• 2026年9月9日

千原せいじさんの肝膿瘍破裂から学ぶ:肝膿瘍の原因・症状・治療と肝臓を守るために知っておくべきこと

こんにちは。

神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

2026年8月27日、お笑いタレントの千原せいじさん(56歳)が突然「肝膿瘍破裂、手術無事成功」とSNSに投稿。一夜明けた翌28日には病室からの最新ショットとともに「無理は絶対しないで下さい。自分の命は自分で守りましょう」と呼びかけ、大きな反響を呼んでいます。

「肝膿瘍(かんのうよう)」という病名を、今回のニュースで初めて耳にした方も多いのではないでしょうか。私も患者様から「先生、千原せいじさんがかかった病気って何ですか?」と聞かれました。

肝膿瘍は決して稀な病気ではなく、早期に発見できれば回復も見込めます。しかし放置すると敗血症や多臓器不全を招く、命に関わる疾患です。今回は肝臓病専門医の立場から、肝膿瘍の正しい知識をわかりやすく解説します。

■肝膿瘍とはどんな病気?

肝膿瘍とは、細菌・真菌・原虫などの病原体が肝臓の組織内に侵入して増殖し、肝臓の中に「膿の袋(膿瘍)」が形成される疾患です。今回千原せいじさんが経験された「破裂」は、この膿の袋が体内で破れてしまった状態であり、緊急手術が必要となるほど深刻な状態です。
肝膿瘍は「肝臓の中に膿がたまる病気」。自覚症状が軽くても、放置すると敗血症へ進行する可能性があります。

主な症状 ─発熱と右わき腹の痛みがサイン

肝膿瘍では以下のような症状がみられます。風邪や一般的な感染症と似た症状が多いため、「肝臓の病気」と気づきにくいのが特徴です。

全身症状

  • 38.5℃を超える高熱(持続性)
  • 悪寒・ふるえ
  • 強い倦怠感・脱力感
  • 食欲不振

局所症状

  • 右季肋部痛(右わき腹〜肋骨下の痛み)
  • 右腹部の腫脹感・張り
  • 吐き気・嘔吐
  • 下痢などの消化器症状

注意:急性期でなければ無症状のまま経過することもあります。症状が軽いからといって安心せず、発熱や右わき腹の違和感が続く場合はすみやかに受診してください。

■原因は大きく2種類に分けられる

細菌性肝膿瘍(最も多いタイプ)

肝膿瘍の原因として最も多いのが、細菌による感染です。胆石症・急性胆嚢炎・胆管炎などを基礎疾患として持つ方が、胆道(胆汁の通り道)を経由して細菌が肝臓に侵入するパターンが代表的です。原因菌は大腸菌をはじめとするグラム陰性桿菌が多いとされています。
リスク因子として特に注意が必要なのが糖尿病です。血糖コントロールが不良だと免疫力が低下し、感染が重症化しやすくなります。

アメーバ性肝膿瘍

赤痢アメーバが門脈(消化管の血液が肝臓へ流れる血管)を経由して肝臓に感染するタイプです。海外渡航歴がなくても、性的接触を介した感染が近年増加しており、輸入感染症・性感染症の一つとしても注目されています。早期診断・治療が特に重要で、放置すると予後不良となります。

■どうやって診断するのか

肝膿瘍の診断には、血液検査と画像検査を組み合わせます。

血液検査では白血球(WBC)の上昇・CRP上昇・肝胆道系酵素の異常がみられますが、これらは感染症全般に共通する所見のため、確定診断には画像が必須です。

腹部超音波検査(エコー)が第一選択とされており、被曝なく、ベッドサイドでも迅速に行えます。より精密な評価には造影CTを用い、膿瘍の位置・大きさ・数を確認します。当院でも、腹部超音波検査にて早期に肝膿瘍と診断し即入院していただき、その後退院されて、元気に外来通院されている患者様が複数おられます。

■治療方法 ─ 抗菌薬とドレナージの両輪

種類主な治療使用薬剤備考
細菌性抗菌薬+ドレナージ
(膿を体外へ排出)
スルバクタム・アンピシリン、タゾバクタム・ピペラシリンなど5cm超の膿瘍は
ドレナージ必須
アメーバ性抗菌薬中心
(経口内服)
メトロニダゾール+パロモマイシンサイズ次第で
ドレナージ追加

ドレナージとは、皮膚から細い管(ドレーン)を肝膿瘍内に挿入し、膿を体外へ排出する処置です。千原せいじさんの場合は「破裂」に至ったため、より緊急度の高い外科的ドレナージが行われたと考えられます。抗菌薬の投与期間は通常4〜6週間を目安に設定されます。

■どうすれば予防できるか

肝膿瘍を完全に防ぐことは難しいですが、リスクを下げる手立てはあります。予防のポイントは以下の通りです。

・胆石症・胆嚢炎・胆管炎は早期に治療し重症化を防ぐ
・糖尿病のある方は血糖コントロールを徹底する
・海外渡航時は生水・生食を避ける
・不衛生な性行為を避ける(アメーバ性感染の予防)
・発熱・右腹部痛が続く場合は早めに受診する

■肝臓という臓器の「回復力」について

肝膿瘍を経験した後、患者様からよく聞かれるのが「肝臓はどのくらい回復するの?」という質問です。肝臓はもともと高い再生能力を持つ臓器ですが、炎症や感染を繰り返すことで組織が傷つき、慢性的なダメージが蓄積されます。

肝炎・肝硬変・肝機能低下などが続いている患者様では、特に感染後の回復が遅れることもあります。「肝膿瘍は治ったけれど、その後の肝臓が心配」という方も、ぜひ当院までご相談ください。当院では通常の肝臓専門外来に加え、傷ついた肝臓の機能回復を助ける幹細胞を用いた再生医療を実施しています。 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれます。症状が出てから受診するのではなく、定期的なチェックと早期対処が、長期的な肝臓の健康につながります。

この記事の監修・執筆者

さいとう内科クリニック
院長:斉藤 雅也 Masaya Saito

  • 日本内科学会認定医
  • 日本肝臓学会専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本超音波医学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
院長 斉藤雅也 Masaya Saito

神戸大学医学部附属病院等の最前線で長年消化器・肝臓内科の臨床と研究に従事。医学博士。 標準治療では回復が困難な進行した肝炎や肝硬変に対し、新たな選択肢としての「肝臓再生医療」にいち早く取り組む。また、肝硬変患者さまの中で合併症(潜在性肝性脳症)を有する割合を明らかにし、カルニチンによる潜在性肝性脳症の治療効果を世界で初めて報告するなど、国際的な英文医学誌への論文掲載実績も多数(代表論文:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224)。科学的根拠に基づいた高度な専門知識と精緻な診断で、患者様の肝臓を守るサポートを行っています。
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さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり)
電話
  • 電話:078-967-0019
  • 携帯電話:080-7097-5109
アクセス
当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。