• 2026年9月8日

【肝臓病専門医が解説】エッセイスト・玉村豊男さんの訃報に寄せて|「肝がん」の原因・初期症状・最新治療と予防の真実

こんにちは。

神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

エッセイストや画家として広く親しまれ、長野県東御市でワイナリーを開設するなど独自のライフスタイルを発信されていた玉村豊男さんが、肝がんのため8月9日にご逝去されたことが報じられました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

この訃報に接し、「肝がんとはどのような病気なのか」「なぜ自覚症状がないまま進行してしまうのか」と不安を感じられた方も多いのではないでしょうか。

肝がんは、早期に発見して適切な治療を行えば根治を目指せる疾患ですが、肝臓が「沈黙の臓器」と呼ばれるゆえんに、発見が遅れやすい特徴があります。

今回は、肝臓病専門医の視点から、肝がんの原因、初期症状、最新の検査・治療法、そして再発予防のポイントについて詳しく解説します。

■ 1. 肝がんとは:原発性肝がんが約95%を占める疾患

肝臓にできる悪性腫瘍(肝がん)は、肝臓そのものから発生する「原発性肝がん」と、他の臓器のがんが血流に乗って転移してくる「転移性肝がん」に大別されます。

玉村さんが罹患された「肝がん」は原発性肝がんに含まれ、肝がんの中で約95%を占める代表的な疾患です。肝臓の大部分を構成する「肝細胞」が慢性的な炎症や酸化ストレスを受け続け、DNAに変異が蓄積することでがん化します。

■ 2. 変化する発症原因:ウイルス性から「脂肪肝・アルコール」へ

かつて、日本の肝がんの原因はB型肝炎ウイルス(約20%)やC型肝炎ウイルス(約70%)が大多数を占めていました。しかし、優れた抗ウイルス薬(飲み薬)の登場により、ウイルス性の肝がんは大幅に減少しています。

その一方で急増しているのが、生活習慣に起因する以下の肝がんです。

  • 代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH): お酒を飲まない人の脂肪肝が進行し、慢性炎症を起こしてがん化するケース。糖尿病や肥満、高血圧などの代謝異常を併発していると発症リスクが跳ね上がります。
  • アルコール性肝障害・肝硬変: 長年にわたる過剰飲酒により、肝細胞の破壊と再生が繰り返されて発症するケース。

特に45歳以上の男性、55歳以上の女性で発症率が上昇する傾向があり、「お酒を飲まないから大丈夫」「太っていないから安心」とは言い切れない時代になっています。

■ 3. 初期症状はほぼゼロ:気づいた時には進行している罠

肝がんの最も恐ろしい点は、初期段階では痛くも痒くもない「完全な無症状」であることです。

病状がかなり進行して初めて、以下のような症状が現れます。

・右あばらの下(右上腹部)の鈍痛、しこり、圧迫感
・原因不明の体重減少や食欲不振
・白目や皮膚が黄色くなる(黄疸)
・お腹に水が溜まる(腹水)や足のむくみ

これらの症状が出てからでは、腫瘍が大きくなっていたり肝機能が低下していたりして、選べる治療法が限られてしまうことがあります。だからこそ、症状が出る前の定期的な検診が命を救う鍵となります。

■ 4. 肝がんを見逃さない最新の検査法

肝がんを早期に発見するためには、血液検査と画像検査を組み合わせた総合的な評価が必須です。

血液検査・腫瘍マーカー:肝機能(AST、ALT、γ-GTP、血小板数)に加え、肝がんに特異的な腫瘍マーカー(AFP、PIVKA-II)を測定します。PIVKA-IIは肝がんに比較的特異性が高く、治療前の値が治療後の肝機能経過とも関連することが報告されています。

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腹部超音波検査(エコー): 体への負担なく肝臓の内部をリアルタイムで観察します。

