• 2026年7月12日

【肝臓病専門医が解説】脂肪肝の新しい治療薬—GLP-1・SGLT2阻害薬がもたらす希望

こんにちは。
神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

「脂肪肝の治療といえば食事と運動」——その常識に、いま新しい選択肢が加わろうとしています。2026年、肥満や糖尿病の治療薬として知られるGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬が、脂肪肝炎(MASH)や肝線維化を改善するというエビデンスが次々と報告され、Yahoo!ニュースなどでも注目を集めています。

アメリカではGLP-1製剤のセマグルチド(ウゴービ)がMASHの治療薬として承認され、肝臓病の治療は大きな転換点を迎えています。本記事では、肝臓病専門医の立場から、これらの薬がなぜ脂肪肝に効くのか、そして治療を考えるうえで知っておきたいことを解説します。

■1. 脂肪肝炎(MASH)はなぜ治療が必要なのか

単に肝臓に脂肪がたまった「脂肪肝」のうち、肝臓に炎症と線維化が加わった状態を「脂肪肝炎(MASH:代謝機能障害関連脂肪肝炎)」と呼びます。MASHを放置すると、肝臓が硬くなる「線維化」がさらに進み、やがて肝硬変や肝臓がんへと進展する危険があります。

これまでMASHには、確立した薬物治療がほとんどありませんでした。治療の基本は減量を中心とした生活習慣の改善であり、それは今も変わりません。しかし、生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られない方も多く、新しい治療薬への期待が長く待たれてきました。 そうした中で登場したのが、もともと糖尿病や肥満の治療に使われてきたGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬です。

■2. GLP-1受容体作動薬——MASH治療薬としての承認

GLP-1受容体作動薬は、食欲を抑え、血糖を改善し、体重を減らす作用を持つ薬です。2026年には、アメリカFDAがセマグルチド(ウゴービ)を、中等度〜進行した肝線維化(F2〜F3)を伴う成人のMASH治療薬として承認しました。これはGLP-1製剤として初めてのMASH治療薬であり、大きな話題となりました。

さらに、GIP/GLP-1/グルカゴンの3つに作用する「トリプルアゴニスト」と呼ばれる新世代の薬剤(レタトルチドなど)では、第2相試験で肝臓の脂肪が最大で約86%も減少したと報告されています。第3相試験の結果が2026〜2027年に出る見込みで、世界的に大きな期待が寄せられています。

ただし、GLP-1製剤は脂肪肝炎そのものを改善する一方で、進行した肝線維化の改善効果は限定的との報告もあり、どの段階まで線維化が進んだ患者様に有効かは、今後さらに明らかになっていく段階です。

■3. SGLT2阻害薬——肝線維化改善への可能性

もう一つ注目されているのが、糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬です。この薬は、尿から糖を排出させることで血糖を下げ、体重や内臓脂肪を減らす作用があります。

近年の研究では、SGLT2阻害薬が脂肪肝だけでなく、脂肪肝炎(MASH)や肝線維化の改善にも効果を示すことが報告されています。糖尿病を合併するMASH患者様に48週間投与したところ、肝臓の脂肪と線維化の両方が改善したという結果が示されました。

GLP-1製剤が線維化の改善に課題を残すのに対し、SGLT2阻害薬は線維化への効果が期待される点で、両者を病態に応じて使い分ける、あるいは組み合わせるという考え方も議論されています。

■4. 院長の研究から——栄養と脂質のコントロール

新しい薬が注目される一方で、肝臓病の治療において「栄養管理」と「脂質のコントロール」が果たす役割は依然として非常に重要です。私はこれまで、肝臓病の患者様における栄養療法(BCAA:分岐鎖アミノ酸など)や、脂質代謝と肝疾患の関わりについて研究を続けてまいりました。

薬物治療はあくまで生活習慣の改善を土台としてこそ、その効果を最大限に発揮します。食事・運動・栄養という基本を大切にしながら、必要に応じて新しい治療薬を組み合わせていく——それが、これからの脂肪肝治療の姿だと真に考えています。

