる: ビールのような濃い褐色になる。
皮膚のかゆみ: 全身がかゆくなる。
手のひらが異常に赤くなる(手掌紅斑)
胸や肩あたりにクモの巣のような形の赤い血管腫ができる(クモ状血管腫)

重要: これらの症状は、必ずしも肝機能障害だけが原因とは限りません。しかし、「いつものこと」「そのうち治るだろう」と自己判断せず、肝臓からのサインかもしれない、と疑ってみることが大切です。


なぜ「早期発見」がそんなに大切なのか?

症状が出にくい肝機能障害ですが、なぜ早期発見が重要なのでしょうか?

  • 重症化を防ぐため: 肝機能障害を放置すると、慢性肝炎から肝硬変、さらには肝がんへと進行するリスクが高まります。特に脂肪肝は「ただ太っているだけ」と軽視されがちですが、NAFLDの一部はNASHへと進行し、肝硬変や肝がんの原因となりえます。アルコール性肝障害も、飲酒を続ければ確実に悪化していきます。
  • 改善・回復の可能性を高めるため: 早期であればあるほど、治療による改善が期待できます。
    • 脂肪肝: 禁酒・節酒、食事療法、運動療法といった生活習慣の改善で、正常な状態に戻せる可能性があります。
    • ウイルス性肝炎: 近年、効果的な治療薬が登場し、ウイルスの排除や活動の抑制が可能になっています。

症状がないから大丈夫、と思わずに、早期にリスクを発見し、対処することが、将来の深刻な病気を防ぐ鍵となるのです。


早期発見のために、今日からできること

では、症状が出にくい肝機能障害を早期に発見するためには、どうすれば良いのでしょうか?

  1. 定期的な健康診断を受ける: これが最も確実で重要な方法です。血液検査でAST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPといった肝機能の数値を確認しましょう。基準値内であっても、毎年の数値の変化をチェックすることが大切です。必要に応じて、腹部超音波(エコー)検査も受けましょう。脂肪肝の有無などを確認できます。
  2. 自分の体調変化に気を配る: 「なんとなく続く不調」を見逃さないようにしましょう。特に、原因不明の倦怠感や食欲不振が続く場合は注意が必要です。
  3. リスク要因を把握する:
    • 飲酒習慣: 飲む場合は適量(1日純アルコール20g程度:ビール中瓶1本、日本酒1合相当)を守る意識を。女性やアルコールに弱い方はさらに少ない量でも注意が必要です。
    • 生活習慣: 肥満気味、運動不足、甘いものや脂っこいものをよく食べる方は、脂肪肝のリスクが高いことを自覚しましょう。
    • その他: 過去の輸血歴、家族の肝臓病歴なども確認しておきましょう。
  4. 気になる症状があれば、迷わず医療機関へ: 「ちょっとおかしいな」と感じたら、自己判断せずに内科や消化器内科を受診しましょう。早期の相談が、早期発見・早期治療につながります。

まとめ

肝機能障害は、初期症状がほとんどない「静かなる病」です。しかし、放置すれば肝硬変や肝がんといった深刻な状態に進行する可能性があります。

「だるさ」「疲れやすさ」といった日常的な不調の中に、肝臓からのSOSサインが隠れているかもしれません。そのサインを見逃さず、早期発見につなげるためには、定期的な健康診断と、日々の体調変化への意識が不可欠です。

この記事が、ご自身の肝臓の健康について考え、生活習慣を見直すきっかけとなれば幸いです。気になることがあれば、決して放置せず、早めに専門医に相談してくださいね。

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