• 2026年11月4日

【肝臓病専門医が解説】「肝臓爆発寸前」からの回復。お笑いコンビ「麒麟」川島明さんのエピソードをもとに考える、お酒と肝臓の関係

こんにちは。

神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

先日、お笑いコンビ「麒麟」の川島明さんが、テレビやラジオ番組でかつての飲酒習慣について語られたことが報じられました。その内容は、肝臓病専門医の目から見ても非常に「典型的」かつ、示唆に富むものでした。

このお話には、肝臓病専門医として皆様にお伝えしたい2つの大切なメッセージが込められています。それは「お酒は知らないうちに肝臓を傷つける」ということ、そして「生活を変えれば肝臓は応えてくれる」ということです。

今回は、川島さんのエピソードをもとに、お酒と肝臓の関係について詳しく解説します。

■川島さんの飲酒生活と、肝臓の危機

川島さんは朝の生放送番組のMCに就任される前、ほぼ毎晩飲み歩き、コロナ禍で家飲みになっても「1人で2〜3L」を飲み、顔がパンパンになることもあったと振り返っています。

そんな中、テレビ番組の人間ドック企画で肝臓の点数が100点満点中8点となり「肝臓爆発寸前」と宣告されたそうです。ご本人はテレビ的な大げさな演出かと思ったそうですが、医師たちは全く笑っておらず「肝硬変の一歩手前。今ならまだ間に合う。このままならあと半年だ」と真剣に止められたといいます。 これを機に、朝の生放送の仕事も重なり、飲むのは週末のみに生活を改め「今は普通の人より健康」になられたそうです。

■肝臓病専門医から見た、川島さんの話の4つのポイント

川島さんのエピソードには、多くの方に知っていただきたい重要なポイントが詰まっています。(※当院が川島さんの肝臓の状態を直接診断したわけではありません)

①「1人で飲む(家飲み)」と量が増えやすい

終電や閉店時間という区切りがない家飲みは、気づかないうちに量が増えがちです。一度、自分がどれだけ飲んでいるか「純アルコール量」で記録してみることをおすすめします。

②「大げさだろう」と思ってしまう

肝臓は症状が出にくい「沈黙の臓器」です。悪い結果を言われても実感が湧かず、「大げさだろう」と受け止める方は実際の診察でもよくいらっしゃいます。

③「今なら間に合う」は本当

肝硬変に至る前の段階(脂肪肝や肝炎)であれば、お酒を減らす・やめることで肝臓の改善が十分に期待できます。気づいた時点で行動することが、肝臓を守る最大の近道です。

④「休肝日は大切」ただし「飲む日の量」にも注意

飲まない日をつくるのはとても良いことですが、飲む日にまとめて大量に飲んでしまっては肝臓への負担は残ります。1回の量と、1週間の「合計量」で考えることが大切です。

■お酒で肝臓に起きることと「純アルコール量」

たくさん飲む日が続くと、肝臓は「アルコール性脂肪肝」→「アルコール性肝炎」→「肝硬変」と進行し、肝がんのリスクも高まります。 肝臓への影響は、お酒の種類ではなく「純アルコール量」で考えます。新しい脂肪肝の診断基準では、純アルコール量で男性1日30g、女性20gが一つの区切りです。

  • ビール(5%)ロング缶500mL:約20g
  • チューハイ(7%)350mL缶:約20g

川島さんの「毎日2〜3L(仮にビール5%とする)」の場合、純アルコール量は1日約80〜120gとなり、目安の3〜4倍もの量を毎日飲んでいたことになります。

【肝臓専門医の深掘り:アルコールと肝臓の「代謝」低下】

アルコールの過剰摂取は、肝臓に脂肪を蓄積させるだけでなく、全身のエネルギー代謝を著しく低下させます。私はこれまでの臨床研究において、BCAA(分岐鎖アミノ酸)を補給して代謝をサポートすることで、全身のエネルギー代謝(npRQ)や肝機能が有意に維持・改善することを実証しています。

※参考論文:

お酒を減らすことに加え、代謝を落とさない食事と運動のバランスが肝機能改善の鍵となります

■新しい分類「MetALD」:お酒だけが原因とは限らない

2026年4月に改訂されたガイドラインでは、「MetALD(代謝・アルコール関連脂肪性肝疾患)」という考え方が加わりました。これは、お酒をある程度飲むうえに、「肥満・糖尿病・高血圧症・脂質異常症」などの生活習慣病が重なっているタイプです。お酒を減らすだけでなく、食事や運動を含めた生活全体を見直すことが重要になります。

■よくあるご質問(Q&A)

Q1. 健診で肝機能の異常を指摘されましたが、全く症状がありません。受診すべきですか?

