• 2026年8月19日

【肝臓病専門医が解説】「脂肪肝」は命に関わる万病の元!「太っているだけ」と放置するのは危険な理由

こんにちは。

神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

健康診断の結果を見て、「体重が少し増えたな」「脂肪肝と言われたけれど、自覚症状もないし、もう少し様子を見よう」と放置していませんか?

実は、脂肪肝は単に「少し太っている」というだけの問題ではありません。心筋梗塞、脳卒中、そしてがんなど、全身の命に関わる病気と深く関わっていることが、近年の研究で明らかになってきました。

今回は、肝臓病専門医の視点から、脂肪肝が全身の健康を脅かすメカニズムと、最新の対応策について詳しく解説します。

■ 1. 脂肪肝は「沈黙の爆弾」:なぜ今、注目されているのか

20年以上前、私が内科医として臨床現場に出た頃、脂肪肝はエコー検査で「肝臓が少し白い(肝腎コントラスト)」程度の、比較的リスクが低い所見として扱われていました。当時の主役はB型肝炎やC型肝炎といった、肝硬変・肝がんに直結するウイルス性肝疾患でした。

しかし、抗ウイルス薬の進歩によりウイルス性肝炎の脅威がピークを越えた今、急増しているのが「脂肪肝」です。食の欧米化や肥満の増加に伴い、有病率は右肩上がりで上昇しています。さらに、かつては「お酒を飲む人」の病気というイメージがありましたが、現在では「お酒を飲まない人」でも脂肪肝から肝硬変・肝がんへと進行するケースが珍しくありません。

そのため、2023年にはより病態の本質を捉えた「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD:マッスルディー)」という名称へ変更されました。これは、脂肪肝が単なる肝臓の脂肪蓄積ではなく、全身の「代謝障害」であることを示唆しています。

■ 2. 脂肪肝が招く全身への深刻なリスク

最新の疫学データにより、脂肪肝は肝臓の中だけに留まらない、全身疾患であることが分かってきました。

心血管イベントの発症リスクの上昇

国内外の大規模研究において、脂肪肝があることで心筋梗塞や脳卒中といった心血管イベントを発症するリスクが約1.45倍に上昇することが報告されています。

がん発生率の増加

肝がんへの進行リスクはもちろん、それ以外のがんリスクも高まることが分かっています。特に大腸がんのリスクは約1.64倍とされ、他にも膵がん・乳がん・前立腺がんなど、多岐にわたるがんの発生に関与している可能性が示されています。

【肝臓病専門医の視点:体重より内臓脂肪の量】

私の臨床研究では、見た目が太っていなくても内臓脂肪が蓄積している「隠れ肥満」の方は、将来的な生存率や肝がん治療後の予後に悪影響を及ぼすことを明らかにしています。「体重が標準だから大丈夫」と過信せず、肝臓の中身(内臓脂肪)をキレイに保つ生活習慣を意識することが、健康長寿への確実な近道です。

※出典:

■ 3. なぜ脂肪肝が「万病のもと」になるのか?

では、なぜ肝臓に脂肪がたまるだけで、心臓や脳、あるいは他のがんまでリスクが高まるのでしょうか。その鍵は「慢性炎症」にあります。

過剰な脂肪酸が肝細胞にたまると、細胞内のエネルギー工場であるミトコンドリアが傷つき、炎症物質(炎症性サイトカイン)が放出されます。これが引き金となり、体内では慢性的な炎症状態が続きます。

この慢性炎症が血管のしなやかさを奪い、高血圧を招き、インスリンの効きを悪くして糖尿病を誘発します。さらには脂質異常症を悪化させ、全身の細胞をがん化しやすい環境へと変えてしまうのです。つまり、脂肪肝は「全身の代謝バランスが崩れている」というシグナルなのです。

■ 4. 今日から始める!脂肪肝対策の基本と「ケトン食」という選択肢

脂肪肝を改善する基本は、やはり適切な体重管理です。しかし、「ただ食べる量を減らせばいい」という単純なものではありません。

生活習慣の基本

過度な糖質依存(甘いお菓子やジュース、過剰な炭水化物)を断ち、和食中心のバランスの良い食事を心がけましょう。また、筋肉量を維持するための有酸素運動とレジスタンス運動(筋トレ)の組み合わせが不可欠です。

最新のアプローチ「ケトン食療法」

より代謝を整えるアプローチとして「ケトン食療法」が注目されています。これは、糖質をエネルギー源とする代謝から、脂肪を燃焼させてエネルギーを作る代謝へ切り替える食事法です。脂肪肝の状態では、体は脂肪燃焼のスイッチが入りにくくなっています。ケトン食を取り入れることで体内でケトン体が作られやすくなり、肝臓にたまった脂肪を効率的に燃焼させ、炎症を抑える可能性が海外の研究でも示唆されています。

【肝臓病専門医の深掘り:筋肉という第2の代謝工場を活かす】

肝臓を休ませ、代謝を改善させるためには「筋肉」の助けを借りることが不可欠です。実際に私は、BCAA(分岐鎖アミノ酸)を補給し筋肉の代謝をサポートすることで、全身のエネルギー代謝の状態が有意に維持・改善することを臨床研究で実証しています。タンパク質をしっかり摂り、スクワット等で筋肉を維持することは、科学的にも極めて合理的な肝臓ケアなのです。

※出典:

よくあるご質問(Q&A)

Q1. お酒を一滴も飲まないのですが、脂肪肝になることはありますか?

