• 2025年8月14日

「脂肪肝」と言われたら?治療法と今日からできる改善策

こんにちは、さいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

健康診断で「脂肪肝ですね」と指摘され、驚かれたり、不安を感じたりした方もいらっしゃるのではないでしょうか?「特に症状もないし、お酒もそんなに飲まないから大丈夫だろう」と軽く考えがちですが、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど、病気が進行しても自覚症状が出にくい特性を持っています。そのため、健康診断の数値は、あなたの肝臓が今どのような状態にあるのかを知るための重要な手がかりとなります。

脂肪肝は、多くの場合、適切な対策を講じることで改善が期待できる病気です。しかし、「ただの脂肪の蓄積」と安易に捉えず、その裏に隠された見過ごされがちなリスクや、専門的な診断・治療の重要性について、この記事で詳しくお伝えしたいと思います。


脂肪肝の「真の姿」と見過ごされがちな原因

脂肪肝の原因はアルコールの過剰摂取や肥満がよく知られていますが、実はそれだけではありません。中には、一見健康的に見える方でも進行しているケースや、意外な生活習慣が原因となっているケースがあります。

「隠れ脂肪肝」の危険性:痩せ型でも安心できない理由

「自分は痩せているから脂肪肝とは無縁だ」と思っていませんか?しかし、痩せ型の方でも脂肪肝を指摘されるケースが近年注目されています。特に、体重は少なくても筋肉量が極端に少ない「隠れ肥満」の状態である場合、摂取したエネルギーが効率的に消費されず、脂肪が肝臓に蓄積されやすくなります。また、タンパク質の不足や急激なダイエットも、肝臓の脂肪代謝を妨げ、脂肪肝の原因となることがあります。

食生活の意外な落とし穴:早食いと果糖

脂肪肝の改善策として「糖質制限」が注目されがちですが、「早食い」も脂肪肝のリスクを高めることが分かっています。食事を始めてから満腹感を感じるまでに約20分かかると言われており、早食いをするとその前に必要以上の量を食べてしまい、カロリーオーバーに繋がりやすいためです。また、清涼飲料水や加工食品に多く含まれる「果糖」は、ブドウ糖よりも肝臓で直接脂肪に変わりやすいため、過剰摂取には注意が必要です。

筋トレが肝機能値を上げる?:見極めが大切な「筋肉のせい」

健康のために始めた筋力トレーニングが、健康診断でASTやALTといった肝機能の数値上昇として現れることがあります。ASTは肝臓だけでなく、心臓や骨格筋にも多く含まれる酵素のため、激しい運動で筋肉がダメージを受けると一時的に上昇することがあります。しかし、「筋トレのせいだから大丈夫」と安易に自己判断するのは危険です。その裏に、隠れた脂肪肝や、さらに進行した非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などの肝臓そのものの問題が隠れているケースも少なくありません。プロテインや特定のサプリメントの過剰摂取も肝臓に負担をかける可能性があるため注意が必要です。


早期発見と正確な診断が未来を左右する

肝臓は「沈黙の臓器」であるため、脂肪肝が進行しても自覚症状が出にくいのが特徴です。症状がないからといって放置すると、肝臓に炎症が起きるNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)へと進行し、さらに悪化すると肝硬変や肝がんへと繋がる危険性があります。

血液検査だけでは見えない「肝臓の真の状態」

健康診断で行われるAST、ALT、γ-GTPなどの血液検査は、肝臓に何らかのダメージが起きていることを示す重要なサインです。しかし、これらの数値が正常範囲内でも、超音波(エコー)検査で脂肪肝が見つかることは珍しくありません。また、血液検査だけでは、肝臓に脂肪がどの程度蓄積しているか、炎症が起きているか、そして肝臓が硬くなり始めているか(線維化)を正確に判断することは難しい場合があります。

専門医による精密検査の重要性

あなたの肝臓の「本当の状態」を知り、適切な治療方針を見つけるためには、自己判断を避け、肝臓病専門医による詳細な検査を受けることが不可欠です。

腹部超音波(エコー)検査

エコー検査は、痛みなく安全に、肝臓の脂肪の蓄積具合(軽度、中等度、高度)を視覚的に評価できる非常に有用な手段です。また、肝臓の形や大きさ、炎症の兆候を確認することもできます。当院の院長は日本肝臓学会の肝臓病専門医であると同時に、日本超音波医学会の超音波専門医でもあり、細微な変化も見逃さないよう、質の高い検査を提供しています。

