• 2026年9月7日

【肝臓病専門医が解説】血液検査だけで肝臓の硬さがわかる?「M2BPGi」の意味と肝臓再生医療の可能性

こんにちは。

神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

「病院で血液検査をしてもらったときにM2BPGiという見慣れない項目の数値が高かった」

「お酒を飲まないのに肝臓が硬くなっていると言われ、不安を感じている」

このようなご相談を受ける機会が非常に増えています。

一般的な血液検査で目にするASTやALTは、今まさに肝細胞が壊れているかというリアルタイムの炎症度を示します。これに対し、「M2BPGi(エムツービーピージーアイ)」は、長年の炎症によって肝臓がどれくらい硬くなっているか、すなわち線維化の進行度をダイレクトに映し出す画期的な血液マーカーです。

今回は、肝臓病専門医の視点から、M2BPGiの仕組みや数値の見方、肝硬変や肝がんリスクとの関わり、そして当院が注力する肝臓再生医療(自己脂肪由来幹細胞治療)における意義について分かりやすく解説します。

■ 1. M2BPGiとは:身体に負担をかけず「肝臓の硬さ」を測る血液検査

肝臓の線維化がどこまで進んでいるかを確定診断するには、かつてはお腹から針を刺して直接肝組織を採取する「肝生検」がゴールドスタンダードでした。しかし、肝生検には出血のリスクや痛み、数日間の入院が必要という大きな身体的負担が伴います。

そこで日本で開発され、2015年に保険適用となったのが「M2BPGi(Mac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体)」です。

肝臓に慢性的な炎症が続くと、肝星細胞(かんせいさいぼう)が活性化してコラーゲンなどの線維を過剰に作り出し、肝臓が徐々に硬くなっていきます。この過程で分泌される「Mac-2結合蛋白(M2BP)」の糖鎖構造が、線維化の進展に伴って特異的に変化します。その変化した糖鎖構造だけを精密に測定するのがM2BPGi検査です。

従来の線維化マーカー(ヒアルロン酸やIV型コラーゲン7Sなど)は、関節リウマチなどの他疾患の影響を受けやすいといった難点がありましたが、M2BPGiは肝臓の線維化に対する特異性が極めて高く、腕からの採血だけで安全に肝臓の硬化度合いを把握できます。

■ 2. M2BPGiの数値の見方と線維化ステージ

M2BPGiの検査結果は、「C.O.I.(Cut Off Index:カットオフインデックス)」という指数で表されます。数値が大きくなるほど、肝臓の線維化が進行していることを示します。

一般的な目安となる基準は以下の通りです。

・1.00 C.O.I. 未満:正常〜ごく軽度の線維化(F0〜F1相当)
・1.00〜1.99 C.O.I.:軽度〜中等度の線維化(F2相当)。慢性肝炎の進行を疑う段階
・2.00〜2.99 C.O.I.:高度な線維化(F3相当)。肝硬変の一歩手前の深刻な段階
・3.00 C.O.I. 以上(疾患によっては4.0以上):肝硬変(F4相当)の可能性が極めて高い段階

注意点として、原因となる疾患(B型肝炎、C型肝炎、アルコール性肝障害、MASLD/MASHなど)によって、肝硬変を示唆するカットオフ値が微妙に異なります。特に脂肪肝(MASLD)を背景とする場合は、ウイルス性肝炎に比べてやや低めの数値でも高度な線維化が進んでいるケースがあるため、数値の解釈には肝臓病専門医による総合的な診断が欠かせません。

■ 3. 線維化の進行と「肝がん発症リスク」の密接な関係

なぜM2BPGiを測定して線維化の進行度を知る必要があるのでしょうか。それは、肝臓が硬くなればなるほど、将来的に肝がんを発症する確率が跳ね上がるからです。

肝がんは、何もない健康な肝臓から突然できることは極めて稀です。長年の炎症によって線維化が進み、肝硬変へと近づくにつれて肝細胞の遺伝子異常が蓄積し、がんが発生しやすい母地(発がん母地)が形成されます。

臨床研究においても、M2BPGi値が高い患者様ほど、将来の肝がん発症率や全死亡リスクが有意に上昇することが明らかになっています。定期的にM2BPGiを測定することは、肝がんを初期段階で食い止めるための最も重要な安全網となります。

■ 4. 肝臓病専門医の視点:血液データと画像診断の組み合わせが命を守る

院長は、長年臨床現場において、患者様に負担をかけない血液マーカーを用いた肝線維化予測モデルの研究に取り組んでまいりました。

※出典:

