• 2026年10月3日

【メディア掲載】週刊新潮に院長・斉藤雅也の見解が掲載|プロテイン過剰摂取が肝臓に与える負担と「隠れ肝機能障害」の真相

こんにちは。

神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

2026年10月1日発売の「週刊新潮(2026年10月8日号)」の特集記事『今や市場規模3000億円超「プロテイン」はこんなに体に悪い』において、私の見解が掲載されました。

近年、健康意識の高まりや筋トレブーム、美容志向を背景に、プロテイン飲料や高タンパク食品が日常に深く浸透しています。しかし臨床の現場では、「良かれと思ってプロテインを過剰に摂取した結果、肝臓に負担をかけて数値を悪化させてしまう」という患者様からのご相談が確実に増えています。

今回は誌面でお伝えした内容をベースに、プロテインの過剰摂取が肝臓に与える代謝ストレスの正体、若い世代にも見られる「隠れ肝機能障害」のメカニズム、そして肝臓病専門医が推奨する正しいタンパク質との付き合い方について詳しく解説いたします。

■ 1. 市場規模3,000億円超のブームに潜む「過剰摂取」の落とし穴

現在、プロテイン補給食品の国内市場は3,000億円を超える規模へと急拡大しています。

かつてはアスリートやボディビルダーが中心だったプロテインですが、今や一般のビジネスパーソン、ダイエッター、シニア層、美容目的の女性にまで広く親しまれるようになりました。

コンビニやスーパーにはプロテインドリンク、高タンパクヨーグルト、プロテインバーなどが並び、「タンパク質は摂れば摂るほど体に良い」「不足すると筋肉が落ちて太る」といった情報がメディアやSNSで発信されています。

しかし、今回の週刊新潮特集が警鐘を鳴らしている通り、どれほど生命維持に不可欠な栄養素であっても「過剰摂取」は体に大きなひずみをもたらします。 使い切れなかったタンパク質は腎臓に排泄の負担をかけるだけでなく、体内のあらゆる代謝と解毒を一手に引き受ける「肝臓」にも持続的な過重労働を強いることになるのです。

■ 2. 肝臓病専門医が警告するメカニズム:アンモニア解毒の負担と肝障害リスク

食事やプロテインから摂取したタンパク質は、体内でアミノ酸へと分解・吸収された後、肝臓へと運ばれて代謝されます。

タンパク質がエネルギーや体組織に変換される過程では、副産物として強い毒性を持つ「アンモニア」が発生します。アンモニアは脳や神経にダメージを与えるため、肝臓は「尿素サイクル」という仕組みを休む間もなく稼働させ、無毒な「尿素」へと作り替えて尿として体外に排出しています。

日常の食事から適量を摂取している限り、この解毒作業は滞りなく行われます。 しかし、通常の食事に加えてプロテイン飲料などを過剰に流し込み続けると、肝臓の処理能力を超えてしまいます。

【肝臓病専門医の視点:アンモニア代謝と肝臓の深い関係】

肝臓における「アンモニアの解毒・処理能力」は、全身の健康状態の維持や疲労感の改善に直結する非常に重要な指標です。 私自身、肝機能低下に伴う体内のアンモニア処理能力の低下や、それに伴う合併症(潜在性肝性脳症)に対する治療効果について臨床研究を行い、国際医学誌で発表してまいりました。肝臓の処理限界を超えた代謝負担は、自覚症状のないレベルから肝臓や全身にじわじわとストレスを与え続けます。

※出典:

さらに注意すべきなのは、市販のプロテイン製品や複合サプリメントに含まれる各種添加物、人工甘味料、特定成分などが引き金となって起こる「薬剤性肝障害(中毒性・アレルギー性)」のリスクです。もともと自覚症状のない軽度の脂肪肝などを抱えている方の場合、高タンパク・高カロリーな摂取が重なることで肝臓での処理能力を超過して、肝機能数値の急激な上昇を招くケースも少なくありません。

■ 3. 若い世代に広がる「隠れ肝機能障害」と放置するリスク

最近の外来診療では、お酒もほとんど飲まず、肥満体型でもない20代〜40代の方が、健康診断でASTやALT、γ-GTPの異常を指摘されて受診されるケースが目立っています。生活歴を詳しく伺うと、「日課としてプロテインを毎日何杯も飲んでいた」という背景があることも珍しくありません。

筋トレによる「一時的な数値上昇」との見極め

筋トレを熱心に行っている方の場合、激しい運動によって筋肉細胞が微小なダメージを受け、修復される過程で筋肉由来のASTやALT(特にAST優位)が血液中に漏れ出し、数値が一時的に上がることがあります。 しかし、「筋トレのせいだから放っておけばいい」と安易に自己判断するのは禁物です。その裏に、プロテインやサプリメントによる真の肝細胞障害(ALT優位の上昇)や、偏った栄養摂取による「隠れ脂肪肝(MASLD)」が潜んでいるケースが多いためです。

「沈黙の臓器」が発するサイン

肝臓は初期段階では強い痛みを出しません。初期の不調は「なんとなく体が重だるい」「疲れが抜けない」といった漠然とした倦怠感にとどまることがほとんどです。また、肝機能が急激に低下すると、尿の色が濃い茶色(ビール色)に変化する「ビリルビン尿」が見られることもあります。

自覚症状が乏しいからと高タンパク負荷を放置し、肝細胞の破壊と修復が慢性的に繰り返されると、肝組織が硬く変化する「線維化」が静かに進行します。線維化が進んで肝硬変に至ってしまうと、現在の保険診療の範囲では元の柔らかい肝臓に戻すことが極めて困難になります。だからこそ、自覚症状のない「数値の異常」の段階で立ち止まることが重要です。

