- 2026年8月18日
国内初のMASH(脂肪肝炎)治療薬「ウゴービ」承認:F2〜F3線維化患者への新たな選択肢

こんにちは。
神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。
2026年6月、日本国内で初めてMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)に対する治療薬として、セマグルチド(製品名:ウゴービ)が承認されたことがニュースをはじめとする各メディアで大きく報じられました。これまでMASHに対する根本的な治療薬がなかっただけに、この承認は患者さんにとって大きな希望となります。今回のブログでは、この承認の背景、MASLD・MASHとはどのような疾患なのか、そして当院での取り組みについて詳しくお伝えします。
■1. MASLDとMASHとは何か:病名変更の背景も含めて

かつて「NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)」「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」と呼ばれていた疾患群は、2023年以降、国際的に「MASLD(Metabolic dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease:代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」「MASH(Metabolic dysfunction-Associated Steatohepatitis:代謝機能障害関連脂肪肝炎)」に改称されました。日本でも2024年にこの病名変更が正式に採用されています。
MASLDとは、アルコールを飲まない方(あるいは少量の飲酒の方)に生じる脂肪肝の総称です。代謝異常(肥満・糖尿病・高血圧・脂質異常症のうち1つ以上)を持つ方が、肝臓に脂肪が蓄積した状態を指します。日本では成人の約2〜3割がMASLDに該当すると言われており、非常に多くの方が潜在的に罹患しています。
そのMASLDのなかで、単なる脂肪蓄積にとどまらず、肝細胞の炎症を伴う病態がMASHです。MASHは放置すると肝線維化が進行し、肝硬変や肝がんへ移行するリスクがあります。今回承認されたウゴービは、このMASHのうち、線維化ステージF2(中等度線維化)またはF3(高度線維化)の患者さんを対象としており、肝線維化の改善効果が認められた初めての薬剤です。
■2. ウゴービ(セマグルチド)とはどのような薬か

セマグルチド(ウゴービ)は、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬と呼ばれるクラスの薬剤です。もともと2型糖尿病の治療薬として開発され、インスリン分泌の促進や食欲抑制、体重減少効果で広く知られています。日本ではすでに「オゼンピック」という名前で糖尿病治療に用いられており、肥満症治療薬「ウゴービ」としても使用されてきました。
MASHに対する有効性は、ESSENCE試験と呼ばれる国際的な大規模臨床試験で確認されました。この試験では、セマグルチド2.4mgを週1回皮下注射したMASH患者において、肝臓の炎症の改善(NAS改善)と線維化の改善が、プラセボ群と比較して有意に高い割合で認められました。特に線維化の改善については、プラセボ群が約19%に対し、セマグルチド群では約36%という顕著な差が示されました。
ただし、今回の承認は施設基準が設けられた指定施設での処方が中心となる位置づけであり、一般の内科クリニックで直接処方を行うには要件を満たす必要があります。当院では対象と考えられる患者さんに対し、必要に応じて適切な専門高度医療機関へのご紹介を行っています。
■3. MASLD・MASHのリスクファクター:あなたは該当しますか?

MASLDの主なリスク因子は代謝異常です。以下の項目に当てはまる方は、脂肪肝が隠れている可能性があります。
- 肥満(BMI 25以上)またはウエスト周囲径の増大(男性85cm以上、女性90cm以上)
- 2型糖尿病または空腹時血糖値の高め(100mg/dL以上)
- 高血圧(収縮期血圧130mmHg以上または降圧薬使用中)
- 脂質異常症(中性脂肪150mg/dL以上またはHDLコレステロール低値)
これらの代謝異常が重なるほどMASLDのリスクは上がり、さらにMASHへ進行する可能性も高まります。また、「痩せているから大丈夫」とお思いの方も要注意です。BMIが正常範囲でもMASLDを発症するケース(いわゆるLean MASLD)が日本人では少なくなく、定期的な腹部エコー検査が重要です。

