• 2026年5月25日

肝硬変でお腹に水が溜まる「腹水」の原因と、利尿剤に頼らない根本的な肝機能回復へのアプローチ

神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

肝硬変が進行した際、多くの患者様を悩ませる症状の一つが「腹水(ふくすい)」です。お腹が張って苦しい、食欲がわかない、息切れがするといった症状は、日常生活の質(QOL)を著しく低下させます。

一般的には利尿剤による治療が行われますが、「薬を飲んでもなかなか水が抜けない」「副作用でふらつきが出る」といった限界を感じている方も少なくありません。今回は、肝臓病専門医の視点から、腹水が発生する医学的メカニズムと、利尿剤の先にある「根本的な回復」へのアプローチについてお伝えします。

肝硬変でなぜ「腹水」が溜まるのか?

腹水が溜まる原因は、主に以下の3つのメカニズムが複雑に絡み合っています。

門脈圧亢進(もんみゃくあつこうしん)

肝臓が線維化してガチガチに硬くなると、腸から肝臓へ血液を送る太い血管「門脈」の流れが悪くなり、大渋滞を起こします。行き場を失って圧力が高まった血液から、水分が血管の壁を通り抜けてお腹の空間(腹腔)に染み出してしまいます。

アルブミン不足(低蛋白血症)

肝臓は、血管の中に水分を保持する「スポンジ」のような役割を持つ「アルブミン」という蛋白質を作っています。肝機能が低下してこのアルブミンが不足すると、血管内に水分を留めておく力が弱まり、さらに水分が外へ漏れ出してしまいます。

塩分と水分の調整不全(腎臓の誤作動)

血管から水分が漏れ出すと、体内を巡る血液の量が減ってしまいます。すると腎臓は「体内の水分が足りない」と勘違いし、尿として出すはずの塩分や水分を過剰に体に溜め込もうとします。これがさらなる腹水の増加を招く悪循環となります。

対症療法(利尿剤)の限界とリスク

現在、腹水の標準治療は「利尿剤」で強制的に尿として水分を排出させることです。しかし、これはあくまで「溜まった水を出す」という対症療法に過ぎません。

血管内の水分が不足している状態で無理に利尿剤を使うと、腎臓への血流が極端に減少し、長期的には以下のような深刻なリスクを伴います。

・腎機能の低下(肝腎症候群という重篤な状態への移行)
・電解質異常(ナトリウムやカリウムのバランスが崩れ、ふらつきや筋肉のけいれん、意識障害の原因に)
・難治性腹水(薬が全く効かなくなる状態)

根本的な回復への挑戦:肝臓再生医療(幹細胞治療)

「利尿剤を増やしても効果が薄れてきた」「これ以上、今の治療では打つ手がない」と告げられた患者様にとって、新たな希望となり得るのが「肝臓再生医療」です。

当院で行っている幹細胞を用いた再生医療は、対症療法ではなく、肝臓の環境そのものを変えることを目的としています。

幹細胞が肝臓に働きかけるメカニズム

患者様ご自身のお尻の脂肪から抽出・培養した幹細胞を点滴で投与すると、血液に乗ってダメージを受けた肝臓へと集中的に到達します(ホーミング効果)。そこで幹細胞は以下の2つの重要な働きをします。

1.抗炎症作用と線維化の抑制

幹細胞は、自らが新しい肝細胞になるだけでなく、周囲に多彩な成長因子(サイトカイン)を分泌します。これが肝臓で起きている慢性的な炎症を強力に鎮め、さらに肝臓を硬くさせている原因(線維化)を分解するスイッチを入れる働き(パラクライン効果)が期待できます。

2.肝機能(アルブミン合成能)のサポート

炎症が治まり、肝細胞の環境が改善されることで、低下していたアルブミンを合成する力の回復を目指します。血中のアルブミン値が安定すれば、血管内に水分を留めるスポンジの力が戻り、結果として「腹水が溜まりにくい体」へと根本から近づくことができます。

肝臓病専門医の視点:肝硬変の合併症管理

肝硬変の進行を食い止めるには、多角的なアプローチが必要です。当院の院長は、肝硬変の合併症である肝性脳症の研究において、血清タウリン値が治療効果に大きく関与することを報告しています。

(出典:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224

こうしたアミノ酸や蛋白質の代謝に関する専門的な知見に基づき、再生医療だけでなく、低下した肝機能を補う緻密な栄養状態の管理も含めたトータルな肝臓ケアを提供しています。

まとめ:腹水に悩む日々を終わらせるために

腹水は、肝臓が発している非常に強い「SOS」です。利尿剤でその場をしのぐだけでなく、「なぜ水が溜まるのか」という根本原因である肝機能そのものを見直す時期に来ているのかもしれません。

再生医療は、これまでの標準治療では「限界」とされていた領域に対し、細胞レベルからの回復を目指す新しい治療法です。お腹の張りが苦しくて、もうダメだと諦めかけている方は、標準治療のみで判断して決して諦めないでください。当院は、肝臓病に特化した再生医療を実践しており、症例数も多く、国内でリードしています。決して希望を捨てることなく、まずは当院にご相談ください。

今の治療に「限界」を感じて諦めていませんか?

日々の診療の中で、「これ以上、今の標準治療だけでは肝機能を回復させることが難しい」と告げられ、流れに身を任せて諦めけている患者様を数多く診てきました。

しかし、まだできることは残されていると思います。

さいとう内科クリニックでは、標準治療ではカバーしきれない進行した肝炎・肝硬変の患者様を少しでもサポートしたいという強い思いから、新たな選択肢として「幹細胞を用いた肝臓再生医療」を提供しています。 「もう打つ手がないのだろうか」と一人で抱え込まず、まずは当院にご相談ください。遠方の方やご来院が難しい方でも、ご自宅からお話しいただける「オンライン事前相談」を受け付けております。また、お電話でも相談を受け付けておりますのでお気軽にお問い合わせください。外来診療がひと段落しましたら、再度かけ直さ

この記事の監修・執筆者

さいとう内科クリニック
院長:斉藤 雅也 Masaya Saito

  • 日本内科学会認定医
  • 日本肝臓学会専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本超音波医学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
院長 斉藤雅也 Masaya Saito

神戸大学医学部附属病院等の最前線で長年消化器・肝臓内科の臨床と研究に従事。医学博士。 標準治療では回復が困難な進行した肝炎や肝硬変に対し、新たな選択肢としての「肝臓再生医療」にいち早く取り組む。また、肝硬変患者さまの中で合併症(潜在性肝性脳症)を有する割合を明らかにし、カルニチンによる潜在性肝性脳症の治療効果を世界で初めて報告するなど、国際的な英文医学誌への論文掲載実績も多数(代表論文:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224)。科学的根拠に基づいた高度な専門知識と精緻な診断で、患者様の肝臓を守るサポートを行っています。
≫ 詳しい経歴や全研究実績はこちら

さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり)
電話
  • 電話:078-967-0019
  • 携帯電話:080-7097-5109
アクセス
当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。