■ 4. 体には「アミノ酸プール」がある:毎食の大量補給が不要な理由

「毎日大量にプロテインを飲まないと、せっかく鍛えた筋肉が落ちてしまうのではないか」と不安に感じる方もいらっしゃいます。

しかし、人間の体には「アミノ酸プール」と呼ばれる予備タンクのシステムが備わっています。体内には常時およそ100gのアミノ酸が蓄えられており、食事の間隔が空いた際にも、このプールからアミノ酸が供給されて筋肉や組織の維持・修復が行われています。

「1食20g」の吸収上限と適正量

人間が1回の食事で効率よく吸収・利用できるタンパク質量には上限があり、約20gが目安とされています。一度に40gや50gをまとめて流し込んでも、体は利用しきれず、余剰分は脂肪として蓄積されるか、肝臓と腎臓に余計な解毒・排泄負担を強いるだけです。

一般的な成人の場合、1日に必要なタンパク質量は体重1kgあたり約0.8〜1.0g(体重60kgの方なら約50〜60g)です(ハードなトレーニングを行う方でも1.5g〜2.0g/kg程度が目安です)。 通常の3食をきちんと摂っていれば、この必要量は自然と満たされます。

  • 朝食の例: 6枚切り食パン(約6g)にチーズをのせ(約4g)、牛乳1杯(約6g)とヨーグルト(約4g)を合わせるだけで、約20gのタンパク質が摂取できます。
  • 昼食・夕食の例: 肉、魚、卵、大豆製品などを主菜に選べば、1食あたり20g前後は無理なく補えます。

3食をしっかり食べている上にプロテインを何杯もプラスすることは、健康維持の観点からは明らかな「過剰摂取」と言えます。

■ 5. 「不自然な加工タンパク質」を避け、自然な食品から選ぶポイント

手軽なプロテイン製品ですが、日常的に利用する際は賢い選択が求められます。

粉末プロテインやプロテインバーに含まれるタンパク質は、高度な加工によって抽出・濃縮されたものです。これらは急激に消化吸収されて血中アミノ酸濃度を急上昇させるため、自然な食品を噛んでゆっくり消化する場合に比べて肝臓への代謝負荷が大きくなります。また、人工甘味料や保存料などの添加物が多用されている製品もあり、腸内環境を乱す要因にもなり得ます。

日常のタンパク質補給は、「加工度の低い自然な食品」をベースにすることが肝臓を守る鉄則です。

  • 魚料理を積極的に選ぶ: 鮭、サバ、アジなどの魚には、抗炎症作用を持つ良質な脂質(DHA・EPA)が豊富に含まれており、脂肪肝の改善にもプラスに働きます。
  • 無糖のギリシャヨーグルトを活用する: 人工的にタンパク質を添加した飲料よりも、水分(ホエイ)を自然に切ってタンパク質を濃縮させた無糖ギリシャヨーグルトの方がおすすめです。余計な糖分や添加物を抑えながら安全に補給できます。
  • 基本はバランスの良い「和食スタイル」: 卵、豆腐や納豆などの大豆製品、鶏むね肉、魚などをバランスよく食卓に並べることが、肝臓に一番負担をかけない最良の方法です。特に鶏むね肉や魚介類には、肝臓の代謝を助けるBCAA(分岐鎖アミノ酸)やタウリンが豊富に含まれています。

■ 6. まとめ:健康のための習慣で肝臓を壊さないために

「体に良いはずだ」と信じて始めた習慣が、知らぬ間に肝臓を疲弊させてしまっては本末転倒です。

以下のような項目に心当たりがある方は、一度ご自身の肝臓の状態を専門的に確認してみることをお勧めします。

  • 健康診断でAST、ALT、γ-GTPの数値が基準値を超えている
  • プロテインドリンクや高タンパク食品を毎日のように何杯も摂取している
  • 筋肉痛とは違う、抜けない疲労感や倦怠感が続いている
  • 尿の色が濃いオレンジ色や茶色っぽく見えることがある
  • 過去に「脂肪肝」や「肝機能障害」を指摘されたことがある

神戸市西区のさいとう内科クリニックでは、詳細な血液検査や腹部超音波検査、肝臓の硬さを痛みを伴わずに測定できる「超音波エラストグラフィ検査」を用いて、肝臓の数値上昇が筋肉由来のものか、肝障害によるものかを精密に診断いたします。

プロテインの摂取習慣に不安を感じている方や、健診結果が気になっている方は、病態が進行する前の段階でどうぞお気軽にご相談ください。

神戸市西区や明石市、加古川市、三木市をはじめとする近隣エリアからの受診はもちろん、遠方にお住まいで通院が難しい方に向けた「オンライン事前相談」やお電話でのご相談も受け付けております。

この記事の監修・執筆者

さいとう内科クリニック
院長:斉藤 雅也 Masaya Saito

  • 日本内科学会認定医
  • 日本肝臓学会専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本超音波医学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
院長 斉藤雅也 Masaya Saito

神戸大学医学部附属病院等の最前線で長年消化器・肝臓内科の臨床と研究に従事。医学博士。 標準治療では回復が困難な進行した肝炎や肝硬変に対し、新たな選択肢としての「肝臓再生医療」にいち早く取り組む。また、肝硬変患者さまの中で合併症(潜在性肝性脳症)を有する割合を明らかにし、カルニチンによる潜在性肝性脳症の治療効果を世界で初めて報告するなど、国際的な英文医学誌への論文掲載実績も多数(代表論文:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224)。科学的根拠に基づいた高度な専門知識と精緻な診断で、患者様の肝臓を守るサポートを行っています。
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さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり)
電話
  • 電話:078-967-0019
  • 携帯電話:080-7097-5109
アクセス
当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。