• 2025年7月8日

「もう一度、旅行に行きたい」を諦めない。肝硬変治療におけるQOL(生活の質)の重要性と再生医療がもたらす5つの変化

健康診断の数値が改善した。病気が進行せずに済んだ。もちろん、これらは治療における大切な目標です。しかし、本当に大切なことは、その先の「あなたの生活」がどう変わるかではないでしょうか?

「昔のように、気兼ねなく旅行に行きたい」
「孫と公園で思いっきり遊びたい」
「美味しいものを、心ゆくまで味わいたい」

肝硬変の治療目的は、単に延命するだけではありません。あなたの「その人らしい、質の高い生活(QOL:Quality Of Life)」を取り戻すことこそが、本当のゴールです。

このブログでは、肝硬変がなぜQOLを低下させるのか、そして、再生医療があなたの生活にどのようなポジティブな変化をもたらす可能性を秘めているのかを、具体的な5つの視点からお伝えします。


肝硬変が奪う「生活の質(QOL)」:その原因と苦しさ

肝硬変の合併症として、肝性浮腫・腹水、そして肝性脳症は、いずれも患者さんのQOLを著しく低下させ、生命予後にも密接に関係する病態です。肝硬変が進行すると、肝臓の機能が低下し、全身に様々な影響を及ぼします。これにより、多くの患者さんが日常生活におけるQOLの低下を感じることになります。

主なQOL低下の原因としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 全身倦怠感・だるさ: 肝臓の代謝機能が低下し、エネルギーが十分に作られなくなるため、常に体が重く、疲れやすい状態が続きます。肝硬変患者さんの栄養状態は非常に悪く、1日絶食するだけで、健康な人が3日間絶食したのと同じぐらい状態が悪くなることが報告されています。
  • 食欲不振・吐き気: 消化・吸収に関わる肝臓の働きが弱まることで、食欲が落ちたり、吐き気を感じたりすることがあります。食事が楽しめなくなることは、大きなストレスです。
  • 腹水による苦しさ: 肝臓が硬くなることで、お腹に水が溜まる「腹水」が生じることがあります。これは、肝機能低下によるアルブミン合成の減少や、肝臓の線維化による門脈圧亢進が主な原因です。お腹の張りや苦しさ、むくみ、呼吸困難感などを引き起こし、外出や活動を制限します。利尿剤(フロセミドやトルバプタンなど)でコントロールできない「難治性腹水」の場合、腹水を抜く処置や、腹水から有害物質を除去し必要なタンパク質を濃縮して体に戻す「腹水濾過濃縮再静注法(KM-CART)」といった治療も行われますが、これらは対症療法であり、繰り返しの処置が必要になることもあります。
  • 不眠・精神的な混乱: 肝臓が有害物質を解毒しきれず、アンモニアなどの毒素が脳に影響を及ぼす「肝性脳症」は、肝硬変患者さんのQOL低下や予後悪化にも影響する重要な合併症です。臨床症状が明確でない「不顕性肝性脳症」でも、認知機能の低下が見られ、交通事故を起こすリスクが高まることや、高齢患者さんの転倒リスクが増すことが指摘されています。これにより、昼夜逆転や集中力の低下、精神的な混乱が生じ、ぐっすり眠れないことがあります。当院の院長が本邦での肝性脳症に対するエルカルチンの有効性を初めて報告するなど、肝性脳症の診療は日々進化しています。

これらの症状は、あなたの「〇〇したい」という願いを阻み、生活の楽しみを奪ってしまいます。


再生医療がもたらす5つの変化:あなたの「したい」を応援する可能性

幹細胞を用いた再生医療は、これまでの治療では難しかった肝臓の線維化改善や、残存肝細胞の機能向上に働きかけることで、肝硬変によるQOLの低下を改善し、あなたの生活に以下のようなポジティブな変化をもたらす可能性があります。

① だるさからの解放:エネルギーが湧く日々に

肝機能の改善は、全身のエネルギー代謝を向上させ、慢性的なだるさや倦怠感を軽減する可能性があります。栄養療法(夜間就寝前の補食「LES」や分岐鎖アミノ酸「BCAA」製剤の活用など)も重要ですが、肝臓そのものの機能が底上げされることで、朝スッキリ目覚め、日中の活動意欲が湧くことで、「もう一度、趣味を再開したい」「友人と会って話したい」といった願いに繋がります。

② 食事が美味しくなる:食べる喜びを取り戻す

肝機能の改善は、吐き気や消化器系の不快感を和らげることにも繋がります。食欲が回復し、食事が美味しく感じられるようになることで、失われていた「食べる喜び」を再び取り戻し、家族との食卓を囲む時間が豊かになるかもしれません。

③ ぐっすり眠れる:穏やかな夜の訪れ

肝性脳症の症状が改善することで、昼夜逆転や不眠が改善され、質の良い睡眠が得られる可能性があります。肝性脳症はアルブミン値の低下(特に3.2 g/dL以下)との関連も指摘されており、肝機能の改善はこれらの症状にも良い影響を与えます。ぐっすり眠れることは、心身の回復を促し、日中の活動をより充実させる基盤となります。

④ 外出への不安が減る:行動範囲が広がる自信

腹水のコントロールがしやすくなることで、お腹の張りの苦しさや、頻繁なトイレの心配が軽減される可能性があります。再生医療による肝機能改善は、腹水の発生を抑えたり、利尿剤の効果を高めたりする効果も期待でき、これにより、外出への不安が減り、長時間の移動や旅行にも挑戦できるような自信を取り戻せるかもしれません。KM-CARTのような治療と組み合わせることで、さらにQOL向上が期待できる場合もあります。

⑤ 気持ちが前向きになる:心の安定と笑顔

体調の改善は、精神的な安定にも大きく繋がります。身体が楽になることで、気分が落ち込むことが減り、前向きな気持ちで日々の生活を送れるようになります。笑顔が増え、家族や友人との関係もより良いものになるでしょう。


あなたの「〇〇したい」を諦める前に

肝硬変と診断され、身体的なつらさや精神的な不安の中で、「もう昔のように〇〇はできないだろう」と諦めかけているかもしれません。しかし、再生医療は、あなたの肝臓の力を引き出し、あなたの「〇〇したい」という願いを再び現実にする可能性を秘めています。

「もう一度旅行に行きたい」
「家族との時間を大切にしたい」「ただ、穏やかな日々を送りたい」

あなたのその切実な願いを、諦める前に一度私たち専門医に聞かせていただけませんか?
当院では、あなたの「生活の質」を向上させるための治療法として、Curonを利用したオンライン事前相談も受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

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