- 2026年10月27日
【肝臓病専門医が解説】年齢のせいで見誤らない!新しい肝臓の指標「FIB-3」と肝硬変のその先

こんにちは。
神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。
「健康診断でFIB-4インデックスが高いと言われたけれど、本当に肝臓が悪くなっているのだろうか」
外来でこのようなご不安を抱えてご相談に来られる方が増えています。
血液検査の数値から肝臓の硬さ(線維化)を推定する「FIB-4(フィブフォー)インデックス」は、現在多くの医療機関でスクリーニングとして活用されています。当ブログでも以前、その計算方法と読み方をご紹介しました。
しかし、FIB-4インデックスにはひとつの大きな弱点があります。それは、計算式に「年齢」が組み込まれているため、肝臓自体に問題がなくても、ご高齢になるほど自動的に数値が高く出やすくなってしまう点です。そのため、70代や80代の方では「要精密検査」と判定されても、実際には肝臓の線維化が全く進んでいないというケースが少なくありません。
この年齢による偏りを補うために日本で新しく開発されたのが、「FIB-3(フィブスリー)インデックス」という指標です。今回は、肝臓専門医の視点から、FIB-3インデックスの仕組みと活用法、そして数値が高かった際の次なるステップや再生医療の選択肢について詳しく解説いたします。
■ 1. 年齢に左右されない新指標「FIB-3インデックス」とは

FIB-3インデックスは、2022年に日本の研究グループが発表した新しい肝線維化の予測スコアです。肝生検(針を刺して組織を採る検査)によって線維化の程度が確定している脂肪肝患者様のデータをもとに開発されました。
最大の特長は、計算式に年齢を含まないことです。使用するデータは、一般的な健診で測定される「AST」「ALT」「血小板数」の3項目のみです。
高齢の方でも若い方と同じ基準で評価が可能
年齢というゲタを履かせないため、純粋な肝臓のダメージを反映しやすくなります。60歳以上の方を対象とした研究では、進行した線維化(ステージF3以上)を正確に分類できた割合が、FIB-4の約53%に対し、FIB-3では約65%と高い精度を示しました。
数値がそのまま線維化ステージの目安に
FIB-3の計算結果は、肝臓の線維化ステージ(F0〜F4)に近似するよう設計されており、直感的に進行度を把握しやすいというメリットがあります。
現在では、脂肪肝だけでなくC型肝炎の患者様や、職場の定期健診、肝がんの手術後など、幅広い場面での有用性が報告され、研究が進められています。
■ 2. 実際にFIB-3を計算してみましょう

FIB-3の計算式は以下の通りです。lnは自然対数を表し、スマートフォンの電卓機能(横向き表示)などで計算が可能です。
| FIB-3 = 5 × ln(AST) − 2 × ln(ALT) − 0.18 × 血小板数(万/μL)− 5 |
注意点として、血小板数は健診結果の「万/μL」の数字をそのまま当てはめます(例:22.0万/μLであれば22.0と入力)。
年齢や数値の異なる3名の架空のデータを用いて、FIB-4とFIB-3の違いを比較してみましょう。
| 項目 | Aさん | Bさん | Cさん |
| 年齢 | 45歳 | 62歳 | 78歳 |
| AST(U/L) | 22 | 33 | 25 |
| ALT(U/L) | 25 | 28 | 22 |
| 血小板数(万/μL) | 25.0 | 13.0 | 22.0 |
| FIB-4インデックス | 0.79 | 2.97 | 1.89 |
| FIB-3インデックス | -0.48 | 3.48 | 0.95 |
・Aさん(45歳): どちらの指標も低く、線維化の心配は小さいと考えられます。
・Bさん(62歳): どちらの指標も高値を示しており、早急に専門医による精密検査を受けるべき状態です。
・Cさん(78歳): 肝機能数値はすべて基準値内ですが、78歳という年齢要因によってFIB-4が「要精査(1.3以上)」の範囲に引き上げられています。一方、年齢を除外したFIB-3では低めの値(0.95)にとどまっており、線維化はそれほど進んでいない可能性が高いことが読み取れます。
■ 3. FIB-3の読み方の注意点と肝臓病専門医による精密検査