超音波エラストグラフィー: 肝臓の硬さ(線維化)を数値化し、がんが発生しやすい母地(F3〜F4ステージ)になっていないかを評価します。

CT・MRI検査: 超音波で見えにくい死角にある腫瘍や、微小ながんの血流動態を精密に診断します。

■ 5. 肝がんの治療法:病期と肝機能に応じた選択肢

肝がんの治療は、「腫瘍の大きさ・個数」と「肝臓の予備能(肝機能の良さ)」を総合的に判断して決定されます。

外科的切除(肝切除): 肝機能が保たれており、腫瘍が局在している場合の確実性の高い治療法です。

ラジオ波焼灼療法(RFA): 体の外から細い針を腫瘍に刺し、高周波で熱凝固させてがんを死滅させる低侵襲な治療です(主に3cm以下・3個以内)。

肝動脈化学塞栓療法(TACE): カテーテルを使ってがんに栄養を送る動脈を兵糧攻めにする治療で、多発している場合に適しています。

分子標的薬・免疫複合療法: 免疫チェックポイント阻害薬(アテゾリズマブ+ベバシズマブ等)など、切除が難しい進行がんに対する薬物療法が進歩しています。

■ 6. 肝臓病専門医の視点:内臓脂肪の管理と再発予防

肝がんは、一度治療が成功しても、背景肝が慢性肝炎や肝硬変の状態であれば、肝臓内の別の場所から再発しやすいという特徴があります。

私の臨床研究においても、治療後の予後や再発には「内臓脂肪の蓄積」や「全身のエネルギー代謝状態(非蛋白呼吸商)」が深く関わっていることを報告しております。

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単にがんを取り除くだけでなく、

・禁酒・節酒の徹底
・糖質や脂質を適正化したバランスの良い食事
・筋力を維持し、代謝をサポートする適度な運動(スクワットなど)
・BCAA(分岐鎖アミノ酸)の補給による肝代謝の改善

を行い、肝がんが育ちにくい体内環境を維持し続けることが極めて大切です。

■ 7. 進行した肝硬変への新たな治療選択肢「肝臓再生医療」

「肝硬変と言われ、がんの発症や再発におびえている」

「従来の標準治療を続けているが、肝機能の数値を根本から底上げしたい」

このようなお悩みを抱える方に向けて、当院では厚生労働省に治療計画を受理された医療機関として、自己脂肪由来幹細胞を用いた「肝臓再生医療(自由診療)」を提供しています。

患者様ご自身のお尻の皮下脂肪組織を採取し抽出した幹細胞を培養し、点滴で投与することで、幹細胞が傷ついた肝臓に集まって(ホーミング効果)慢性炎症を抑え、組織の修復を促すアプローチです。肝臓が本来持つ治癒力をサポートし、がんの発生母地となる硬い組織の進展抑制を目指します。

■ 8. まとめ・受診のご案内

玉村豊男さんの訃報は、私たちに肝臓の健康管理の大切さを改めて教えてくれています。

肝がんは決して突然できるものではなく、長年の脂肪肝、飲酒、肝炎ウイルスといった下地があって静かに育ちます。逆を言えば、定期的な検査で下地の段階から見つけ出し、生活習慣を見直すことで防ぐことができる病気でもあります。

・健康診断で肝機能(AST、ALT、γ-GTP)の異常を指摘された
・脂肪肝と言われたまま放置している
・お酒を飲む習慣が長く、詳しいエコー検査を受けたことがない
・肝炎ウイルスの検査を一度も受けたことがない

という方は、どうぞお早めに当院までご相談ください。

神戸市西区のさいとう内科クリニックでは、院長が精密な血液検査や腹部超音波検査、超音波エラストグラフィー検査を駆使して的確に診断し、治療計画を立てています。そして、従来の標準治療と最先端の再生医療の両方ともに精通している院長が、患者様一人ひとりに合わせた治療プランをご提案しています。当院では、症状がまだ現れていない肝炎や代償性肝硬変の患者様だけでなく、腹水や足のむくみ、黄疸、肝性脳症など症状のある多くの非代償性肝硬変の患者様にも、再生医療による治療実績があります。幅広い肝硬変患者様にとって可能性を秘めた治療法であると考えています。

遠方にお住まいで直接の来院が難しい方に向けて、自宅にいながらスマートフォンでご相談いただける「オンライン事前相談(Curon)」体制を整えております。また、インターネットの操作が苦手な方は、診療時間内にお電話でお問い合わせいただいても構いません。院長の外来診療が落ち着きましたらこちらからお電話をかけ直させていただきます。どうぞ一人で抱え込まずにお気軽に当院までご相談ください。

この記事の監修・執筆者

さいとう内科クリニック
院長:斉藤 雅也 Masaya Saito

  • 日本内科学会認定医
  • 日本肝臓学会専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本超音波医学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
院長 斉藤雅也 Masaya Saito

神戸大学医学部附属病院等の最前線で長年消化器・肝臓内科の臨床と研究に従事。医学博士。 標準治療では回復が困難な進行した肝炎や肝硬変に対し、新たな選択肢としての「肝臓再生医療」にいち早く取り組む。また、肝硬変患者さまの中で合併症(潜在性肝性脳症)を有する割合を明らかにし、カルニチンによる潜在性肝性脳症の治療効果を世界で初めて報告するなど、国際的な英文医学誌への論文掲載実績も多数(代表論文:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224)。科学的根拠に基づいた高度な専門知識と精緻な診断で、患者様の肝臓を守るサポートを行っています。
≫ 詳しい経歴や全研究実績はこちら

さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり)
電話
  • 電話:078-967-0019
  • 携帯電話:080-7097-5109
アクセス
当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。