• 2026年9月7日

【肝臓病専門医が解説】Child-Pugh分類(チャイルド・ピュー分類)とは?肝硬変の重症度スコアと肝臓再生医療という新たな治療選択肢

こんにちは。
神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。
「医師から『Child-Pugh分類』や『肝硬変のグレード』についての説明を受けたが、具体的にどういう意味なのかよく分からない」
「自分の肝臓の機能が今どの段階にあり、今後どうなってしまうのか不安だ」
このようなお悩みを抱えて当院を受診される患者様が少なくありません。
健康診断でよく目にするASTやALTは「今どれくらい肝細胞が壊れているか(リアルタイムの炎症)」を示すのに対し、Child-Pugh(チャイルド・ピュー)分類は「肝臓が生命を維持するための力をどれだけ残しているか(肝予備能)」を総合的に判定する世界基準のスコアリングシステムです。
今回は、肝臓病専門医の視点から、Child-Pugh分類の具体的な判定項目やグレード(A・B・C)の意味、生命予後との関連、そして当院で注力している「肝臓再生医療(自己脂肪由来幹細胞治療)」における意義について詳しく解説します。

■ 1. Child-Pugh(チャイルド・ピュー)分類とは:肝臓の「体力」を測る世界標準

Child-Pugh分類は、肝硬変がどの程度進行し、肝臓がどれくらい機能(肝予備能)を保てているかを客観的に評価するための指標です。1973年に提唱されて以来、世界中の肝臓病診療の現場で最も信頼されているスコアリング基準として用いられています。
評価には、以下の「3つの血液検査データ」と「2つの自覚症状・臨床所見」を組み合わせた、合計5つの項目が使われます。
① 血清総ビリルビン値(解毒・排泄力の指標)
② 血清アルブミン値(タンパク質合成力の指標)
③ プロトロンビン時間(PT% または PT-INR:血液凝固能の指標)
④ 腹水の有無および程度(診察・腹部超音波検査での所見)
⑤ 肝性脳症の有無および程度(意識状態や行動異常の所見)
これら5項目をそれぞれ1〜3点で採点し、合計点数(5〜15点)によって重症度を3段階のグレードに分類します。

■ 2. スコアの採点基準と3つのグレード分類

各項目の採点基準は以下の通りです。

評価項目123
総ビリルビン値 (mg/dL)2.0 未満2.0〜3.03.0 超
血清アルブミン値 (g/dL)3.5 超2.8〜3.52.8 未満
プロトロンビン時間活性 (PT%) (または PT-INR)70% 以上 (1.7 未満)40〜70% (1.7〜2.3)40% 未満 (2.3 超)
腹水なし軽度(利尿薬でコントロール可能)中等度以上(コントロール困難)
肝性脳症なし軽度(Grade I〜II:昼夜逆転、計算力低下)重度(Grade III〜IV:昏睡、意識混濁)

ここで特に注意が必要なのが、「軽度の肝性脳症(Grade I〜II)」です。昼夜逆転・計算力の低下・物忘れなどが主症状で、患者様ご本人は「疲れているだけ」「年のせい」と見過ごされやすく、Child-Pughのスコアに適切に反映されないことがあります。

院長は、肝硬変患者さんにおける潜在性肝性脳症の見落とし防止をテーマに研究を行っており、慢性肝疾患に特化した問診票(CLDQ)のスコアが潜在性肝性脳症の簡易的スクリーニングとして有用であることを報告しています。

※出典:

※原発性胆汁性胆管炎(PBC)などの胆汁うっ滞性肝疾患では、ビリルビンの基準値が「4.0未満(1点)」「4.0〜10.0(2点)」「10.0超(3点)」と一部変更されます。

合計点数によって、病期は以下の3つに分かれます。

・グレードA(5〜6点):代償性肝硬変

肝臓に硬化(線維化)はあるものの、残された細胞が機能を補えている状態です。自覚症状はほとんどなく、日常生活も問題なく送れます。

・グレードB(7〜9点):移行期〜初期非代償性肝硬変

肝臓の余力が失われ始め、足のむくみや軽度の腹水、だるさなどの症状が現れ始める段階です。

・グレードC(10〜15点):非代償性肝硬変

肝臓の機能が破綻し、重度の腹水、難治性の黄疸、肝性脳症、出血傾向などが顕著に現れる深刻な状態です。

■ 3. グレードごとの生命予後と治療選択

Child-Pughスコアは、将来の生存率(予後)を予測する上でも極めて重要な指標です。

・グレードAの予後:1年生存率は約100%、5年生存率も約70〜80%と良好です。
・グレードBの予後:1年生存率は約80%、早期の集学的治療が必要です。
・グレードCの予後:1年生存率は約45〜50%まで急低下し、3年生存率は約3割程度にとどまると報告されています。

また、日常の診療だけでなく、以下のような重要な治療判断の基準としても用いられます。

・肝がんの治療方針決定

肝がんを合併した場合、手術(肝切除)ができるのは原則として「グレードA(または一部のグレードB)」に限られます。グレードCでは切除手術に耐えられず肝不全に陥るリスクが高く、カテーテル塞栓療法(TACE)や薬物療法を含めた多くの治療選択肢は狭まり、慎重な判断が求められます。

・肝移植の適応判断

日本肝臓学会のガイドラインでは、脳死肝移植待機リストへの登録基準として「Child-Pughスコア10点以上(グレードC)」がひとつの大きな目安とされています。

■ 4. グレードB・Cからの改善はなぜ難しいのか?

