- 2025年9月7日
【肝臓病専門医が解説】お酒好きは要注意!あなたの肝臓、悲鳴をあげていませんか? “沈黙の臓器”の危険なサイン

さいとう内科クリニック院長の斎藤です。
先日、Yahoo!ニュースに「肝硬変、アルコール摂取による発症が増加」という記事が掲載されました。この記事は、「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓の異常をいかに早期に発見し、対処することが重要であるかを、改めて私たちに教えてくれます。
▶ Yahoo! 肝硬変、アルコール摂取による発症が増加 “沈黙の臓器”に現れる異変とは 放置すれば命に関わる進行をどう防ぐか【医学博士が監修】
自覚症状が出た時には、すでに深刻な状態になっていることも少なくないのが肝臓の病気の怖いところです。今回はこの記事の内容も踏まえ、肝硬変の現状と、当院が提供する新たな治療の可能性について詳しくお伝えします。
忍び寄る脅威。アルコール性肝硬変は10年で3倍に

かつて肝硬変の主な原因はB型肝炎、C型肝炎といった肝炎ウイルスでしたが、近年、その構図は大きく変化しています。ニュース記事でも指摘されている通り、アルコールが原因の肝硬変患者の割合は、この10年余りで約3倍にまで増加しているのです。
肝硬変は、長期にわたる過度のアルコール摂取や肝炎ウイルス、自己免疫疾患などによって肝臓の細胞が破壊され、線維化(組織が硬くなること)が進行する病気です。
一度肝硬変になると、現在の標準治療では硬くなった肝臓を完全に元の状態に戻す有効な治療法はほとんどありません。末期では肝移植が唯一の根治治療とされますが、ドナー不足や手術のリスク、費用が高額といった多くの課題があります。
これらは肝臓からのSOSかもしれません

肝機能の低下が進行すると、体に様々なサインが現れます。決して「年のせい」「ただの疲れ」と自己判断せず、以下のような症状に心当たりがないかチェックしてみてください。
- 黄疸(おうだん): 白目や皮膚が黄色っぽくなる。
- 腹水・浮腫(ふしゅ): お腹が張る、足がむくむ。
- クモ状血管腫・手掌紅斑(しゅしょうこうはん): 胸や肩に赤い血管が浮き出る、手のひらが赤くなる。
- 出血傾向: 鼻血や歯茎から出血しやすい、青あざができやすい。
- 意識障害(肝性脳症): 判断力が鈍る、手の指が羽ばたくように震える(羽ばたき振戦)。
これらの症状は、肝機能が著しく低下しているサインです。一つでも当てはまる場合は、速やかに専門の医療機関を受診してください。
肝硬変を防ぐための「早期発見」と「生活習慣」
肝硬変に至る前に異常を早期発見し、対処することが極めて重要です。
1.定期検診の受診

自覚症状が出ないからこそ、定期的な検査が早期発見の鍵となります。定期的な検査の重要性について、2025年9月1日放送の日本テレビのnews every.なるほどッ!(午後5時30分~)に当院の院長が出演し、詳しく解説させて頂きました。
- 血液検査: AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPといった肝機能の数値を確認します。
- 画像診断: 腹部超音波(エコー)検査で、脂肪肝の有無や肝臓の硬さを安全に確認できます。
- 肝炎ウイルス検査: B型・C型肝炎ウイルスの感染の有無も必ず確認しましょう。
2.正しい生活習慣の実践

日々の生活を見直すことが、肝臓を守る一番の基本です。
- 食生活の改善: 栄養バランスの取れた食事を基本とし、糖質や脂質の過剰摂取、夜遅い食事は避けましょう。
- 飲酒量の調整: 適量を守り、週に2日以上の休肝日を設けることが重要です。健康な方の飲酒量の目安は、1日あたりビール中瓶1本、または日本酒1合程度です。肝臓に異常を指摘されている場合は、原則として禁酒が必要です。
- 適度な運動: ウォーキングなどの有酸素運動は、脂肪肝の改善に効果的です。まずは、1日30分程度の汗ばむ程度の早歩きを週に3日程度実践すると良いでしょう。
新たな希望「肝臓再生医療」という選択肢

標準治療だけでは根本的な改善が難しいのが肝硬変の現状です。しかし、「もう治らない」と諦める前に知っていただきたいのが、幹細胞を用いた「肝臓再生医療」です。
さいとう内科クリニックでは、患者様ご自身の脂肪から採取・培養した幹細胞を点滴で体内に戻す治療を提供しています。幹細胞が持つ「抗炎症作用」や「組織修復促進」などの働きにより、傷ついた肝臓の回復を助ける可能性が期待されています。
【期待される効果】
- 肝機能の改善(AST、ALT、アルブミン値などの改善)
- 肝臓の線維化(硬化)の進行抑制
- QOL(生活の質)の向上(倦怠感の軽減、食欲回復、腹水やむくみの緩和など)
この治療は、肝移植のようにドナーを必要とせず、ご自身の細胞を用いるため拒絶反応などのリスクが極めて低いという利点があります。ただ、幹細胞を点滴してすぐに改善を期待できるようなものではなく、半年から1年くらい経過してから改善がみられるケースがほとんどです。
(※この治療は公的医療保険の対象外となる自由診療です。また、肝臓がんがある場合など、体内にがんがある場合には対象とならないケースもございます。詳細はお問い合わせください。)
決して諦めないで、専門医にご相談ください

肝硬変の症状が深刻化する前の段階で再生医療を検討することが、進行を遅らせ、生活の質を維持・向上させる可能性を高めます。
「もう打つ手がない」と絶望する前に、肝臓再生医療という新しいアプローチについて、ぜひ一度当院にご相談ください。ご本人様だけでなく、ご家族からのご相談も歓迎しております。 この記事が、皆さまご自身の、そして大切な方の肝臓の健康について、改めて考えるきっかけとなれば幸いです。あなたのより良い未来を手繰り寄せるために、ぜひ一歩を踏出してみませんか。肝硬変だからといって決して諦めないでください。私たちが希望の光となるべくしっかりと寄り添いサポートします