• 2026年6月2日

プロテインやサプリメントで肝機能が悪化?肝臓病専門医が明かす、良かれと思った習慣が肝臓の負担になる理由とALT上昇の真相

こんにちは。

神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

「健康診断でALTが高いと言われたけど、思い当たることといえばプロテインをよく飲んでいるくらい…」

このようなご相談が増えています。運動習慣や健康意識が高い方ほど、プロテインやサプリメントを積極的に摂取されることが多く、それが知らず知らずのうちに肝臓に負担をかけているケースがあります。今回は、ALT上昇の真相と、肝臓に優しいサプリメントの選び方について専門医の立場から詳しく解説します。

■ 1.「健康のため」が逆効果に!良かれと思った習慣が肝臓を傷める理由

筋トレやスポーツを楽しむ方にとって、プロテインは身近な栄養補助食品です。しかし、1日の適切なたんぱく質摂取量は「体重×0.8〜1g」が目安とされており、これを大幅に超えた摂取は肝臓や腎臓に過剰な負担をかけます。

過剰なたんぱく質は体内で分解される過程で「アンモニア」を生成します。アンモニアは有毒であるため、肝臓が「尿素サイクル」という仕組みで無毒化します。プロテインを大量に摂取するほど、この解毒作業が肝臓にとって大きな仕事量となるのです。

【肝臓病専門医の視点:プロテイン過剰摂取と肝機能の関係】

特に注意が必要なのは、すでに肝機能が低下している方や脂肪肝の方です。このような方では、健康な方以上にプロテインの代謝負荷が大きく、ALT・ASTの上昇につながりやすいと言えます。「体に良いもの」であっても、量と自分の体の状態に合わせた摂取が不可欠です。

【肝臓病専門医の深掘り:アンモニアの解毒とカルニチン補充】

私は臨床研究において、進行した肝臓病におけるアンモニアの解毒代謝や、それに伴う合併症(潜在性肝性脳症)の治療にL-カルニチン補充療法が極めて有効であることを世界に先駆けて報告しています。プロテインの過剰摂取によって体内で処理しきれなくなったアンモニアは、脳や全身に悪影響を及ぼすリスクがあります。だからこそ、処理を担う肝臓のキャパシティ(処理能力)を専門的に評価することが重要なのです。(出典:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224

■ 2.ALT(GPT)が上昇する本当の原因

ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)は、肝細胞が傷ついたときに血中に放出される酵素です。基準値は30U/L以下とされており、この値が高いほど肝臓のダメージが大きいことを示します。

サプリメントやプロテインによるALT上昇のメカニズムは主に以下の通りです。

・成分による直接的な肝細胞障害

・過剰なたんぱく質代謝を迫られることによる肝臓への負荷増大

・複数成分の相互作用による予期せぬ肝毒性

【臨床知見:ALT16以上で隠れ脂肪肝のリスク】

私の外来では、ALTが基準値内であっても16U/L以上の方に超音波検査を行うと、脂肪肝が見つかるケースが少なくありません。また、私が行った臨床研究において、見た目は痩せていても内臓脂肪が蓄積している「隠れ肥満」の方は、長期的な予後に悪影響を及ぼすことが分かっています。ALTや体重の数値が『基準値内だから安心』という言葉に惑わされず、数値のわずかな変化を捉える多角的な診断こそが早期発見の鍵となります。(出典:J Cancer Ther 2015; 6: 1124-1136

■ 3.プロテイン摂りすぎが肝臓に与えるダメージ

プロテインには植物性(大豆・エンドウ豆など)と動物性(ホエイ・カゼインなど)がありますが、肝臓への影響という観点では、種類よりも「量」が問題です。

一般的な警戒ラインとして、1日2〜3杯以上(各25〜30g)のプロテインを継続的に摂取している場合は、定期的な肝機能チェックをお勧めします。特に以下の方は要注意です。

・すでに肝臓疾患(脂肪肝・慢性肝炎・肝硬変)がある方

・腎機能が低下している方(肝腎連関:肝臓と腎臓は密接に連携しています)

・競技用のステロイド系サプリメントやBCAA(分岐鎖アミノ酸)を高用量で使用している方

【肝臓病専門医の深掘り:BCAAの正しい活用とエネルギー代謝】

医療現場においてBCAA(分岐鎖アミノ酸)は、筋肉の代謝をサポートし、肝臓の負担を減らすための重要な栄養療法として用いられています。実際に、適切な医療管理のもとでBCAAを補給すると、全身のエネルギー代謝(npRQ)が有意に維持・改善することを私は臨床研究で実証しています。しかし、自己判断で高用量のBCAAやプロテインを乱用することは、かえって肝臓を疲弊させる原因になります。アミノ酸を健康に役立てるためには、医学的根拠に基づいた正しい管理が不可欠です。(出典:Intern Med 2014; 53(14): 1469-75

■ 4.肝機能検査値(AST・ALT・γ-GTP)の正しい読み方

血液検査の肝機能項目は3つの数値を組み合わせて読むことが大切です。

・AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ):肝臓だけでなく心臓・骨格筋にも存在する酵素。ALTとともに上昇する場合は肝細胞障害を示します。

・ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ):肝細胞に特異的なダメージ指標。サプリメント・プロテインによる肝障害では、この値が特に上昇しやすいです。

・γ-GTP(ガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ):アルコールや薬物による肝障害に敏感に反応します。サプリメントによる肝障害でも上昇することがあります。

この3つの数値のパターンを肝臓病専門医が総合的に判断することで、原因の推定と適切な対応が可能になります。自己判断は危険ですので、異常値が出た場合は必ず肝臓病専門医にご相談ください。

■ 5.専門医が教える!安全なプロテイン・サプリメントの選び方

サプリメントを安全に使用するための4つのポイントをお伝えします。

1.品質認証マークを確認する:GMP(適正製造規範)やNSF(米国衛生財団)の認証を受けた製品は、品質管理が比較的しっかりしています。

2.単一成分で成分明記のものを選ぶ:「○○エキス配合」といった複合製品より、何が何mg入っているか明確な製品を選びましょう。

3.肝臓疾患がある場合は必ず医師に相談する:「サプリメントだから大丈夫」という考えは禁物です。必ず主治医に相談してから始めてください。

4.「食品で摂る」を基本の考え方にする:サプリメントに頼る前に、バランスのとれた食事からたんぱく質や栄養素を摂ることが最も安全で効果的です。

■ 6.肝臓病専門医からのメッセージ

当院では、健康意識の高い患者さんが「良かれと思って」始めたプロテインやサプリメントによって肝機能が悪化するケースを少なからず経験しています。

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、かなりダメージを受けるまで自覚症状が出にくいのが特徴です。だからこそ、定期的な血液検査で肝機能を確認することが大切です。

もし、血液検査でAST・ALT・γ-GTPといった数値の上昇がみられた場合には、すぐにサプリメント・プロテインを中止してください。血液検査でAST>ALTであるならば、肝臓の数値が悪化していく途中経過をみている可能性があり、今後さらに肝臓の数値が悪化して肝不全に陥るリスクがあります。サプリメント・プロテインを中止しても、AST>ALTの状態が続いて肝臓の数値の改善がみられないようなら、早めに入院治療を検討すべき状態と言えます。

■ 7.サプリメント・プロテインによるALT上昇が気になる方へ

当院では、最新のエビデンスに基づいた肝臓病に対する専門外来を毎日行っています。血液検査(AST・ALT・γ-GTP)の詳細な解析、超音波検査による肝臓の状態評価、そしてサプリメント・プロテインによる肝障害の診断・治療まで、総合的にサポートしています。

「プロテインを飲んでいてALTが上がった」「サプリメントをやめても肝機能がなかなか改善しない」などのお悩みを外来患者様からよく相談を受けます。まずは、肝機能障害の原因となりうるサプリメント・プロテインを中止することが先決ですが、それでも肝機能障害が改善しない場合にはお早めに当院にご相談ください。

当院では、専門的知識に基づいた標準治療に加えて、患者様ご自身のお尻の脂肪組織から幹細胞を抽出して培養し、十分量にまで増やした幹細胞を再びご自身の血管に戻す「肝臓再生医療」という最新の治療選択肢も提供しています。「肝臓再生医療」を行うことにより、半年から1年くらいかけて少しずつ肝機能を改善させうるため、肝不全へと進行してしまうリスクを低減できるものと考えています。当院での「肝臓再生医療」の症例数は20例を超え(2026年6月現在)、国内における「肝臓再生医療」をリードしています。当院で治療を受けられた後、多くの患者様で、肝機能の改善や倦怠感など自覚症状の改善がみられています。

安全性を第一に考えつつ、肝機能障害に悩まれている患者さま一人ひとりに寄り添った医療を実践しています。幹細胞点滴を行ったらおしまいではなく、しっかりとしたアフターフォローについても患者様からご評価いただいています。

ご遠方の方にはオンラインでの相談も受け付けております。パソコンやスマホの操作に不慣れな方は、当院までお電話にてお問い合わせいただくことも可能です。一人で悩みを抱え込まず、まずは標準治療と再生医療の両方とも熟知している当院にご相談頂けますと幸いです。

この記事の監修・執筆者

さいとう内科クリニック
院長:斉藤 雅也 Masaya Saito

  • 日本内科学会認定医
  • 日本肝臓学会専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本超音波医学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
院長 斉藤雅也 Masaya Saito

神戸大学医学部附属病院等の最前線で長年消化器・肝臓内科の臨床と研究に従事。医学博士。 標準治療では回復が困難な進行した肝炎や肝硬変に対し、新たな選択肢としての「肝臓再生医療」にいち早く取り組む。また、肝硬変患者さまの中で合併症(潜在性肝性脳症)を有する割合を明らかにし、カルニチンによる潜在性肝性脳症の治療効果を世界で初めて報告するなど、国際的な英文医学誌への論文掲載実績も多数(代表論文:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224)。科学的根拠に基づいた高度な専門知識と精緻な診断で、患者様の肝臓を守るサポートを行っています。
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さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり)
電話
  • 電話:078-967-0019
  • 携帯電話:080-7097-5109
アクセス
当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。