A1. はい、必ず受診してください。肝臓は「沈黙の臓器」であり、痛みやだるさなどの症状が出たときには、すでに肝硬変などへ進行していることが少なくありません。症状がないうちに対策を打つことが極めて重要です。

Q2. お酒を飲まなければ脂肪肝にはなりませんか?

A2. お酒を全く飲まなくても、糖質や脂質の摂りすぎ、運動不足によって「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」になる方が近年急増しています。甘いジュースやおやつ、炭水化物の過剰摂取にも注意が必要です。

Q3. 休肝日を週に2日作れば、他の日はどれだけ飲んでも大丈夫ですか?

A3. いいえ、飲む日に大量に飲んでしまう(むちゃ飲み)と肝臓への負担はかかります。休肝日を作ることに加え、1日に飲む「純アルコール量」を男性なら30g以下、女性なら20g以下に抑えることが推奨されています。

Q4. 健診結果の「ALT」という項目は何を表していますか?

A4. ALTは肝臓の細胞が壊れたときに血液中に漏れ出す酵素で、肝臓のダメージ(炎症)を示す代表的な数値です。日本肝臓学会は、ALTが「30」を超えたら、かかりつけ医を受診することを推奨しています。

Q5. 肝硬変になってしまったら、もう治らないのでしょうか?

A5. 肝硬変の進行度によりますが、原因(お酒など)を断ち、適切な治療を行えば進行を食い止めることは可能です。また、標準治療では改善が難しい進行した肝硬変であっても、当院ではご自身の細胞を用いた「肝臓再生医療(幹細胞治療)」という新しい治療選択肢をご提案しており、豊富な診療実績もあります。

■まとめ:生活を変えれば、肝臓は応えてくれる

川島さんのエピソードで何より大切なのは、「生活を変えて健康を取り戻した」という事実です。肝臓は再生力の高い臓器であり、早い段階なら生活を見直すことで肝臓の数値の改善が十分に期待できます。

健診で「ALTが30を超えている方」や、お酒の量が気になっている方は、一人で抱え込まずに肝臓病専門医にご相談ください。さいとう内科クリニックでは、肝臓病専門医・超音波専門医である院長が自ら腹部超音波検査や超音波エラストグラフィ検査を行い、一人ひとりの肝臓の状態に合わせた丁寧な説明と治療を行っています。

また、すでに肝硬変(Child-Pugh分類グレードCを含む)まで進行し、腹水や黄疸、肝性脳症にお悩みの患者様に対しては、自己脂肪由来幹細胞治療(肝臓再生医療)という新たな治療選択肢をご提案しています。ご自身の細胞を用いて治療を行うため、拒絶反応が極めて少なく、安全性が高い治療です。

神戸市西区をはじめ、明石市、加古川市、三木市など近隣にお住まいの方の対面診療はもちろんのこと、日本全国、海外にお住まいのご遠方の患者様やご家族のため、自宅にいながらスマートフォンでご相談いただける「オンライン事前相談」を実施しております。

また、インターネットやスマートフォンの操作が難しい方は、診療時間内に当院までお電話にてお問い合わせいただいても構いません。院長の外来診療が落ち着きましたら、こちらからお電話をかけ直させていただきます。

院長は、標準治療と再生医療の両方ともに精通しており、豊富な診療実績もあります。院長が、事前相談から、検査、脂肪採取、培養、幹細胞点滴、点滴後のフォローまで一貫して対応していますのでご安心ください。

医療は日々進歩していますので、他院で治療ができないと言われた肝硬変患者様も、決して諦めないでください。ご自身や大切なご家族の肝臓を守るために、お酒による肝臓の不調を感じている方は、どうぞ一人で不安を抱え込むことなく、お気軽にお声がけください。当院がサポートしますので、一緒に病気に立ち向かっていきましょう。

この記事の監修・執筆者

さいとう内科クリニック
院長:斉藤 雅也 Masaya Saito

  • 日本内科学会認定医
  • 日本肝臓学会専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本超音波医学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
院長 斉藤雅也 Masaya Saito

神戸大学医学部附属病院等の最前線で長年消化器・肝臓内科の臨床と研究に従事。医学博士。 標準治療では回復が困難な進行した肝炎や肝硬変に対し、新たな選択肢としての「肝臓再生医療」にいち早く取り組む。また、肝硬変患者さまの中で合併症(潜在性肝性脳症)を有する割合を明らかにし、カルニチンによる潜在性肝性脳症の治療効果を世界で初めて報告するなど、国際的な英文医学誌への論文掲載実績も多数(代表論文:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224)。科学的根拠に基づいた高度な専門知識と精緻な診断で、患者様の肝臓を守るサポートを行っています。
≫ 詳しい経歴や全研究実績はこちら

さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり)
電話
  • 電話:078-967-0019
  • 携帯電話:080-7097-5109
アクセス
当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。