• 2026年5月21日

最新の肝疾患「MASLD・MASH」と再生医療による根本修復の可能性

こんにちは。

神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

近年、欧米の医療界で最も注目されている肝疾患がMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)です。以前はNAFLDと呼ばれていましたが、現在は「代謝の異常」が背景にあることがより明確に定義されました。

お酒を飲まないからといって安心はできません。放置すればMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)へと進行し、肝硬変や肝がんを招く「病のドミノ」の出発点となるからです。本記事では、この新しい疾患概念の現状と、当院が提供する再生医療による次世代のアプローチについて解説します。

■ MASLDとMASHの違い——「沈黙の炎症」を理解する

MASLDは、飲酒量とは無関係に肝臓の5%以上に脂肪が蓄積した状態を指します。

  • MASL(代謝機能障害関連脂肪肝): 炎症や組織の破壊(線維化)がまだ起きていない段階。
  • MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎): 脂肪蓄積に加え、肝細胞が壊れ、慢性的な炎症と「線維化(硬くなること)」が始まっている状態。

【肝臓病専門医の視点:内臓脂肪は「毒」を出す】

見た目は痩せていても内臓脂肪が蓄積している「隠れ肥満」は、肝臓に深刻なダメージを与えます。私の研究では、内臓脂肪の蓄積が多いほど、その後の生存率や予後に悪影響を及ぼすことを明らかにしました。脂肪肝は単なる「太りすぎ」の問題ではなく、命に関わる疾患なのです。(出典:J Cancer Ther 2015; 6: 1124-1136

■ MASHに対する再生医療アプローチ:組織のフルリノベーション

MASHによる肝臓の線維化(硬化)は、いわば「肝臓の火事」が長引いて焼け跡が固まってしまった状態です。再生医療は、この焼け跡を再び機能する組織へと作り変えることを目指します。

  1. 鎮火: 強力な抗炎症作用で、肝細胞の破壊を止めます。
  2. 解体: 線維化を分解する因子の分泌を促し、肝臓をしなやかに戻します。
  3. 再建: 眠っていた肝細胞の再生力を呼び覚まし、代謝機能を復活させます。

【肝臓病専門医のこだわり:エネルギー代謝を数値化する】

私は、肝臓のエネルギー代謝(npRQ)を正しく評価し、管理することが患者様の予後を左右することを報告してきました。再生医療と並行して、この「燃える肝臓」を取り戻すための徹底した代謝管理を行うのが当院の特徴です。(出典:J Gastroenterol 2012; 47(10): 1134-1142

根本原因へのアプローチ:生活習慣改善との「最強の組み合わせ」

再生医療は蓄積したダメージをリセットする「リノベーション」ですが、原因を放置すれば再び脂肪は溜まります。

  • 体重の7〜10%の減量: これだけでMASHの炎症が有意に改善します。
  • 「隠れ糖質(果糖)」のカット: 肝臓の代謝スイッチを入れ直す基本です。
  • 筋肉は「第2の肝臓」:

【肝臓病専門医の深掘り:筋肉が肝臓を助ける】

私は研究により、BCAA(アミノ酸)を補給し筋肉の代謝をサポートすることで、全身のエネルギー代謝が劇的に改善することを実証しています。スクワット等で下半身の筋肉を鍛えることは、肝臓の負担を減らす最高の治療になります。(出典:Intern Med 2014; 53(14): 1469-75

よくあるご質問

Q:お酒は一滴も飲まないのに脂肪肝(MASLD)と言われました。なぜですか?

A MASLDの真犯人はアルコールではなく「代謝の異常」です。特に、果糖や糖質の摂りすぎが、肝臓をフォアグラ化させます。また、筋肉量が少ない「痩せ型」の方も、代謝が追いつかずに脂肪肝になるケース(Lean MASLD)が急増しています。

Q:MASH(脂肪性肝炎)を放置するとどうなりますか?

A 自覚症状がないまま、10〜15年かけて肝硬変へ進行します。ALTが30を超えているようなら、それは肝臓が悲鳴を上げているサインです。手遅れになる前に、肝臓病専門医による肝硬度測定を受けて、必要と判断されれば治療を受けられることをお勧めします。

Q:見た目は太っていないし、体重も標準です。それでも「MASH(脂肪肝炎)」の可能性はありますか?

 A: はい、十分にあります。日本人は欧米人に比べ、筋肉量が少なく内臓脂肪が溜まりやすい「痩せ型脂肪肝(Lean MASLD)」が多いのが特徴です。私は研究により、見た目は痩せていても内臓脂肪の蓄積が多い方は、その後の健康リスクが非常に高いことを明らかにしました。また、血液中の「NX-PVKA」という新しいマーカーを用いることで、こうした見た目や従来の数値では見逃されがちな肝臓の「硬さ(線維化)」を予測することが可能です。「自分は太っていないから大丈夫」と過信せず、一度専門的な評価を受けることが、将来の肝硬変を防ぐ第一歩になります。 (出典:J Cancer Ther 2015; 6: 1124-1136 / Hepat Mon 2015; 15(2): e22978

■肝臓病専門医からのメッセージ

「脂肪肝くらい、みんな持っているから大丈夫」という考え方は、今や過去のものです。MASLD/MASHは、全身の血管や臓器をも蝕む「万病の入り口」です。

当院では、最新の幹細胞治療(再生医療)によって、硬くなり始めた肝臓を修復し、再び元気に働く「代謝の工場」へと戻すお手伝いをいたします。

■MASLD・MASHの方も再生医療の対象になります

「食事制限だけでは肝臓の数値が下がらない」「肝硬変への進行を何としても食い止めたい」という方は、ぜひ一度当院へご相談ください。当院では遠方の方でもご相談いただけるように、オンライン事前相談も実施しております。

この記事の監修・執筆者

さいとう内科クリニック
院長:斉藤 雅也 Masaya Saito

  • 日本内科学会認定医
  • 日本肝臓学会専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本超音波医学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
院長 斉藤雅也 Masaya Saito

神戸大学医学部附属病院等の最前線で長年消化器・肝臓内科の臨床と研究に従事。医学博士。 標準治療では回復が困難な進行した肝炎や肝硬変に対し、新たな選択肢としての「肝臓再生医療」にいち早く取り組む。また、肝硬変患者さまの中で合併症(潜在性肝性脳症)を有する割合を明らかにし、カルニチンによる潜在性肝性脳症の治療効果を世界で初めて報告するなど、国際的な英文医学誌への論文掲載実績も多数(代表論文:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224)。科学的根拠に基づいた高度な専門知識と精緻な診断で、患者様の肝臓を守るサポートを行っています。
≫ 詳しい経歴や全研究実績はこちら

さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり)
電話
  • 電話:078-967-0019
  • 携帯電話:080-7097-5109
アクセス
当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。