FIB-3は線維化のステージ(F0〜F4)に近い数値が出るよう設計されているため、数値が大きいほど線維化が進行している可能性が高いと判断できます。ただし、まだ新しい指標であるため、診療ガイドライン等で明確なカットオフ値(判定の区切り)が完全に統一されているわけではありません。
また、急性肝炎や大量飲酒の直後、血液疾患で血小板が減少している方などでは、FIB-4と同様に実際の状態と数値が乖離することがあります。
私自身、長年にわたり患者様のお体に負担をかけない「非侵襲的な血液マーカーを用いた肝線維化予測モデル」の研究に取り組んでまいりました。
[院長執筆論文]
Serum NX-DCP as a New Noninvasive Model to Predict Significant Liver Fibrosis in Chronic Hepatitis C
日常の診療において大切なのは、ひとつの計算式や指標だけで全てを決めつけないことです。FIB-4やFIB-3はあくまで専門医へ相談するきっかけをつかむためのスクリーニングツールです。
当院では、指標に異常が見られた患者様に対し、より精度の高い以下の検査を組み合わせて確実な診断を行っています。
・詳細な血液検査: 肝炎ウイルスなど、線維化を引き起こしている根本原因を特定します。
・腹部超音波(エコー)検査: 肝臓の形状や表面の凹凸、脂肪の蓄積具合、脾臓の腫れ、腹水の有無などを画像で確認します。
・超音波エラストグラフィ検査: 特殊な超音波を用いて、体の外から肝臓の「実際の硬さ」を直接数値化・カラーマップ表示する検査です。痛みは全くなく、数分で完了します。
Cさんのように「FIB-4は高いけれどFIB-3は低い」と判断に迷うケースこそ、超音波エラストグラフィで実際の肝臓の硬さを直接測ることで、明確な答えを導き出すことができます。
■ 4. 肝硬変と診断された方へ:再生医療と合併症の管理

自己脂肪由来幹細胞治療(肝臓再生医療)という治療選択肢
精密検査の結果、実際に肝臓の線維化が進行し「肝硬変」の段階に入っていると診断された場合でも、決して諦める必要はありません。
肝硬変はご高齢の方に多く見られる疾患ですが、従来の標準治療では、不足した栄養素を補う対症療法が中心となり、硬くなった肝臓そのものを修復する手段は非常に限られていました。
そこで当院では、厚生労働省に再生医療等提供計画を提出・受理された医療機関として、「自己脂肪由来幹細胞治療(肝臓再生医療・自由診療)」をご提案しております。
患者様ご自身のお尻の皮下脂肪から少量の脂肪組織を採取し、そこから抽出した幹細胞を専門の施設で安全に培養・増殖させ、点滴によって体内に戻す治療法です。血管を通じて肝臓に集まった幹細胞は、慢性的な炎症を鎮め、線維化の進展を抑えるとともに、残された元気な肝細胞が働きやすい環境を整えます。ご自身の細胞を使用するため、拒絶反応のリスクが極めて低いのが大きな特徴です。
1回の脂肪採取(局所麻酔下の小切開)で、約6回分の点滴に使用できる幹細胞を凍結保管することが可能です。2回目以降の幹細胞点滴の際は、保管した細胞から約8週間かけて新たに培養を行うため、再度脂肪を採取する負担はありません。
再生医療は、残された肝臓の「自ら回復しようとする力」を強力に支える治療です。腹水や黄疸などが出現している非代償性肝硬変(Child-Pugh分類Cを含む)の患者様にも治療適応がありますが、活動性の悪性腫瘍(治療できない肝がんなど)がある場合は治療対象外となります。また、当院まで通院できる体力がない方も治療対象外となります(ご家族の介助のもとで通院できる方は除く)。肝臓に少しでも体力が残っている段階のほうが治療効果を引き出しやすいため、病状が進行しすぎる前にご相談いただくことが重要です。
肝硬変の合併症:院長による肝性脳症への対応
肝硬変が進行すると、血中アンモニアが上昇し、記憶力低下・睡眠障害・集中力の低下といった症状が現れる「肝性脳症」のリスクが高まります。患者様のQOL(生活の質)を守るため、当院では肝性脳症の予防と治療にも積極的に取り組んでいます。
院長は肝臓病専門医として、肝硬変患者様におけるエルカルニチン(L-カルニチン)の臨床的有効性について研究を重ねてまいりました。
微小肝性脳症は、見た目には症状がないものの、集中力や反応の速さが低下している状態です。車の運転能力が落ち、交通事故のリスクも高まります。放置すると、3年以内に半数以上の方が、はっきりした肝性脳症へ進むとされています。
当院院長が神戸大学で行った研究では、肝硬変の患者さん64名に、8種類の検査からなる神経心理検査(NPテスト)を受けていただきました。その結果、37.5%にあたる24名に微小肝性脳症が見つかりました。この24名にエルカルニチン(1日1,800mg)を3か月間内服していただいたところ、45.8%にあたる11名で脳症が改善しました。
特に改善が目立ったのは、数字と文字を順番につなぐ検査(NCT-B)と、反応の速さをみる検査(RTT-C)です。脳症が改善した方では、NCT-Bの成績が36.4%、RTT-Cの成績が54.5%の方で良くなりました。一方、改善しなかった方では、それぞれ0%と7.7%にとどまりました。
では、なぜ効果が出る方と出にくい方がいるのでしょうか。その鍵となったのが、血液中のタウリンというアミノ酸です。治療前のタウリン値が高い方ほど効果が出やすい傾向がありました。48.5 nmol/mLを基準にすると、効果が出にくい方の9割以上を治療前に見分けることができました。
エルカルニチンは、細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアの働きを助ける成分です。一方、タウリンにはミトコンドリアそのものを守る働きがあります。ミトコンドリアが元気な方ほど、エルカルニチンが取り込まれやすいと考えられます。今後は、エルカルニチンとタウリンを組み合わせた治療も期待されます。この研究成果は、Saito M, et al. Hepatol Res 2016; 46: 215-224に掲載されており、エルカルニチンが微小肝性脳症の治療において重要な役割を果たすことを科学的に実証したものです。
当院では、エルカルニチンをラクツロース、リファキシミン、BCAAといった既存の治療薬と組み合わせることで、より包括的・個別化された肝性脳症の治療・再発予防に取り組んでいます。
※出典:
Serum level of taurine would be associated with the amelioration of minimal hepatic encephalopathy in cirrhotic patients
もの忘れ・睡眠リズムの乱れ・日中の強い眠気など、肝性脳症を疑う症状がある方、または肝硬変と診断されている方は、こうした合併症の管理についても合わせてご相談ください。
■ 5. 費用・リスク・届出に関する情報
本治療は公的医療保険が適用されない自由診療となります。
| 項目 | 費用(税込) |
| 初回(脂肪採取+培養+1回目の幹細胞点滴) | 3,300,000円 |
| 2回目以降の幹細胞点滴(1回あたり) | 1,100,000円 |
| 照射濃厚血小板10単位(採取前に輸血が必要な場合) | 220,000円 |
| 新鮮凍結血漿6単位(採取前に輸血が必要な場合) | 220,000円 |
主なリスクや副作用: 脂肪採取部位の痛み・内出血・感染、点滴時の発熱やアレルギー反応などが稀に起こる可能性があります。また、治療効果には個人差があり、すべての方に同一の改善をお約束するものではありません。
【届出情報】
| ・治療名:自己脂肪由来幹細胞を用いた肝機能障害治療 ・再生医療等提供計画番号:PB5230080 ・審査委員会:日本再生医療協会 特定認定再生医療等委員会(認定番号 NA8200001) ・細胞培養施設:CZEN CLINIC Cell Processing Center(施設番号 FC3220189) ・提供機関:医療法人社団好也会 さいとう内科クリニック(管理者 斉藤雅也) |
【自由診療に関する法定明示事項】
当院では、肝炎や肝硬変、線維化が進行してしまった重症の肝硬変の患者様に対し、選択肢の一つとして「自己脂肪由来幹細胞治療(肝臓再生医療)」を提供しております。本治療は国内未承認の再生医療技術であり、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき厚生労働省に再生医療等提供計画を提出・受理された計画のもとで実施しています。
■ 年齢に惑わされず、ご自身の肝臓の「本当の硬さ」を知るために

