- 2025年9月11日
健康診断で脂肪肝を指摘されたら?エコー検査で脂肪肝の重症度を知ることの大切さ

健康診断で「脂肪肝」と指摘され、不安を感じている方はいませんか?「特に症状もないし、お酒もそんなに飲まないから大丈夫だろう」と思われがちですが、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、異常があっても自覚症状が出にくいのが特徴です。症状が出た時には、すでに病気が進行しているケースも少なくありません。
この記事では、そもそも脂肪肝とは何か、なぜ健康診断で指摘されるのか、特に超音波(エコー)検査で脂肪肝がどのように見えるのか、その重症度の見分け方について、専門医の視点から詳しく解説します。
脂肪肝とは?現代人に忍び寄る肝臓の影

脂肪肝とは、肝臓の細胞に中性脂肪が過剰にたまってしまった状態を指します。健康な肝臓の脂肪の割合は通常5%程度ですが、脂肪肝ではそれ以上に脂肪が蓄積します。
主な原因は大きく二つあります。
- アルコール性脂肪肝(ASH):長期間にわたる過剰な飲酒が原因で、中性脂肪が蓄積します。
- 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD):飲酒以外の原因で起こる脂肪肝で、食べ過ぎ、運動不足、肥満などが主な原因です。
特に注意が必要なのが、NAFLDの一部が進行する「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」です。NASHは、単に脂肪がたまっているだけでなく、肝臓に炎症が起こり、徐々に線維化(肝臓が硬くなること)が進んでしまうタイプです。自覚症状がないまま進行し、肝硬変や肝臓がんへと繋がる可能性があるため、「沈黙の臓器」の中でも特に注意が必要です。
診断方法:血液検査の限界とエコー検査の重要性

脂肪肝は初期段階ではほとんど症状が出ないため、定期的な健康診断が早期発見の鍵となります。
- 血液検査:肝臓の細胞がダメージを受けると、ASTやALTといった酵素が血液中に漏れ出して数値が上昇します。しかし、注意点として、血液検査の数値が正常範囲内でも、脂肪肝や肝硬変が見つかることは珍しくありません。
- 腹部超音波(エコー)検査:肝臓の状態を正確に知るために非常に有用な検査です。エコー検査は、超音波を体の表面から当てるだけで、痛みも放射線被曝の心配もない非常に安全な検査です。
エコー検査で見る脂肪肝の重症度
肝臓に脂肪がたくさんたまると、超音波が通常よりも強く反射されるため、エコー画像上では健康な肝臓よりも「白っぽく」見えます。この「白さ」の程度や見え方の違いによって、脂肪肝の重症度が「軽度」「中等度」「高度」の3段階で評価されます。
エコー検査では、以下のポイントを総合的に判断します。
- 肝臓の白さ(肝腎コントラスト):隣接する腎臓と比べて肝臓が白っぽく見えます。
- 肝臓内の血管の見え方:脂肪の蓄積によって肝臓の中を走る血管の壁が見えにくくなります。
- 肝臓の奥の見え方(深部減衰):肝臓の中の脂肪が多いと超音波が肝臓の奥まで届きにくくなり、肝臓の深い部分が不明瞭になります。
これにより、以下のように分類されます。
- 軽度脂肪肝:肝臓全体が、腎臓と比べてやや白っぽく見えます。深部減衰はほとんどみられません。
- 中等度脂肪肝:肝臓の白さがさらに増し、血管の壁が見えにくくなります。深部減衰が肝臓の半分以下にとどまります。
- 高度脂肪肝:肝臓全体が非常に白く、血管の壁がほとんど見えなくなります。深部減衰が肝臓の半分以上になります。
脂肪肝の重症度を知ることが大切な理由

エコーで評価される重症度を知ることは、今後の健康管理において非常に重要です。当院では、院長がエコー検査時に絶えず脂肪肝の重症度を意識して観察しています。
- 進行リスクの指標:特に中等度〜高度の脂肪肝は、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)への進行や、肝硬変・肝臓がんへと進展するリスクが高い可能性を示唆します。
- 対策の必要性:重症度が高いほど、より厳格な生活習慣の改善や、精密検査が必要になります。特に「痩せ型脂肪肝」は、NASHに進行しやすいことが指摘されているため、「痩せているから大丈夫」という思い込みは非常に危険です。
脂肪肝を指摘されたら「今すぐ始めるべきこと」

中等度・高度の脂肪肝と診断された場合、一刻も早く、正しい行動を始めることが不可欠です。
- より厳格な生活習慣の見直し:
- 食事療法:摂取カロリーの適正化、糖質・脂質の過剰摂取の見直しを徹底します。
- 運動療法:ウォーキングなどの有酸素運動を中心に、継続可能な運動習慣を確立します。
- 飲酒習慣の見直し:アルコールの摂取量を大幅に減らす、できる限り休肝日を作る、ひいては禁酒を検討しましょう。
- 適切な体重管理:急激な減量は避け、ゆるやかなペースでの減量を目指しましょう。
- 専門医による定期的な経過観察と精密検査:
- 自己判断はせず、必ず肝臓病専門医を受診しましょう。
- エコーを用いて肝臓の硬さ(線維化の程度)を測る特殊な検査(Shear Wave エラストグラフィーなど)で、肝硬変への進行リスクを客観的に評価することが重要です。当院ではエコー検査を行う際に、必ず肝臓の硬さも合わせて評価し、肝硬変への進行リスクを正確に判断しています。
さいとう内科クリニックが提供する肝臓専門医療

当院の院長は、肝臓病専門医、消化器病専門医、超音波専門医として、長年の経験と専門知識を活かし、患者さんの肝臓の状態を精緻に診断しています。
もし、肝臓の線維化が進み始めていると診断されても、諦めるのはまだ早いです。当院では、進行した肝疾患に対する新しい治療選択肢として、再生医療(幹細胞治療)にも取り組んでおります。幹細胞は、肝臓の炎症や線維化そのものに働きかけ、損傷した肝細胞の修復や再生を促し、炎症を抑えることで、線維化の進行を抑制したり、場合によっては改善したりする可能性が期待されています。
当院では、半年から1年くらいかけて、ゆっくりではありますが、肝機能の数値が改善し、肝硬変から肝不全への明らかな進展抑制がみられています。今後さらに経過をみていくことにより、肝臓の線維化の改善が得られるだろうと推測しております。
健康診断で脂肪肝を指摘されたという診断は、決して絶望のサインではありません。それは、「今すぐ行動を変えれば、未来を変えられる」という、あなたの肝臓からのSOSであり、大切なメッセージです。
あなたの肝臓の状態、そして将来の不安について、まずはお気軽にご相談ください。さいとう内科クリニックでは、オンラインでの事前相談も受け付けております。あなたの肝臓を肝硬変にさせないために、そして肝硬変になった方が肝不全により命を落とさないようにするために、少しでも健やかな未来を迎えられるようにするために、私たち肝臓病専門医と一緒に「今すぐ始めるべきこと」を見つけましょう。