• 2026年10月18日

肝線維化の早期発見:FIB-4 indexスコアと超音波エラストグラフィ検査で肝硬変を防ぐ

こんにちは。

神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

健康診断でAST(GOT)やALT(GPT)、γ-GTPが高いと指摘されたことはありませんか? これらは肝臓に負荷がかかっているサインですが、多くの場合「少し高めだけど自覚症状もないし、様子をみよう」で見過ごされてしまいます。

しかし、肝臓の細胞が傷つく状態が繰り返されると、水面下で少しずつ「線維化(せんいか)」が進行します。線維化とは、傷を修復する過程でコラーゲン線維が増え、肝臓が徐々に硬くなってしまう変化のことを指します。放置すれば肝硬変や肝がんへとつながる重大なサインです。

近年、肝線維化の指標として、「FIB-4 index(フィブフォー・インデックス)」という言葉が注目されるようになりました。これは血液検査データから肝臓の硬さを推測できる、非常に優れたスクリーニング指標です。

今回は、肝線維化の仕組みと早期発見の重要性、そして当院での精密な評価アプローチについて詳しく解説します。

■1. 肝線維化とは—肝臓が「硬く」なるプロセス

肝線維化とは、肝細胞が慢性的なダメージを受けることで、修復のためにコラーゲン線維が過剰に蓄積し、肝臓全体が弾力を失って硬くなっていく変化を指します。 正常な肝臓は非常に柔らかい臓器ですが、炎症が長引くと「肝星細胞(かんせいさいぼう)」が活性化し、コラーゲン線維を過剰に産生してしまうのです。

肝線維化は一般的に、次のような段階(ステージ)をたどります。

F0肝線維化なし(正常)
F1軽度肝線維化(肝臓の血管周辺にわずかに線維がある)
F2中等度肝線維化(線維が広がり始めている)
F3高度肝線維化(線維同士がつながり、肝臓の構造が乱れる)
F4肝硬変(肝臓全体がゴツゴツと硬くなり、肝機能が著しく低下)

F1〜F2の初期段階では自覚症状が全くなく、通常の血液検査の数値(ASTやALT)がそれほど高くないケースもあります。しかし、F3〜F4まで進むと肝臓の予備能が低下し、腹水や黄疸、食道静脈瘤といった深刻な合併症や、肝がんの発症リスクが急激に跳ね上がります。

原因はB型・C型肝炎ウイルスだけでなく、近年の食生活や運動不足に伴う脂肪肝(MASLD/MASH)、アルコールの過剰摂取など多岐にわたります。原因が何であれ、早期に肝線維化を見つけ、進行を食い止めることが肝硬変予防の最大の鍵です。

■2. FIB-4 index:血液検査だけで肝臓の硬さを推測する指標

FIB-4 indexは、以下の4つの項目を組み合わせて計算する肝線維化スコアです。

「年齢」「AST」「ALT」「血小板数」

計算式: 年齢(歳)× AST(IU/L)÷ [ 血小板数(10⁹/L)× √ALT(IU/L)]

※健診結果からご自身で計算される際は、日本肝臓学会などの公式Webサイトにある自動計算ツールを活用すると便利です。

スコアの一般的な判定基準(肝線維化のスクリーニング)

  • 1.30未満:低リスク(肝線維化が進んでいない可能性が高い、F0〜F1相当)
  • 1.30〜2.67:中リスク(要経過観察・精密検査を推奨)
  • 2.67以上:高リスク(高度肝線維化 F3〜F4の疑いがあり、専門医による精密検査が必要)

FIB-4 indexの大きな利点は、一般的な健康診断の血液検査項目だけで算出できる点です。 ただし、計算式の分子に「年齢」が含まれているため、65歳以上の高齢者では肝線維化が進んでいなくても数値が高めに出やすいという特性があります。そのため、FIB-4 indexはあくまで「精密検査が必要な人を選び出すスクリーニング」であり、確定診断には超音波エラストグラフィ検査を組み合わせることが欠かせません。

■3. 超音波エラストグラフィ検査——痛みを伴わずに肝臓の硬さを測る

FIB-4 indexで異常を疑われた際、次に行うべき精密検査が「超音波エラストグラフィ(超音波組織弾性画像検査)」です。

特殊な超音波を用いて肝臓組織内のせん断波の伝播速度を計測し、肝臓の「硬さ(線維化の度合い)」をリアルタイムに数値化します。 従来の確定診断法であった「肝生検(お腹に針を刺して肝組織を採る検査)」のような痛みや出血リスク、入院の必要が一切なく、体に当てるだけで数分から10分程度で安全に行えます。

通常の腹部エコー検査が「肝臓の形や脂肪の付き具合、腫瘍の有無・程度」を視覚的に観察するのに対し、エラストグラフィは「肝臓がどれくらい硬くなっているか」という機能的な硬度を測定できます。両者を組み合わせることで、肝臓の状態を客観的かつ極めて正確に把握できます。

