- 2026年7月6日
【肝臓病専門医が解説】閉経後に急増する「隠れ脂肪肝」~女性ホルモンとの知られざる関係

こんにちは。
神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。
2026年6月、「女性は閉経するとエストロゲンの分泌が急速に低下し、それに伴って脂肪肝が増える」という研究結果がニュース等で話題になりました。
▼参考文献)
これまで脂肪肝というと「お酒をたくさん飲む男性の病気」というイメージが強かったかもしれません。しかし実は、更年期以降の女性にとって決して無関係ではない、身近な疾患なのです。
私は肝臓病専門医として、性別やライフステージによって変化する肝臓のリスクを正しくお伝えすることが大切だと考えています。今回は、閉経と脂肪肝の深い関係や、更年期世代の女性が知っておきたい肝臓ケアについて分かりやすく解説します。
■1. なぜ「閉経後」に脂肪肝が増えるのか?

女性ホルモンの一つである「エストロゲン」には、内臓脂肪の蓄積を抑え、脂質代謝を整えて肝臓を守るバリアのような働きがあります。そのため、閉経前の女性は男性に比べて脂肪肝になりにくい傾向があります。 しかし、閉経が近づき更年期を迎えると、このエストロゲンの分泌量は急激に減少します。
強力なバリアが失われることで、内臓脂肪がつきやすくなり、LDLコレステロールや中性脂肪の値が上昇しやすくなります。その結果、肝臓に脂肪が蓄積する「脂肪肝(MASLD:代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」のリスクが跳ね上がってしまうのです。 「これまで健診で引っかかったことがないのに、40代後半〜50代になって急に脂肪肝を指摘された」というケースは非常に多く見られます。これは決してあなたの自己管理ができていないからではなく、女性ホルモンの変化という誰にでも起こる自然な現象が背景にあります。
■2. 「隠れ脂肪肝」は危険な落とし穴

更年期世代の脂肪肝で特に注意したいのが、体重や見た目が大きく変わらなくても、内臓や肝臓に脂肪が増えている「隠れ脂肪肝」です。健診の体重やBMI(体格指数)の数値だけでは気づきにくいという厄介な特徴があります。
エストロゲンの減少は、脂肪のつき方そのものを変化させます。閉経前は皮下脂肪(お尻や太ももなど)を中心に脂肪がついていた方でも、閉経後は内臓やお腹周り、そして肝臓に脂肪がつきやすい体質へと変わっていきます。 同じ体重、同じ食生活を続けていても、年代によって肝臓への負担は全く異なります。「若い頃から体型が変わっていないから大丈夫」と過信せず、定期的に肝臓の状態をチェックすることが大切です。
■3. 更年期世代が実践したい「肝臓を守る習慣」

閉経によるホルモン変化は避けられませんが、日々の少しの工夫で脂肪肝のリスクを抑えることは十分に可能です。
・適度な運動を取り入れる エストロゲンの減少により基礎代謝が落ちるため、若い頃と同じ食事量でも脂肪がつきやすくなります。ウォーキングや軽い筋力トレーニングなど、無理のない範囲で体を動かす習慣を持つことが、内臓脂肪を減らすカギになります。
・食事のバランスを見直す 糖質や脂質の多い食事を控えめにし、筋肉の材料となる「たんぱく質」や「食物繊維」を意識して摂りましょう。また、更年期は骨密度が低下しやすい時期でもあるため、カルシウムやビタミンDを補うことも骨と肝臓の健康に繋がります。
■4. 脂質代謝と肝疾患の深い関わり(院長の研究より)
私はこれまで、脂質代謝と肝疾患の関わりについて長年研究を続けてまいりました。脂肪肝は年齢や性別、ホルモンバランスといった背景因子によって、進行のスピードや現れ方が大きく異なります。 更年期世代の脂肪肝は、糖尿病や脂質異常症、骨粗鬆症といった他の疾患と複雑に絡み合っているケースが多々あります。肝臓の数値だけを見るのではなく、全身の代謝状態を踏まえた総合的な診療が不可欠です。
※脂肪肝を悪化させる『悪玉の脂質(毒性脂質)』と肝疾患の進行メカニズムに関する私の研究については、こちらの学術論文をご参照ください。 https://www.eurekaselect.com/article/66400
■5. 当院の検査とサポート体制