日常の診療において大切なのは、ひとつの検査値だけに頼らないことです。M2BPGiや血小板数、FIB-4 indexといった血液データに加え、当院では肝臓の硬さをリアルタイムに画像・数値化できる「超音波エラストグラフィー検査」を導入しています。

針を刺すことなく、血液検査と痛みのない腹部超音波検査を組み合わせることで、患者様の肝臓が現在どのステージ(F0〜F4)にあるのかを極めて高精度に判定いたします。

■ 5. 肝臓再生医療(自己脂肪由来幹細胞治療)とM2BPGi

「M2BPGiが高く、すでに肝硬変と言われてしまった」

「これ以上硬くなるのを防ぎ、少しでも肝臓を元に戻したい」

従来の標準治療では、原因疾患へのアプローチ(抗ウイルス薬の投与や生活習慣の改善など)によって線維化の進行スピードを緩めることが主目的であり、一度出来上がってしまった硬い瘢痕(線維組織)を減らすことは難しいとされてきました。長い目でみると、一時的に線維化の進行スピードを緩めることができても、経時的には少しずつ線維化が進行していくことも分かってきています。

そこで当院がご提案しているのが、厚生労働省に再生医療等提供計画を受理された医療機関として実施する「自己脂肪由来幹細胞治療(肝臓再生医療・自由診療)」です。

・幹細胞が線維化の抑制と修復を促す

患者様ご自身のお尻の皮下脂肪組織を採取し抽出した幹細胞を安全に培養し、点滴で投与します。血管を通じて肝組織へ集まった幹細胞は、慢性的な炎症を鎮めるとともに、過剰なコラーゲン線維を分解する酵素の働きをサポートし、線維化の進行を食い止める微小環境を再構築します。

・治療効果を客観的に追跡するM2BPGi

再生医療の経過観察において、M2BPGiは患者様の身体にメスや針を入れることなく、「硬くなった肝臓がどれだけ柔らかさを取り戻しているか」を追跡できる極めて有用な指標となります。治療後にM2BPGi値の低下やエラストグラフィーでの肝硬度改善が確認できれば、肝組織の修復が進んでいる確かなサインとなります。

■ 6. まとめ・受診のご案内

M2BPGiは、沈黙の臓器である肝臓が発する「硬化のサイン」を、わずかな血液で正確にキャッチしてくれる画期的な検査です。

「自覚症状が何もないから」と数値を放置していると、知らない間に肝硬変や肝がんへと病状が移行してしまう恐れがあります。

・病院で血液検査をしてもらったときにM2BPGiの異常を指摘された
・脂肪肝や慢性肝炎がどこまで進んでいるか正確に知りたい
・肝硬変と診断され、進行を食い止めるために再生医療の可能性を検討したい

神戸市西区のさいとう内科クリニックでは、血液検査や腹部超音波検査、超音波エラストグラフィーを組み合わせて的確に診断し、治療計画を立てています。そして、従来の標準治療と最先端の再生医療の両方ともに精通している院長が、患者様一人ひとりに合わせた治療プランをご提案しています。当院では、症状がまだ現れていない肝炎や代償性肝硬変の患者様だけでなく、腹水や足のむくみ、黄疸、肝性脳症など症状のある多くの非代償性肝硬変の患者様にも、再生医療による治療実績があります。幅広い肝硬変患者様にとって可能性を秘めた治療法であると考えています。

遠方にお住まいで通院が難しい方に向けて、ご自宅にいながらスマートフォンで受診できる「オンライン事前相談(Curon)」体制を整えております。また、診療時間内にお電話でのお問い合わせも受け付けております。どうぞ一人で抱え込まずにお気軽に当院までご相談ください。

この記事の監修・執筆者

さいとう内科クリニック
院長:斉藤 雅也 Masaya Saito

  • 日本内科学会認定医
  • 日本肝臓学会専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本超音波医学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
院長 斉藤雅也 Masaya Saito

神戸大学医学部附属病院等の最前線で長年消化器・肝臓内科の臨床と研究に従事。医学博士。 標準治療では回復が困難な進行した肝炎や肝硬変に対し、新たな選択肢としての「肝臓再生医療」にいち早く取り組む。また、肝硬変患者さまの中で合併症(潜在性肝性脳症)を有する割合を明らかにし、カルニチンによる潜在性肝性脳症の治療効果を世界で初めて報告するなど、国際的な英文医学誌への論文掲載実績も多数(代表論文:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224)。科学的根拠に基づいた高度な専門知識と精緻な診断で、患者様の肝臓を守るサポートを行っています。
≫ 詳しい経歴や全研究実績はこちら

さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり)
電話
  • 電話:078-967-0019
  • 携帯電話:080-7097-5109
アクセス
当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。