FIB-4インデックスは手軽で便利な指標ですが、ご高齢の方では過剰に高く出やすいという弱点があります。年齢という要素を排除したFIB-3インデックスを併用することで、ご自身の肝臓のリスクをより冷静に、正しく見積もることができるようになります。
お手元に健康診断の結果がある方は、ぜひ「AST」「ALT」「血小板数」の数値を拾い出し、ご自身のFIB-3を計算してみてください。そして、もし数値が高く不安を感じられた場合は、お一人で悩まずに専門医による超音波エラストグラフィ検査などの精密検査をご検討ください。
当院では、肝臓病専門医である院長が、詳細な血液検査や腹部超音波検査、超音波エラストグラフィ検査による的確な診断をはじめ、新しい肝臓再生医療の適応判断から治療後のフォローまでを一貫してサポートしております。そして院長は、標準治療と再生医療の両方ともに精通しており、豊富な診療実績もあります。どうぞお気軽にご相談ください。
神戸市西区をはじめ、明石市、加古川市、三木市など近隣にお住まいの方の対面診療はもちろんのこと、日本全国、海外にお住まいのご遠方の患者様やご家族のため、自宅にいながらスマートフォンでご相談いただける「オンライン事前相談」を実施しております。また、インターネットやスマートフォンの操作が難しい方は、診療時間内に当院までお電話にてお問い合わせいただいても構いません。院長の外来診療が落ち着きましたら、こちらからお電話をかけ直させていただきます。
医療は日々進歩していますので、他院で治療ができないと言われた肝硬変患者様も、決して諦めないでください。
また、ご自身や大切なご家族の肝臓を守るために、
「FIB-3インデックスが高いと言われた」
「肝硬変になっていそうで心配」
という方も、どうぞ一人で不安を抱え込むことなく、お気軽にお声がけください。当院がサポートしますので、一緒に病気に立ち向かっていきましょう。
- 院長
- 斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology - 所在地
- 〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり) - 電話
-
- 電話:078-967-0019
- 携帯電話:080-7097-5109
- アクセス
- 当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。