※肝疾患の栄養療法に関する院長の研究については、こちらの論文をご参照ください。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25030556/

■5. 当院の治療方針——薬と生活の両輪で

当院では、脂肪肝・脂肪肝炎の患者様に対し、まず血液検査・腹部超音波検査・肝硬度測定を行い、病気がどの段階にあるかを正確に把握します。そのうえで、生活習慣の改善を治療の柱に据えつつ、糖尿病や肥満を合併する方には、内科医として適切な薬物治療を検討します。

新しい治療薬は確かに有望ですが、すべての方に有効というわけではありません。脂肪肝の段階や合併症、体質によって、最適な治療は一人ひとり異なります。「薬さえ飲めば良い」のではなく、生活習慣の改善という土台があってこそ、薬の効果が活きてきます。 大切なのは、ご自身の肝臓の状態を正しく知り、納得して治療に取り組むことです。当院では、肝臓病専門医がわかりやすくご説明し、無理なく続けられる方針を一緒に考えます。

また、生活改善や薬物療法を行っても改善が難しい、あるいはすでに肝臓が硬くなる「線維化(肝硬変)」へと進行してしまっている患者様には、上記した治療を行ったとしてもいまだ十分な肝線維化の改善効果が期待できません。当院では、上記した標準治療を積極的に取り入れながら、ご自身の細胞を用いた「肝臓再生医療(幹細胞治療)」という新たな治療も合わせて行っています。当院は、標準治療と肝臓再生医療の両方ともに精通しており、広く相談に応じられる稀有な存在だと自負しております。

■6.脂肪肝炎に「希望」が生まれた時代

長く「効く薬がない」とされてきた脂肪肝炎(MASH)に、GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬という新しい治療選択肢が加わりつつあります。2026年は、脂肪肝治療にとって大きな転換点となる年だといえるでしょう。

ただし、これらの薬はあくまで治療の選択肢の一つであり、万能薬ではありません。脂肪肝の改善において最も確実で大切なのは、今も昔も食事・運動・栄養管理です。新しい薬は、その努力を後押しする心強い味方として位置づけることが大切です。

神戸市西区のさいとう内科クリニックでは、肝臓病専門医が最新の知見を踏まえ、お一人おひとりに合った脂肪肝治療をご提案しています。健診で脂肪肝を指摘された方、治療を迷っている方は、どうぞお気軽にご相談ください。遠方にお住まいの方や、すぐに来院が難しい方のために、Curon(クロン)を利用したオンラインでの事前相談も受け付けております。脂肪肝炎から肝硬変、そして肝不全となり、途方に暮れている方もどうか諦めないでください。肝臓再生医療という最新治療も適応になるのかどうか、一人ひとり丁寧に見極めるため、お電話で直接お話させていただくこともできます。診療時間内にお電話いただけましたら、外来診察の後、折り返しお電話をさせていただきます。どうぞ、お一人で悩むことなく、お気軽に当院までお問い合わせください。

この記事の監修・執筆者

さいとう内科クリニック
院長:斉藤 雅也 Masaya Saito

  • 日本内科学会認定医
  • 日本肝臓学会専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本超音波医学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
院長 斉藤雅也 Masaya Saito

神戸大学医学部附属病院等の最前線で長年消化器・肝臓内科の臨床と研究に従事。医学博士。 標準治療では回復が困難な進行した肝炎や肝硬変に対し、新たな選択肢としての「肝臓再生医療」にいち早く取り組む。また、肝硬変患者さまの中で合併症(潜在性肝性脳症)を有する割合を明らかにし、カルニチンによる潜在性肝性脳症の治療効果を世界で初めて報告するなど、国際的な英文医学誌への論文掲載実績も多数(代表論文:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224)。科学的根拠に基づいた高度な専門知識と精緻な診断で、患者様の肝臓を守るサポートを行っています。
≫ 詳しい経歴や全研究実績はこちら

さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり)
電話
  • 電話:078-967-0019
  • 携帯電話:080-7097-5109
アクセス
当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。