- 2026年7月12日
【肝臓病専門医が解説】B型肝炎の新薬承認申請—「ウイルスと共存」から「治癒」を目指す時代へ

こんにちは。
神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。
2026年2月、製薬会社グラクソ・スミスクライン(GSK)が、B型肝炎ウイルスの持続感染(慢性B型肝炎)に対する新しい治療薬「ベピロビルセン」について、日本での承認申請を行ったと発表しました。
臨床試験では「ファンクショナルキュア(機能的治癒)」と呼ばれる状態を達成した患者様が一定の割合で報告されており、B型肝炎治療における大きな前進として医療現場でも非常に注目されています。
当院は肝臓病専門医として、脂肪肝や肝硬変だけでなく、B型肝炎をはじめとするウイルス性肝疾患の診療にも力を入れています。今回は、B型肝炎という病気の本質と、新薬がもたらす可能性についてわかりやすく解説します。
■1. B型肝炎とはどんな病気か
B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)の感染によって起こる肝臓の炎症性疾患です。主な感染経路には、出産時の母子感染や、血液・体液を介した感染などがあります。日本では過去の母子感染対策(ワクチン接種など)により新たな感染は減少していますが、すでに感染している方は今も少なくありません。
感染した時期や年齢によっては、ウイルスを体外に排出できず「持続感染(キャリア)」となる方がいます。多くの方は症状がないまま長期間経過しますが、一部の方では肝臓の炎症が慢性的に続き、徐々に肝硬変や肝臓がんへと進行してしまうリスクがあります。
B型肝炎はまさに「沈黙の感染症」であり、自覚症状がないまま病状が進行することが診療上の大きな課題となっています。
■2. これまでの治療と「機能的治癒」という目標
これまでのB型肝炎の治療は、「核酸アナログ製剤」と呼ばれる飲み薬を用いて、ウイルスの増殖を強力に抑え込むことが中心でした。この治療により肝臓の炎症を抑え、肝硬変や肝臓がんへの進行リスクを大幅に減らすことができるようになっています。
しかし、この薬はウイルスの増殖を抑えることはできても、体内からウイルスを完全に排除することは難しく、多くの患者様が長期間、場合によっては一生にわたって服薬を続ける必要がありました。
そこで近年、新たな治療のゴールとして目標とされているのが「ファンクショナルキュア(機能的治癒)」という状態です。これは、ウイルスを完全に体内から排除するわけではないものの、血液中のウイルス関連の指標(HBs抗原など)が検出されなくなり、薬をやめても病状が安定する状態を指します。
■3. 新薬「ベピロビルセン」とは

今回承認申請された「ベピロビルセン」は、B型肝炎ウイルスの遺伝情報(RNA)に直接結合し、ウイルスのタンパク質が作られるのを防ぐ新しいタイプの薬剤です。従来の核酸アナログ製剤とは全く異なる仕組みで作用します。
国際的な臨床試験では、既存の核酸アナログ製剤による治療を受けている患者様に対してベピロビルセンを併用したところ、統計学的に有意な割合で「機能的治癒」を達成したことが報告されています。
GSKはこの結果をもとに、日本国内での承認申請を行いました。もし承認されれば、これまで「薬を飲み続け、一生付き合うしかない」と考えられてきたB型肝炎の治療に、薬をやめて治癒を目指すという新しい選択肢が加わることになります。
■4. 院長の研究から—肝炎ウイルスと腫瘍マーカー
私はこれまで、アルコール性やウイルス性を問わず、肝疾患における腫瘍マーカーや肝線維化の評価モデルについて長年研究を続けてまいりました。B型・C型肝炎などのウイルス性肝疾患においても、ウイルスの状態をコントロールするだけでなく、肝臓の線維化(硬さ)の進行度や肝臓がんのリスクを定期的に評価することが非常に重要です。
新しい治療薬によってウイルスの管理が劇的に進む一方で、長期間にわたり炎症を抱えてきた肝臓では、肝臓がんのリスクが完全にゼロになるわけではありません。治療と並行したエコー検査などの定期検査の重要性は、これからも決して変わらないと考えています。
※肝疾患における腫瘍マーカーに関する院長の研究については、こちらの論文をご参照ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26600398
■5. 当院でのB型肝炎の診療

