• 2026年6月9日

脂肪肝は「遺伝」する?お酒を飲まないのに肝臓が悪くなる謎を解く『PNPLA3』遺伝子と最新知見

こんにちは。 神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

「お酒も飲まないし、太ってもいないのに、健康診断で脂肪肝と言われた」 日々の外来診療において、このようなご相談を受けることが非常に増えています。実は、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)や、そこから進行する脂肪肝炎(MASH)の発症には、生活習慣だけでなく、国や地域、そして「遺伝子」による明確な差があることが医学的に解明されてきています。今回は、脂肪肝になりやすい体質を決定づける遺伝子『PNPLA3』について、肝臓病専門医の視点から詳しく解説します。

■ 人種によって異なる脂肪肝のリスクと遺伝的背景

世界的な疫学データを見ると、アメリカの白人層やアフリカ系の人々に比べて、メキシコなどのヒスパニック系や、日本を含むアジア各国では、非アルコール性の脂肪肝患者が多いという興味深い事実があります。食生活や肥満度だけでは説明がつかないこの差の裏には、民族間に受け継がれてきた遺伝的な背景が隠されていました。

■ 脂肪肝炎(MASH)の鍵を握る「PNPLA3」遺伝子のメカニズム

2008年、国際医学雑誌『Nature Genetics』にて、肝臓に脂肪が沈着しやすく、かつ脂肪肝炎(MASH)へと進行しやすくなる決定的な遺伝子変異が報告されました(出典:Romeo S, et al. Nat Genet 2008; 40(12): 1461-1465)。それが「PNPLA3(パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有タンパク質3)」と呼ばれる遺伝子です。

PNPLA3は、主に肝細胞の表面にある脂肪滴(脂肪の塊)に存在し、本来は中性脂肪を分解する酵素(リパーゼ)として働きます。しかし、この遺伝子に特定の変異(I148M変異)が起こると、タンパク質が本来の分解機能を失い、肝細胞内に異常な中性脂肪が蓄積してしまいます。

この遺伝子には、大きく分けてCC型、CG型、GG型の3つの型が存在します。 ・CC型:野生型でありリスクが低い(正常) ・CG型:ヘテロ接合型であり中程度のリスク ・GG型:ホモ接合型であり最もリスクが高く、肝星細胞の活性化も促すため、脂肪肝炎や肝硬変へ急激に進行しやすい

ヒスパニック系や私たち日本人を含むアジア人は、このリスクの高い「G」を持つ割合が欧米人に比べて非常に高いことが分かっています。つまり、日本人はそもそも「遺伝的に脂肪肝になりやすく、重症化しやすい民族」と言えるのです。

■ 遺伝子を知り、代謝を守るという新たな予防医療

将来的には、血液検査などでこのPNPLA3の遺伝子型を調べることにより、自分がMASLDやMASHになりやすい体質なのかどうかを事前に見極め、個別化医療を行う時代が来るでしょう。

しかし、遺伝的にリスクが高いからといって諦める必要はありません。私は臨床研究において、肝臓のエネルギー代謝(npRQ)を良好な状態に維持することが、肝疾患患者様の長期的な生存率や予後に直結することを国際医学雑誌にて報告しています(出典:PLoS One 2013; 8: e55441. DOI: 10.1371/journal.pone.0055441)。 遺伝的体質を理解した上で、定期的な腹部エコー検査で肝臓の微細な変化を捉え、適切な食事や運動で代謝効率を維持していくことこそが、遺伝的リスクに打ち勝つ最大の防御策となります。

■ 脂肪肝・肝機能の異常が心配な方へ

さいとう内科クリニック(神戸市西区)では、以下の検査・診療を行っています。

・腹部エコー検査(脂肪肝、肝臓の線維化、肝腫瘍の精査)

・血液検査(肝機能・血糖値・HbA1c・インスリン分泌能)

・食事指導・生活習慣の改善サポート

「お酒を飲まないのに脂肪肝と言われた」「標準体型なのに肝臓の数値が高い」「将来の肝臓病リスクが心配」という方は、お気軽に当院までご相談ください。早期発見・早期治療が、あなたの肝臓と健康を守ります。

すでに進行した肝炎や肝硬変と診断された患者様は、食事運動療法や内服治療といった標準治療だけでは病態の進行を止められないことが多々あります。当院は、肝疾患の標準治療と再生医療(幹細胞点滴)の両方ともに熟練しています。また、当院の再生医療は、他の疾患に対する再生医療は一切行わず、肝疾患に特化しています。当院でこれまで再生医療を受けられた患者様は、20名を超えており、当院が国内の肝臓再生医療をリードしていると自負しています。幹細胞点滴を行った後、肝臓の数値が改善するだけでなく、長年苦しまれていた倦怠感や腹水、黄疸といった自覚症状の改善が得られるケースが多数みられており、確かな実績が得られてきています。また、当院では「幹細胞点滴をして終わり」ではなく、治療後のきめ細やかなアフターフォローにも力を入れており、患者様から大変ありがたいご評価をいただいております。これからも、日本全国におられる肝臓病で苦しむ患者様にとって、心から寄り添い、希望の光となる医療を引き続き実践してまいります。オンライン事前相談も受け付けておりますので、遠方の方もお気軽にお問い合わせください。パソコンやスマホの操作に不慣れな方は、診療時間内であれば、お電話でお問い合わせいただけます。外来診療が落ち着きましたら、こちらからお電話をかけ直させていただきます。

この記事の監修・執筆者

さいとう内科クリニック
院長:斉藤 雅也 Masaya Saito

  • 日本内科学会認定医
  • 日本肝臓学会専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本超音波医学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
院長 斉藤雅也 Masaya Saito

神戸大学医学部附属病院等の最前線で長年消化器・肝臓内科の臨床と研究に従事。医学博士。 標準治療では回復が困難な進行した肝炎や肝硬変に対し、新たな選択肢としての「肝臓再生医療」にいち早く取り組む。また、肝硬変患者さまの中で合併症(潜在性肝性脳症)を有する割合を明らかにし、カルニチンによる潜在性肝性脳症の治療効果を世界で初めて報告するなど、国際的な英文医学誌への論文掲載実績も多数(代表論文:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224)。科学的根拠に基づいた高度な専門知識と精緻な診断で、患者様の肝臓を守るサポートを行っています。
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さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり)
電話
  • 電話:078-967-0019
  • 携帯電話:080-7097-5109
アクセス
当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。