- 2026年5月18日
肝硬変への再生医療——「肝移植しかない」と言われた進行期への新しいアプローチ

こんにちは。
神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。
肝硬変は、長年の炎症によって肝細胞が硬い線維組織(コラーゲン)に置き換わり、肝臓が岩のように硬くなった状態です。かつて肝硬変、特に症状が現れる「非代償性」の段階に至ると、根治には肝移植しか手段がないとされてきました。
しかし現在、再生医療の進歩により、硬くなった肝臓を細胞レベルで修復し、「残された肝機能を底上げする」ことで、日常生活の質(QOL)を改善できる可能性が見えてきました。本記事では、進行した肝硬変に対する再生医療の真価を深掘りします。
■ 肝硬変のステージと「再生医療が果たす役割」

肝臓の余力(肝予備能)は、Child-Pugh(チャイルド・ピュー)分類によってA・B・Cの3段階で評価されます。
代償性肝硬変(Child-Pugh A):
まだ明らかな合併症がない段階です。この時期に再生医療を行うことで、「非代償性(B・C)への進行を食い止める」ことが最大の目標となります。
非代償性肝硬変(Child-Pugh B・C):
腹水、黄疸、肝性脳症などの症状が現れた段階です。再生医療は、幹細胞が分泌する成長因子によって「肝細胞の合成能力(アルブミンなど)を復活させる」ことを目指します。
【専門医の視点:見えない脳症を見逃さない】
肝硬変患者様の約37.5%に、一見普通に見えても集中力が低下する「潜在性肝性脳症」が隠れていることを私は臨床研究で明らかにしました。これは交通事故等のリスクに直結します。当院では再生医療と並行し、肝疾患特異的QOL質問票(CLDQ)等を用いた精密なスクリーニングを行い、脳症の早期発見・改善に全力を注いでいます。(出典:Hepatol Res 2015; 45(9): 994-1003)
■ 幹細胞治療が「硬い肝臓」をどう変えるのか

点滴投与された幹細胞は、肝臓に到達すると以下の3つのフェーズでアプローチを開始します。
- 鎮火と洗浄(抗炎症): 肝臓内でくすぶり続ける炎症を抑え、線維化の進行を防ぎます。
- 線維の解体(抗線維化): 幹細胞が分泌する因子が硬くなったコラーゲン線維を分解。肝臓の「しなやかさ」を取り戻すよう働きかけます。
- 機能の再建(タンパク合成): 肝細胞の増殖を促し、アルブミンの製造や凝固能の正常化をサポートします。
【独自の併用療法:タウリン・カルニチンの力】
私は、事前の血清タウリン値が高いほど、L-カルニチン治療による潜在性肝性脳症の改善効果が高いことを世界に先駆けて報告しました。再生医療の効果を最大化するため、こうした栄養学的エビデンスに基づくアプローチを組み合わせるのが当院の独自プロトコルです。(出典:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224)
■ 「安全性」が治療の成否を分ける:当院のこだわり
進行した肝硬変の方は、血流が悪くなっていることが多く、投与する「幹細胞の質」が極めて重要です。
XF培地による完全無血清培養
従来の「自己血清」を用いる方法は品質にバラつきが出るリスクがありました。当院では「XF培地」を採用し、不純物を排除した最高品質の幹細胞を培養。血管塞栓等のリスクを極限まで抑えています。
エネルギー代謝の管理
肝がん治療(TACE等)の前後にエネルギー代謝が低下することが予後に直結することを私は論文で報告しています。再生医療においても、治療前から徹底した栄養・代謝管理を行うことで、安全かつ効果的な治療を実現します。(出典:J Gastroenterol 2012; 47(6): 704-14)
■ 肝移植との関係——再生医療は「希望のブリッジ」になる

肝移植は素晴らしい治療ですが、ドナー不足という高い壁があります。再生医療は以下の2つの側面で「希望」をもたらしてくれます。
移植へのブリッジ(橋渡し)
移植待機中に肝機能を維持・改善させることで、より良い体調で手術に臨めるようにします。
移植回避の可能性
早い段階から再生医療を開始することで、肝移植そのものが不要になる状態を目指します。
■ よくあるご質問

Q:腹水が溜まっていて苦しいのですが、再生医療で改善しますか?
A: 腹水の主な原因はアルブミンの不足です。幹細胞治療によって肝臓のアルブミン合成能力が向上すれば、腹水が自然に軽減していくことが期待できます。ただし、即効性は期待できません。半年から1年くらいかかることが多いです。
Q:肝硬変の治療中に再生医療を受けても大丈夫ですか?
A: はい。再生医療を標準治療と並行して行うことが、肝機能の改善に向けて相乗効果を発揮しやすいため推奨されます。特に、常日頃から栄養管理を徹底し、肝機能を高めておくことが、長期的な予後(生存率)の向上に繋がります。当院は栄養管理にも精通しており、診察時に肝臓に良い栄養指導も実施していますのでぜひ参考にしていただきたく思います。
Q:肝硬変が進むと「余命」が気になります。再生医療で寿命を延ばすことはできますか?
A: 肝硬変患者様の予後(寿命)を左右する大きな要因の一つに、実は「エネルギー代謝の状態」があります。私は過去の臨床研究で、治療前のエネルギー代謝(非蛋白呼吸商:npRQ)や栄養状態が、その後の生存率に直結することを明らかにしました。再生医療によって肝細胞を修復すると同時に、当院独自の栄養管理でこのエネルギー代謝を改善させることは、単に肝臓の数値を良くするだけでなく、長期的な「延命」に繋がる極めて重要なアプローチだと考えています。(出典:J Gastroenterol 2012; 47(10): 1134-1142)
■専門医からのメッセージ

「肝硬変はもう治らない」という言葉に、どうか絶望しないでください。
今の医学、そして再生医療は、硬くなった肝臓に対して直接アプローチする手段を手にしています。腹水や倦怠感、黄疸、脳症の不安から解放され、ご家族と笑顔で過ごす時間を取り戻す。私たちはそのために、最新の幹細胞治療と肝臓病専門医としての知見を肝臓病患者様に捧げます。
■肝硬変でお悩みの方へ——まずはご相談ください
当院では、Child-Pugh AからCの方まで幅広く、現在のデータに基づいた丁寧な診断と治療を行っています。また、オンライン事前相談も受け付けています。ご遠方の方も、まずはオンライン事前相談で第一歩を踏み出してみませんか。もしオンライン事前相談が難しいようでしたら、時間内に当院までお電話ください。院長の外来診療が落ち着きましたら、こちらから折り返させていただきます。決して諦めることなく、当院と共に、二人三脚で病気に立ち向かっていきましょう。
- 院長
- 斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology - 所在地
- 〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり) - 電話
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- 電話:078-967-0019
- 携帯電話:080-7097-5109
- アクセス
- 当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。