肝硬度測定(Shear Wave エラストグラフィなど)

エコー検査と組み合わせて行われる肝硬度測定は、肝臓の硬さ(線維化の程度)を数値で客観的に評価できる画期的な検査です。これにより、脂肪肝が炎症を伴うNASHへと進行し、さらに肝硬変へと進むリスクをより正確に判断することが可能になります。

これらの検査によって、あなたの脂肪肝がどの段階にあり、NASHに進行している可能性があるのか、線維化が進んでいるのかなど、正確な診断が得られます。それに基づいて、あなたに本当に合った治療計画を立てることが、改善への近道となります。


「もう治らない」と諦める前に:再生医療という新たな治療の選択肢

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AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。脂肪肝の改善には、食事療法や運動療法といった活習慣の改善が最も効果的で重要であることは間違いありません。しかし、長期間努力を続けてもなかなか数値が改善しない方や、すでに肝臓の線維化が進んでいると診断された方もいらっしゃるかもしれません。従来の治療法では、一度硬くなってしまった肝臓を完全に元の状態に戻すことは困難とされてきました。

しかし、医療は日々進歩しています。

幹細胞治療の可能性

さいとう内科クリニックでは、このような患者様に対し、幹細胞を用いた肝臓再生医療という新しい治療アプローチを提供しています。この治療は、患者様ご自身の脂肪組織から採取した幹細胞を培養し、点滴で体内に戻すことで、肝臓の炎症を抑え、線維化の進行を抑制し、残存する肝細胞の修復や再生を促す可能性が期待されています。

治療のメカニズム

幹細胞は、損傷した肝組織に集まる「ホーミング効果」を持ち、肝臓の慢性的な炎症を鎮める「抗炎症作用」を発揮します。また、肝臓が硬くなる原因である線維組織の生成を抑えたり(線維化抑制作用)、傷ついた肝細胞の修復や新しい血管の形成を促す物質を分泌したりすることで(組織修復促進作用)、肝臓自身の回復力をサポートすると考えられています。

期待できる効果

これにより、ASTやALTといった肝機能の数値の改善が期待できるだけでなく、全身倦怠感の軽減、食欲の改善、腹水やむくみのコントロールなど、患者様のQOL(生活の質)の向上にも繋がる可能性があります。特に、従来の治療ではアプローチが難しかった肝臓の線維化そのものに働きかけ、進行を食い止める、あるいは改善させる可能性を秘めています。

安全性と費用

患者様ご自身の細胞を使用するため、拒絶反応のリスクが極めて低いというメリットがあります。ただし、肝臓再生医療は現時点では公的医療保険の適用外である自由診療となり、治療費用は1回あたり初回は330万円(税込)です。1回の点滴で完全に治癒する魔法のような治療ではなく、半年程度の期間をかけてゆっくりと効果が現れることが多いですが、病状や体質によっては複数回の点滴が必要となる場合もあります。なお、治療費用は医療費控除の対象となる可能性があります(上限200万円)。

幹細胞治療は、肝硬変の症状が顕著になる前の段階で検討することで、残された肝機能の回復を促し、病気の進行を遅らせる可能性を高めることができます。また、「肝移植しか道はない」と言われた方にとっても、移植までの「橋渡し」となったり、あるいは肝移植を回避できる可能性を提示したりする、新たな希望となり得るものです。


あなたの肝臓の未来のために、今すぐ行動を

健康診断で肝臓の数値の異常を指摘されても、「なぜだろう」「どうしよう」と一人で抱え込まず、専門医に相談することが最も重要です。症状がないからと放置すると、病気が静かに進行し、手遅れになるリスクがあります。

さいとう内科クリニックでは、日本肝臓学会の肝臓病専門医であり、日本超音波医学会の超音波専門医でもある院長が、あなたの肝臓の状態を精緻に診断し、最適な治療計画を提案いたします。

また、Curon(クロン)を利用したオンラインでの事前相談も受け付けておりますので、遠方にお住まいの方や、すぐに来院が難しい方も、ぜひお気軽にお問い合わせください。ご本人様だけでなく、ご家族からのご相談も歓迎いたします。

あなたの肝臓の数値を改善し、未来の健康を取り戻すために、私たちがお手伝いできることがあるかもしれません。

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