■4. 院長の研究から—新規マーカーNX-PVKAと肝線維化予測モデル

私自身、長年にわたり肝線維化を早期かつ非侵襲的に見抜くための臨床研究に取り組んでまいりました。

肝がんの腫瘍マーカーとして知られるPIVKA-IIには、組織の低酸素状態やビタミンKの取り込み低下を反映する「NX-PVKA」という誘導体が存在します。私は、この血中NX-PVKA値が肝線維化の進行とともに有意に上昇することに着目し、慢性肝疾患患者様を対象とした臨床研究を行いました。

その結果、NX-PVKAが高度線維化(F3〜F4)を高精度に見極める優れた特異度を持つことを実証し、FIB-4 indexをはじめとする既存の評価スコアと比較検討した論文を国際誌に発表いたしました。

当院では、こうした研究開発の知見を日々の臨床に活かし、一般的な血液検査、FIB-4 index、線維化マーカー(M2BPGiなど)、そして超音波エラストグラフィを多角的に組み合わせ、体に負担の少ない高精度な早期診断を行っています。

※出典:

■5. 肝線維化は改善できるのか?予防と治療の最前線

かつて「一度硬くなった肝臓は二度と元に戻らない(不可逆)」と考えられていました。しかし近年の医学研究により、原因を的確に取り除けば、線維化した組織が再吸収され、肝臓が柔らかさを取り戻す「可逆的な側面」があることが明らかになっています。

原因疾患の根絶・コントロール

ウイルス性肝炎であれば抗ウイルス薬(DAA製剤や核酸アナログ)による治療、アルコール性であれば断酒、脂肪肝(MASLD)であれば食事療法と適度な運動による体重適正化(5〜10%の減量)が基本です。

日常の生活習慣改善

余分な糖質や飽和脂肪酸を控え、良質なタンパク質や食物繊維を意識して摂取します。また、習慣的なブラックコーヒーの摂取(1日2〜3杯)による肝臓の線維化進行を抑える効果が複数の臨床研究で報告されています。

進行した肝硬変に対する新たな治療選択肢

すでにF3〜F4(高度線維化から肝硬変)まで進んでしまい、従来の標準治療だけでは肝線維化の回復が困難な患者様に対して、当院では患者様ご自身の脂肪組織を活用した「自己脂肪由来幹細胞治療(肝臓再生医療)」という新たな治療選択肢をご提案しています。

■6. まとめ—健診の「要経過観察」を放置しないために

「自覚症状がないから大丈夫」「毎年同じような数値だから平気」と放置してしまうことが、肝臓病の最も危険な落とし穴です。肝臓が静かに硬くなっていくプロセスは、症状が現れる前の今しか止められません。

神戸市西区のさいとう内科クリニックでは、肝臓病専門医である院長が、FIB-4 indexの評価から超音波エラストグラフィによる精密検査、日々の生活習慣指導、さらには新しい肝臓再生医療まで、一貫したトータルケアをご提供しています。

「健康診断で肝臓の数値の再検査を勧められた」

「自分の肝臓がどれくらい硬くなっているのか知りたい」

「家族が肝硬変と診断され、今後の治療に悩んでいる」

このような不安をお持ちの方は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。院長は、保険診療に基づく標準治療と再生医療の両方とも熟練しており、再生医療による豊富な診療実績もあります。また、腹水、黄疸、肝性脳症といった自覚症状がある非代償性肝硬変の方まで、再生医療による治療適応があります。ただし、当院まで通院できる体力がない場合や、体内に悪性腫瘍がある場合は、再生医療による治療適応がないため、肝硬変が著明に進行してしまう前に再生医療を検討されることをお勧めします。

遠方にお住まいの方には、自宅にいながらスマートフォンで受診できる「オンライン事前相談」を承っております。インターネットやスマートフォンの操作が難しい方は、診療時間内に当院までお電話にてお問い合わせいただいても構いません。院長の外来診療が落ち着きましたら、こちらからお電話をかけ直させていただきます。

沈黙の臓器である肝臓を守るために、まずは今現在の肝線維化を知るところから踏み出してみませんか。

この記事の監修・執筆者

さいとう内科クリニック
院長:斉藤 雅也 Masaya Saito

  • 日本内科学会認定医
  • 日本肝臓学会専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本超音波医学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
院長 斉藤雅也 Masaya Saito

神戸大学医学部附属病院等の最前線で長年消化器・肝臓内科の臨床と研究に従事。医学博士。 標準治療では回復が困難な進行した肝炎や肝硬変に対し、新たな選択肢としての「肝臓再生医療」にいち早く取り組む。また、肝硬変患者さまの中で合併症(潜在性肝性脳症)を有する割合を明らかにし、カルニチンによる潜在性肝性脳症の治療効果を世界で初めて報告するなど、国際的な英文医学誌への論文掲載実績も多数(代表論文:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224)。科学的根拠に基づいた高度な専門知識と精緻な診断で、患者様の肝臓を守るサポートを行っています。
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さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり)
電話
  • 電話:078-967-0019
  • 携帯電話:080-7097-5109
アクセス
当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。