MASHが疑われる場合、確定診断には従来は肝生検が必要でしたが、現在は非侵襲的な線維化マーカー(FIB-4インデックスなど)や超音波エラストグラフィーによる評価が用いられており、当院で積極的に活用しています。FIB-4インデックスとは、年齢・AST・ALT・血小板数から算出する簡便なスコアで、高値であるほど肝臓の線維化が進んでいることを示します。
■4. 院長によるMASLDと脂質代謝・予後に関する取り組み
私は以前よりMASLDと脂質代謝の関連について研究を行ってまいりました。
【MASLDの病態進行と脂質代謝に関する研究】
NAFLDの病態進行に関連する特定の脂質(脂質メディエーター)の同定を行い、脂質代謝異常と肝臓の脂肪蓄積や炎症・線維化との密接な関連を明らかにしました。
※出典:
この研究は、MASLDの管理において脂質代謝の改善が極めて重要であることを示唆しています。近年注目を集めているGLP-1受容体作動薬などの新しい薬剤は、体重減少や血糖改善に加え、脂質プロファイルの改善効果も期待されており、当研究の知見からも非常に注目すべき治療選択肢です。
また、脂肪肝と肝がん予後に関する研究として、以下の論文も発表しております。
【内臓脂肪蓄積と予後に関する研究】
内臓脂肪の蓄積が肝がん治療後の予後に与える影響を分析し、見た目上の肥満度(BMI)だけでなく内臓脂肪の管理が重要であることを報告しました。
※出典:
これらの研究実績からも裏付けられる通り、脂肪肝や内臓肥満の段階から放置せず、早期に介入して適切な治療を行うことが何よりも重要です。
■5. 当院でのMASLD・MASH診断と治療アプローチ

さいとう内科クリニックでは、MASLD・MASHの診断と治療に以下のアプローチを取っています。
【診断】
腹部超音波検査(エコー)により、肝臓の脂肪化(輝度上昇)と構造を評価します。必要に応じてFIB-4インデックス(血液検査から計算する線維化スコア)や超音波エラストグラフィー検査を組み合わせます。肝硬変への進行が確認された場合には当院にて専門的治療を行います。
【治療の基本】
まず生活習慣の改善が基本です。食事療法として総カロリー制限・糖質や脂質の見直しを行います。適度な有酸素運動(ウォーキング30分/日など)も有効です。体重を5〜10%減少させるだけで、脂肪肝や炎症の改善効果が期待できます。
【薬物療法】
合併する糖尿病や肥満症に対してGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬を適切に使用することで、肝臓への好影響も期待できます。ウゴービのMASH適応処方の動向を見極めつつ、必要に応じて専門病院と連携して対応いたします。
また、当院では血液検査データに基づいた個別性の高い栄養指導も行っています。「何から始めれば良いかわからない」という方も、1回の受診でできることから無理なく取り組める計画を一緒に考えていきましょう。
■6. まとめ:脂肪肝は早期に対処することが最善

今回の国内初MASH治療薬ウゴービの承認は、脂肪肝炎の治療に新たな選択肢が加わったことを意味します。しかし、薬物療法は生活習慣改善の補完であり、基本はやはり食事・運動・体重管理です。MASLDは多くの方に見られる疾患ですが、早期に発見し適切な治療を行えば、肝硬変・肝がんへの進行を防ぐことができます。
健康診断で「脂肪肝」と指摘されたことがある方、血液検査でAST・ALT・γ-GTPが高い方、メタボリックシンドロームと診断されている方は、ぜひ一度当院にご相談ください。さいとう内科クリニック(神戸市西区)では、日本肝臓学会 肝臓病専門医として血液検査、腹部エコー検査、超音波エラストグラフィーを組み合わせた丁寧な評価を行い、あなたの肝臓の状態を正確に把握した上で最適なアドバイスをいたします。
脂肪肝は「沈黙の臓器」が発する静かなSOS信号です。今日からでも遅くはありません。一緒に肝臓の健康を守りましょう。
- 院長
- 斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology - 所在地
- 〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり) - 電話
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- 電話:078-967-0019
- 携帯電話:080-7097-5109
- アクセス
- 当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。