A1. はい、十分にあります。近年増加しているMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)は、アルコールではなく「代謝の異常」が原因です。特に糖質(甘いお菓子やジュース、果糖など)の摂り過ぎや運動不足が、肝臓に脂肪を溜め込む大きな要因となります。

Q2. ケトン食療法は誰でも自己流で始めて良いのでしょうか?

A2. 肝臓病専門医としては、自己流で行うことはおすすめしません。極端な糖質制限や脂質に偏った食事は、かえって肝臓や腎臓に負担をかけてしまうケース(低栄養性脂肪肝など)があります。必ず専門医の指導のもと、ご自身の血液データに合わせて安全な範囲で行うようにしてください。

Q3. 脂肪肝を改善するには、どのような運動が効果的ですか?

A3. ウォーキングなどの少し汗ばむ程度の有酸素運動(1日30分程度)に加えて、太ももなどの大きな筋肉を鍛える「スクワット」などの自重筋トレが非常に効果的です。筋肉量を増やすことで基礎代謝が上がり、肝臓の脂肪が燃えやすい体になります。

Q4. 健診で「脂肪肝」と言われたのですが、何科を受診すべきですか?

A4. 消化器内科、あるいは「肝臓病専門医」のいる医療機関をおすすめします。一般的な健康診断の数値(ASTやALTなど)だけでなく、腹部超音波(エコー)検査や特殊な血清マーカーなどを用いて、肝臓の「脂肪のつき具合」や「硬さ(線維化)」を精密に評価できる専門医での受診が確実です。

Q5. 脂肪肝を放置して肝硬変まで進んでしまった場合、もう治療法はないのでしょうか?

A5. 従来の標準治療では、一度硬くなった肝臓の組織(線維化)を元に戻すことは困難とされていました。しかし当院では、患者様ご自身のお尻の脂肪組織から幹細胞を抽出・培養して体内に戻す「肝臓再生医療(幹細胞治療)」という最先端の治療法をご用意しております。幹細胞の持つ抗炎症作用や組織修復作用により、肝機能の改善や肝線維化の進行抑制を目指すことが可能です。

まとめ——諦めない肝臓再生医療という選択肢

「健診の結果、少し肝臓の数値が悪いだけだから」と、今の状態を「様子見」で済ませてしまうのは非常に危険です。脂肪肝は、あなたの体が全身の代謝バランスを崩しかけていると発している、大切なSOSサインです。

生活習慣の見直しは、早ければ早いほど、その後の人生の健康寿命を大きく左右します。もし、生活習慣を改善しているにも関わらず肝臓の数値が良くならない場合、すでに肝臓が硬くなる「線維化(肝硬変)」へと進行している可能性もあります。

当院では、単なる血液検査上の数値管理にとどまらず、患者様一人ひとりの代謝状態を深く分析した上で、医学的根拠に基づいた指導を行っております。また、標準治療だけでは改善が難しい進行した肝硬変に対しては、患者様ご自身の細胞を用いた「肝臓再生医療(自己脂肪由来幹細胞療法)」という新たな治療選択肢もご提案しています。幹細胞が肝臓の慢性炎症を抑え、線維化の進展抑制・修復を促す最先端のアプローチです。

「自分の脂肪肝はどの程度深刻なのか?」「どう改善すべきか?」とお悩みの方は、どうぞ一人で抱え込まず、肝臓の専門家である当院へご相談ください。

遠方にお住まいで通院が難しい方のために、自宅にいながらスマホで受診できるオンライン事前相談(Curon)の体制を整えております。また、インターネットの操作が苦手な方は、当院まで診療時間内にお電話をいただいても構いません。院長の外来診療が落ち着きましたら、こちらからお電話をかけ直させていただきます。

まずは現状を正しく知ることから、新しい健康習慣を一緒に作り上げていきましょう。

この記事の監修・執筆者

さいとう内科クリニック
院長:斉藤 雅也 Masaya Saito

  • 日本内科学会認定医
  • 日本肝臓学会専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本超音波医学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
院長 斉藤雅也 Masaya Saito

神戸大学医学部附属病院等の最前線で長年消化器・肝臓内科の臨床と研究に従事。医学博士。 標準治療では回復が困難な進行した肝炎や肝硬変に対し、新たな選択肢としての「肝臓再生医療」にいち早く取り組む。また、肝硬変患者さまの中で合併症(潜在性肝性脳症)を有する割合を明らかにし、カルニチンによる潜在性肝性脳症の治療効果を世界で初めて報告するなど、国際的な英文医学誌への論文掲載実績も多数(代表論文:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224)。科学的根拠に基づいた高度な専門知識と精緻な診断で、患者様の肝臓を守るサポートを行っています。
≫ 詳しい経歴や全研究実績はこちら

さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり)
電話
  • 電話:078-967-0019
  • 携帯電話:080-7097-5109
アクセス
当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。