- 2026年6月5日
夜になると体が痒いのは肝臓からのSOS?内臓疾患によるかゆみの特徴・出やすい場所と乾燥肌との見分け方

こんにちは。
神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。
「夜になると急に体が痒くなる」「就寝前後だけ皮膚がムズムズする」「乾燥肌だと思って保湿しても一向に改善しない」——そんな悩みをお持ちではないでしょうか。夜間のかゆみは単なる乾燥肌と混同されやすいですが、実は肝臓や内臓疾患からのSOSサインである場合があります。本記事では、夜のかゆみと肝臓の関係、内臓疾患によるかゆみの特徴と乾燥肌との見分け方を肝臓病専門医の視点から詳しく解説します。
■ 1.なぜ夜になると体が痒くなるのか?肝臓との関係

夜間にかゆみが強くなる背景には、「体温上昇」と「自律神経の変化」という2つのメカニズムがあります。就寝前に体温がわずかに上昇すると皮膚血流が増加し、知覚神経が敏感になります。さらに副交感神経が優位になる夜間は、皮膚のかゆみ感覚が増幅されやすい状態となります。
肝臓が原因のかゆみでは、これに加えて「胆汁酸の皮膚への蓄積」という問題が重なります。健康な肝臓では胆汁酸を処理・排出できますが、肝臓や胆管に異常があると胆汁酸が血液中に溢れ出し、皮膚に蓄積します。この胆汁酸がオピオイド受容体を刺激することで、強いかゆみが引き起こされます。
実際、肝疾患患者さんの約20〜40%が慢性的なかゆみを経験しており、夜間に症状が悪化する傾向があります。また肝疾患では末梢神経のかゆみ受容体(Cファイバー)が過活性化されることも確認されており、一般的な痒み止め薬(抗ヒスタミン薬)では改善しにくいのが特徴です。
【肝臓病専門医の深掘り:難治性疾患による胆汁うっ滞とかゆみ】
私は、原発性胆汁性胆管炎(PBC)や自己免疫性肝炎(AIH)が合併した、非常に稀で複雑な症例の診断・治療について医学英語論文にて報告しています。これらの難治性疾患では、初期段階から胆汁の流れが滞る「胆汁うっ滞」が起こりやすく、それが夜間の頑固なかゆみとなって全身に現れます。「ただの疲れや睡眠不足による肌荒れ」と自己判断せず、専門的な背景を疑うことが早期発見への第一歩となります。(出典:Intern Med 2014; 53(2): 103-107)
■ 2.内臓疾患によるかゆみの特徴・出やすい場所
【肝臓・胆管疾患の場合】
かゆみが出やすい場所は手のひら・足の裏から始まり、徐々に全身へ広がります。皮膚が乾燥しているわけでもないのに強いかゆみがあり、掻いても蕁麻疹(ミミズ腫れ)が出にくいのが特徴です。夜間・就寝前後に特に症状が強くなり、日常生活や睡眠の質に大きな影響を与えます。
【腎臓疾患の場合】
背中・腰・太ももに症状が出やすく、透析患者に多くみられます。これは腎臓の機能低下により尿毒素が皮膚に蓄積するためです。
【甲状腺疾患の場合】
全身(特に背中・腕)にかゆみが現れ、発汗・動悸を伴うことが多いのが特徴です。甲状腺機能亢進症(バセドウ病)では皮膚の血流増加によりかゆみが誘発されます。
【糖尿病の場合】
外陰部・肛門周囲にかゆみが集中することが多く、カンジダ感染症を合併しやすいのが特徴です。血糖値の上昇が皮膚の免疫機能を低下死、感染を招きやすくします。
■ 3.乾燥肌(皮膚の乾燥)との見分け方

