• 2026年5月11日

B型・C型肝炎と再生医療——ウイルス排除後の「肝臓リノベーション」という新戦略

こんにちは。

神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

C型肝炎は、今や飲み薬(DAA)だけで99%以上が根治できる時代になりました。B型肝炎も、核酸アナログ薬によってウイルスの増殖を強力に抑え込めるようになっています。しかし、ここで見落とされがちなのが、「ウイルスがいなくなった後の焼け跡(肝線維化)」です。

ウイルスという火種が消えても、長年の延焼によって硬くなった肝臓の「組織」は、すぐには元に戻りません。本記事では、ウイルス根治後の肝臓回復を加速させる再生医療の役割を深掘りします。

「ウイルス根治=健康」ではない現実

C型肝炎でSVR(ウイルス消失)を達成しても、肝機能が完全に元通りにならないケースがあります。これを「焼け跡が残った状態」と呼んでいます。

  • 肝線維化の残存: ウイルスがいなくなっても、硬くなった線維(コラーゲン)は数年から数十年かけてゆっくりとしか消えません。この「硬さ」が、将来的な肝がんの発症リスクとして残り続けます。
  • 低アルブミン・倦怠感: 肝臓の「製造工場」としての機能が低下したままだと、アルブミンが十分に作れず、むくみや強いだるさが続くことがあります。

【肝臓病専門医からの警鐘:ウイルスが消えた後もリスクは続く】

私は、C型肝炎ウイルスが完全に消えてから「18年後」に肝臓がんを発症した稀なケースを報告しています。ウイルスが消えても、線維化が進んでいる場合や生活習慣病(糖尿病・高血圧等)のコントロールが悪い場合は、発がんリスクを無視できません。生涯にわたる定期的なフォローがいかに重要か、改めてお伝えしたいと思います。(出典:Clin J Gastroenterol 2012; 5(2): 119-126

ウイルス性肝炎後に再生医療が果たす「3つの役割」

当院が提供する幹細胞治療は、ウイルス排除後の肝臓に対して、いわば「大規模修繕(リノベーション)」を行います。

1.線維化の消退を加速させる(デブリードマン効果)

幹細胞が分泌する特有の酵素が、居座り続けている古いコラーゲン線維を分解。肝臓を本来の「柔らかい臓器」へと戻しやすくします。

2.眠っている肝細胞を呼び覚ます(再活性化)

長年のウイルス攻撃で疲れ果てた肝細胞に対し、幹細胞が成長因子(HGFなど)を分泌することにより、肝臓の代謝スイッチを入れ直し、タンパク合成能力を復活させます。

3.慢性的な微小炎症を「ゼロ」にする

ウイルスがいなくなっても、肝臓内では小さな炎症がくすぶり続けていることがあります。間葉系幹細胞(MSC)は、この「くすぶり」を鎮め、肝臓が修復に100%集中できる環境を整えます。

肝臓病専門医の視点:B型肝炎キャリアと再生医療

B型肝炎の場合、ウイルスを完全にゼロにすることは困難ですが、核酸アナログ薬(ベムリディ等)でウイルスの動きを「封じ込める」ことは可能です。

  • 「ウイルス封じ込め」との併用:核酸アナログ薬によりウイルス量をコントロールしながら、再生医療も併用して行うことにより、肝機能の改善が加速し、肝線維化の改善も得られやすくなります。
  • 個別化された治療予測: 私は臨床研究により、核酸アナログ薬による治療前のアルブミン値やプロトロンビン時間(PT%)が、治療後の肝機能改善を予測する重要なサインになることを明らかにしています。治療前のアルブミン値やPT%が低値であれば、核酸アナログ薬による治療を行っても肝機能改善がみられにくいのです。そういった患者さんは、再生医療も併用して行うことにより、肝機能改善が得られやすくなると考えています。

私たちは、専門的な見地から、お一人おひとりに最適な再生医療のタイミングを慎重に見極めています。

(出典:Eur J Gastroenterol Hepatol 2013; 25(12): 1369-76

治療後のモニタリング:がんに負けないための「二段構え」

再生医療を受けて肝機能が改善しても、定期的なモニタリングは必須です。

  • 血液検査(AFP、PIVKA-II): 肝がんの予兆を見逃さない腫瘍マーカーチェックを行います。
  • 精密画像検査: 肝機能が改善しても、硬くなった肝臓の組織からがんが発生するリスクは残るため、エコーやCT/MRIによる定期的な観察を続けます。

よくあるご質問

Q:C型肝炎のウイルスが消えたのに、まだ体がだるいのはなぜですか?

A ウイルスがいなくなっても、肝臓の細胞が「線維」に置き換わったままだと、栄養代謝や解毒の効率が悪いままです。再生医療によって肝臓の組織を柔らかく戻し、血流を改善させることで、この「長引くだるさ」が解消されるケースが多く見られます。

Q:B型肝炎で薬を飲んでいますが、再生医療を受けても大丈夫ですか?

A もちろんです。現在服用している核酸アナログ薬などを継続しながら、再生医療を併用することが可能です。むしろ、お薬でウイルスの増殖を抑えているからこそ、再生医療による組織修復がより効果的に働きます。

Q:ウイルスが消えた(または抑えられている)のに、なぜ「がん」のリスクが残るのですか?

A 非常に重要なご質問です。ウイルスがいなくなっても、長年の炎症で硬くなった「線維化(焼け跡)」自体が、がんを発生させやすい「土壌」として残ってしまうからです。私は過去の研究で、C型肝炎のウイルス消失から18年経ってからの肝がん発症例を報告していますが、このケースでも背景には肝臓の線維化が強く残っていました。再生医療は、この「がんを呼び寄せやすい土壌(線維化)」自体を柔らかく修復することを目指すため、単なる数値改善以上の価値があると考えています。

肝臓病専門医からのアドバイス

ウイルスを消すことは、肝臓病治療の「第一章」の終わりです。「第二章」は、傷ついた肝臓をいかに元気に戻し、健康寿命を延ばすか。

「ウイルスがいなくなったからもう安心」と検診をやめてしまうのが最も危険です。残されたリスクを幹細胞の力で最小限にし、再び自信を持って毎日を過ごせるよう、私たちがサポートいたします。

■ウイルス性肝炎後の肝臓回復もご相談ください

C型肝炎でウイルス消失(SVR達成)後も肝臓の数値が改善しきらない方、B型肝炎で将来の肝硬変や肝がんが不安な方。まずは、あなたの肝臓の「現在の焼け跡の状態」を詳しく評価させてください。

この記事の監修・執筆者

さいとう内科クリニック
院長:斉藤 雅也 Masaya Saito

  • 日本内科学会認定医
  • 日本肝臓学会専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本超音波医学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
院長 斉藤雅也 Masaya Saito

神戸大学医学部附属病院等の最前線で長年消化器・肝臓内科の臨床と研究に従事。医学博士。 標準治療では回復が困難な進行した肝炎や肝硬変に対し、新たな選択肢としての「肝臓再生医療」にいち早く取り組む。また、肝硬変患者さまの中で合併症(潜在性肝性脳症)を有する割合を明らかにし、カルニチンによる潜在性肝性脳症の治療効果を世界で初めて報告するなど、国際的な英文医学誌への論文掲載実績も多数(代表論文:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224)。科学的根拠に基づいた高度な専門知識と精緻な診断で、患者様の肝臓を守るサポートを行っています。
≫ 詳しい経歴や全研究実績はこちら

さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり)
電話
  • 電話:078-967-0019
  • 携帯電話:080-7097-5109
アクセス
当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。