肝硬変がグレードBやCへと進むと、従来の標準治療(利尿薬、アルブミン点滴、分岐鎖アミノ酸製剤、合成二糖類など)を行っても、「対症療法として数値を一時的に下支えする」ことが精一杯となり、再びグレードAまで押し戻すことは極めて困難とされてきました。それどころか、長い目で見ると、少しずつ肝機能が低下していってしまう傾向にあります。
その根本原因は、肝臓全体に「線維化(瘢痕組織)」が張り巡らされ、健全な肝細胞の絶対数が減少し、微小な血流循環が著しく途絶えてしまっていることにあります。
しかし、「もうグレードB(またはC)だから回復は諦めるしかないのか」といえば、決してそうではありません。

■ 5. 肝臓再生医療(自己脂肪由来幹細胞治療)とChild-Pughスコア

当院では、厚生労働省に再生医療等提供計画を受理された医療機関として、進行した肝硬変に直面されている患者様へ「自己脂肪由来幹細胞治療(肝臓再生医療・自由診療)」という新たな治療選択肢をご提案しています。当院では、グレードAやBの患者様だけではなく、多数のグレードCの患者様にも再生医療による治療実績があり、幅広い肝硬変患者様にとって可能性を秘めた治療法であると考えています。

・幹細胞が肝組織の微小環境を修復する

患者様ご自身のお尻の皮下脂肪組織を採取し抽出した幹細胞を安全に培養し、点滴で体内に戻します。投与された幹細胞は傷ついた肝組織へと自律的に集まり(ホーミング効果)、持続する慢性炎症を鎮静化させるとともに、線維化の進展を抑制するシグナル(サイトカイン)を分泌します。微小循環を改善し、残存する肝細胞が活発に働ける環境を再構築するアプローチです。

・Child-Pughスコアの総合的な改善を目指す

肝臓再生医療において、治療効果を判定する最も重要な総合指標がこのChild-Pughスコアです。幹細胞の働きによって肝臓の機能が底上げされると、

  • アルブミン合成能が向上する
  • プロトロンビン時間(血液凝固能)が改善する

院長は、慢性B型肝炎・肝硬変患者さんへの治療において、治療前のアルブミン値とプロトロンビン時間の水準が、その後の肝機能改善度を予測する独立した因子であることを報告しています。Child-Pugh分類の核心をなす2指標の変動を丁寧に追うことが、治療効果を客観的に評価するうえで最も信頼性が高いと当院でも実感しています。

※出典:

  • ビリルビンの解毒・排泄がスムーズになる
  • 血管内浸透圧の回復と門脈圧亢進の緩和により、腹水やむくみが軽減する

といった好循環が生まれ、グレードの改善・維持が期待されます。

・肝臓病専門医による栄養管理との相乗アプローチ

幹細胞治療の力を最大限に引き出すためには、良質なタンパク質やBCAAの補給、就寝前軽食(LES療法)といった医学的根拠に基づく栄養管理を同時に行うことが不可欠です。当院では従来の治療と再生医療を両軸で行っていくことがとても重要だと考えています。このように、肝予備能を維持するための集学的なサポートを徹底しています。

■ 6. まとめ・受診のご案内

Child-Pugh分類は、あなたの肝臓が今どれだけの余力を残しているかを客観的に示してくれる大切な道標です。
もし「グレードBやCと診断され、これ以上の進行におびえている」「従来の治療法だけでは不安を感じている」という場合は、決して一人で悩みを抱え込まず、肝臓病専門医でもあり、再生医療にも精通している当院へご相談ください。
神戸市西区のさいとう内科クリニックでは、詳細な血液検査や腹部超音波検査、超音波エラストグラフィー検査によって正確なChild-Pughスコアを算出し、患者様お一人おひとりの病状に寄り添った最適かつ柔軟な治療戦略をご提案いたします。
遠方にお住まいで直接の受診が難しい患者様のために、ご自宅にいながらスマートフォンで受診いただける「オンライン事前相談(Curon)」を受け付けております。また、インターネットの操作が苦手な方は、診療時間内にお電話をいただいても構いません。院長の外来診療が落ち着きましたら、こちらからお電話を折り返させていただきます。
まずは現在の肝予備能を正確に知ることから始めましょう。大切な肝臓を守るために、一緒に最善の一歩を踏み出していきましょう。

この記事の監修・執筆者

さいとう内科クリニック
院長:斉藤 雅也 Masaya Saito

  • 日本内科学会認定医
  • 日本肝臓学会専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本超音波医学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
院長 斉藤雅也 Masaya Saito

神戸大学医学部附属病院等の最前線で長年消化器・肝臓内科の臨床と研究に従事。医学博士。 標準治療では回復が困難な進行した肝炎や肝硬変に対し、新たな選択肢としての「肝臓再生医療」にいち早く取り組む。また、肝硬変患者さまの中で合併症(潜在性肝性脳症)を有する割合を明らかにし、カルニチンによる潜在性肝性脳症の治療効果を世界で初めて報告するなど、国際的な英文医学誌への論文掲載実績も多数(代表論文:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224)。科学的根拠に基づいた高度な専門知識と精緻な診断で、患者様の肝臓を守るサポートを行っています。
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さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり)
電話
  • 電話:078-967-0019
  • 携帯電話:080-7097-5109
アクセス
当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。