当院では、血液検査によってB型肝炎ウイルスの感染状態(HBs抗原、HBV-DNAなど)を正確に確認し、必要に応じて専門的な治療へとつなげています。すでに核酸アナログ製剤による治療を受けている方には、定期的な血液検査や腹部エコー検査によるフォローアップを丁寧に行っています。
新薬の登場は大変喜ばしいニュースですが、ご自身がどのような治療を受けるべきかは、現在の病状やウイルスの状態によって一人ひとり異なります。新しい治療薬の情報を含め、現在の治療方針について不安や疑問がある方は、ぜひ当院までご相談ください。
「昔、B型肝炎キャリアと言われたまま、長年通院していない」という方も、まずは現在の肝臓の状態を確認することから始めてみませんか。
また、もし長年の炎症によってすでに肝臓が硬くなる「肝硬変」へと進行してしまっている場合でも、決して諦めないでください。当院では、従来の標準治療に加え、患者様ご自身の細胞を用いた「肝臓再生医療(幹細胞治療)」という新たな治療選択肢も提供しております。当院で行っている肝臓再生医療は、安全性を第一に考え、従来の標準治療だけでは治療効果が乏しいケースでも、治療効果が得られるケースが増えてきております。幹細胞点滴後半年から1年くらいで、肝臓の数値が改善したり、黄疸や腹水、倦怠感が改善したりと興味深いデータが得られてきております。
■よくあるご質問(Q&A)

Q1. B型肝炎の検査はどこで受けられますか?
A1. 当院などの内科・消化器内科にて血液検査(HBs抗原検査など)で確認できます。多くの自治体では特定の年齢の方に向けて肝炎ウイルス検査を無料または低価格で実施していますので、健康診断と併せて受けることをお勧めします。
Q2. 新薬が承認されたら、今治療で飲んでいる薬を変える必要がありますか?
A2. 必ずしもすぐに薬を切り替える必要はありません。現在の治療効果やウイルスの状態をしっかりと確認したうえで、主治医と相談しながら今後の方針を慎重に検討することが大切です。
Q3. 家族にB型肝炎の人がいる場合、感染のリスクはありますか?
A3. 母子感染やワクチン接種歴によって状況は異なります。血液や体液を介して感染するため注意は必要ですが、心配な場合はご家族そろって検査を受けることで正しい対処ができ、安心につながります。
Q4. 日常生活のなかでB型肝炎がうつることはありますか?
A4. 握手、ハグ、軽いキス、食器の共有、一緒にお風呂に入るといった通常の日常生活で感染することは基本的にはありません。ただし、血液を介する可能性があるカミソリや歯ブラシの共有は避けるようにしてください。
Q5. B型肝炎は予防できる病気ですか?
A5. はい、B型肝炎ワクチンを接種することで予防が可能です。現在日本では、すべての乳児を対象としたワクチンの定期接種が行われていますが、過去に接種歴がない成人の方でも、希望すれば任意でワクチンを受けることができます。
■B型肝炎治療の新たな展開

B型肝炎の新薬「ベピロビルセン」の承認申請は、「ウイルスと一生付き合う」というこれまでの考え方から、「機能的治癒を目指す」という新しい時代への転換点となる可能性を秘めています。
一方で、新薬が承認されたとしても、すべての患者様にすぐに適用されるわけではなく、まずは現在の病状を正確に把握することが治療の出発点となります。B型肝炎は自覚症状が出にくい病気だからこそ、定期的な検査が何よりも大切です。
神戸市西区のさいとう内科クリニックでは、肝臓病専門医がB型肝炎をはじめとするウイルス性肝疾患の診療にもしっかり対応しています。健診でB型肝炎の指摘を受けたことがある方、治療を中断してしまっている方は、どうぞお気軽にご相談ください。
遠方にお住まいの方や、すぐに来院が難しい方のために、Curon(クロン)を利用したオンラインでの事前相談も受け付けております。どうぞ、お一人で悩まず、お気軽にお問い合わせください。
- 院長
- 斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology - 所在地
- 〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり) - 電話
-
- 電話:078-967-0019
- 携帯電話:080-7097-5109
- アクセス
- 当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。