【乾燥肌の場合】
冬や空調使用時に悪化し、保湿クリームを塗ると症状が改善します。皮膚がカサカサして、粉がふいている状態が多く、視覚的にも乾燥が確認できます。
【内臓疾患のかゆみの場合】
季節や湿度に関係なく持続し、保湿クリームでは改善しません。皮膚の外見は正常なのに強いかゆみがあるのが最大の特徴です。さらに黄疸(皮膚や白目が黄色い)を伴うことがあり、この場合は緊急性が高いサインです。かゆみが夜間に悪化し、市販の痒み止めが全く効かない場合は、内臓疾患を疑う必要があります。
【肝臓病専門医の深掘り:見た目の体型に隠された内臓リスク】
かゆみに加えてだるさや不調がある場合、見た目の体型に関わらず肝臓に深刻なダメージが及んでいる可能性があります。私の臨床研究では、見た目は太っていなくても内臓脂肪が蓄積している「隠れ肥満」の方は、長期的な生存率や予後に悪影響を及ぼすことを明らかにしています。『自分は痩せ型だから脂肪肝や肝臓病とは無縁だ』と思い込まず、皮膚からのSOSサインを真摯に受け止めることが大切です。(出典:J Cancer Ther 2015; 6: 1124-1136)
■ 4.かゆみが出やすい肝臓の病気
肝臓や胆管系の疾患には、かゆみを引き起こすものが多くあります。原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、胆汁が滞留してかゆみを引き起こす自己免疫疾患です。胆管閉塞・胆石では胆汁の流れが物理的に止まるため、急激なかゆみが生じます。肝硬変では胆汁処理機能が大幅に低下し、慢性的なかゆみが続きます。B型・C型・自己免疫性肝炎では慢性炎症による皮膚症状が現れ、肝がんでは進行するにつれてかゆみが増悪することがあります。
【肝臓病専門医の視点:かゆみの治療について】
肝臓由来のかゆみに対して、市販の抗ヒスタミン薬(一般的な痒み止め)はほとんど効果がありません。専門的な治療薬としては、胆石胆管炎や胆管がんといった胆管閉塞がないことを確認したのち、胆汁酸の排出を助けるウルソデオキシコール酸(UDCA)や、かゆみの神経受容体に直接作用するナルフラフィン塩酸塩(レミッチ)が用いられています。当院でも肝臓由来のかゆみに対して、UDCAやレミッチをよく処方しており、かゆみの改善がみられるケースが多いことから、肝疾患患者さんに喜んでいただいています。しかし最も重要なのは、かゆみの根本原因である肝疾患そのものを治療することです。ウイルス性肝炎の抗ウイルス療法、脂肪肝の食事運動療法、さらには当院が得意とする肝臓再生医療によるアプローチが、根本的なかゆみ解消につながります。
【肝臓病専門医の深掘り:微小な病変を見逃さない精密な画像診断】
かゆみをきっかけに重篤な肝疾患や肝がんの可能性が疑われる場合、早期に小さな病変を捉えるための画像診断が極めて重要になります。私はソナゾイド造影エコーやEOB-MRIを用いた高度な画像診断技術について研究を重ね、一般的な検査だけでは見分けがつきにくい難しい病変を正確に鑑別する技術を磨いてきました。精密な画像診断を組み合わせることで、かゆみの根本原因にある病態を早期に突き止め、適切な治療へ繋げることが可能となります。(出典:Intern Med 2012; 51(7): 723-6)
■ 5.今すぐできる対処法と受診のタイミング
以下のような状況では、早めに肝臓内科・消化器内科を受診することをお勧めします。
・市販の保湿剤・かゆみ止めで2週間以上改善しない場合
・黄疸(白目や皮膚が黄色い)を伴う場合
・尿の色が濃い(ビール色・オレンジ色)場合
・倦怠感・食欲不振・体重減少を伴う場合
これらの症状が重なっているときは特に緊急性が高く、放置すると肝疾患が進行するリスクがあります。
■ 6.肝臓病専門医からのメッセージ

「夜だけ体が痒い」という症状を、多くの方が乾燥肌や年齢のせいと片付けてしまいます。しかし私がこれまで診てきた患者さんの中には、夜間のかゆみが唯一の症状だったにもかかわらず、検査をすると肝臓に重篤な病変が見つかったケースが複数あります。
かゆみは肝臓からの大切なメッセージです。市販薬で改善しない夜のかゆみは、ぜひ一度肝臓病専門医にご相談ください。当院では血液検査・腹部超音波検査・肝硬度測定を組み合わせた精密診断を行い、一人ひとりに合った治療計画をご提案します。
■ 夜のかゆみ・肝臓の状態が心配な方へ
神戸市西区のさいとう内科クリニックでは、夜間のかゆみや肝疾患に関するご相談を承っています。「かゆみが続いているけど皮膚科では異常なしと言われた」という方も、どうぞお気軽にご受診ください。
肝臓病専門医が丁寧に診察し、最適な治療をご提案いたします。オンライン事前相談も受け付けておりますので、遠方の方もお気軽にお悩みをお聞かせください。
- 院長
- 斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology - 所在地
- 〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり) - 電話
-
- 電話:078-967-0019
- 携帯電話:080-7097-5109
- アクセス
- 当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。