当院では、更年期以降の女性の脂肪肝に対して以下のような検査・サポートを行っております。
・血液検査:肝機能・脂質・血糖などの代謝状態を評価します。
・腹部超音波(エコー)検査:肝臓の脂肪の程度を画像で直接確認します。
・線維化の評価:肝臓が硬くなっていないか、そして硬さの程度を丁寧に調べます。
更年期は、肝臓だけでなく骨や心血管、メンタル面など、心身にさまざまな変化が起こりやすい時期です。当院では専門家の視点から、肝臓の状態を起点に全身の健康状態を踏まえたアドバイスを行っています。また、生活習慣の改善だけでは肝臓の数値が良くならない、すでに肝臓が硬くなる線維化が進んでいるといった場合には、ご自身の細胞を用いた「肝臓再生医療(幹細胞点滴)」という最新の治療も行っています。
■よくあるご質問(Q&A)

Q1. ホルモン補充療法は脂肪肝の予防に効果がありますか?
A1. ホルモン補充療法が脂質代謝に良い影響を与えることは知られていますが、脂肪肝の予防を主目的とした治療ではありません。まずはかかりつけの婦人科医とよくご相談されることをお勧めします。
Q2. 閉経後、どのくらいの頻度で健診を受けるべきですか?
A2. 少なくとも「年に1回」は血液検査と腹部超音波(エコー)検査を受け、肝機能や脂質の値に変化がないかを確認することをお勧めします。
Q3. 運動はどの程度行えば効果がありますか?
A3. ウォーキングなど少し汗ばむ程度の中等度の運動を「1日30分、週に3回程度」行うことが、内臓脂肪や肝臓の脂肪を減らすうえで効果的とされています。まずはご自身の無理のないペースから始めてみてください。
Q4. 脂肪肝に良い食べ物やおすすめの食材はありますか?
A4. 豆腐や納豆などの大豆製品がおすすめです。女性ホルモンに似た働きをする大豆イソフラボンや、肝臓の修復を助ける良質なたんぱく質が豊富に含まれています。ただし、サプリメントなどでの過剰摂取はかえって肝臓に負担をかける場合があるため、まずは毎日の食事からバランスよく取り入れるようにしてください。
Q5. 脂肪肝が進行すると、どのような自覚症状が出ますか?
A5. 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるため、初期段階では自覚症状がほとんどありません。「疲れが抜けない」「体がだるい」といった症状が出る頃には、すでに代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)などに進行している可能性があります。だからこそ、症状がなくても定期的な検査を受けることが重要になります。
■まとめ:更年期は「肝臓」を見直す絶好のタイミング

閉経に伴うエストロゲンの減少は、女性の体にとって大きな転換点です。これまで脂肪肝に縁がなかった方でも、リスクが高まる時期であることを知っておきましょう。
これは「誰にでも起こりうる自然な変化」です。一人で悩まず、自分の体の変化について正しく知り、生活習慣を少しずつ整えることで、肝臓への悪影響を最小限に抑えることができます。 「閉経してから体調が変わった」「健診で初めて脂肪肝と言われた」という方は、決して珍しくありません。気になることがあれば、ぜひお気軽に神戸市西区のさいとう内科クリニックまでご相談ください。
遠方にお住まいの方や、すぐに来院が難しい方のために、オンラインでの事前相談(Curon)も受け付けております。また、パソコンやスマホの操作に不慣れな方は、当院の診療時間内にお電話でお問い合わせいただくことも可能です。外来診療が落ち着きましたら、こちらからお電話をかけ直させていただきます。どうぞ、お一人で悩まず、お気軽にお問い合わせください。
- 院長
- 斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology - 所在地
- 〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり) - 電話
-
- 電話:078-967-0019
- 携帯電話:080-7097-5109
- アクセス
- 当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。
