• 2026年7月14日

【肝臓病専門医が解説】脂肪肝・肝硬変の原因を解明!KIF12分子モーター研究の最新成果と当院のアプローチ

こんにちは。
神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

今回は、順天堂大学・東京大学の研究チームが発表した画期的な研究成果についてご紹介します。細胞内で物質を運ぶ「分子モーター」の一種であるKIF12の遺伝子変異が、脂肪肝炎や肝硬変の原因となることが世界で初めて明らかになりました。

この発見は、脂肪肝や肝硬変に悩む多くの患者様にとって、将来の新たな治療法開発につながる重要なニュースです。本記事では、この研究を詳しく解説するとともに、当院での脂肪肝・肝硬変への診療アプローチについてもお伝えします。

■1. 脂肪肝とは?基礎知識と現状

脂肪肝とは、肝臓の細胞(肝細胞)に中性脂肪が過剰に蓄積した状態を指します。一般的に、肝臓の重量の約5%以上が脂肪で占められると脂肪肝と診断されます。日本では成人の約30%、つまり3〜4人に1人が脂肪肝を持っているといわれており、非常にありふれた疾患です。

脂肪肝は大きく2種類に分けられます。ひとつはアルコールの過剰摂取による「アルコール性脂肪肝」、もうひとつはお酒をほとんど飲まないのに発症する「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」です。近年では、後者のMASLDが増加しており、肥満・2型糖尿病・脂質異常症・高血圧症などの生活習慣病との関連が深いことが知られています。

脂肪肝の怖いところは、初期段階ではほとんど自覚症状がないことです。「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓は、かなり状態が悪化するまでサインを出しません。そのため、健康診断で偶然発見されることが多く、放置してしまう方が少なくありません。しかし脂肪肝を放置すると、代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)→肝線維化→肝硬変→肝がんという深刻な経路をたどるリスクがあります。

■2. KIF12分子モーターとは?脂肪肝炎・肝硬変との関係

今回注目すべき発見は、「KIF12(Kinesin family member 12)」と呼ばれる分子モータータンパク質に関するものです。分子モーターとは、細胞内で物質を特定の場所へ運搬する役割を担うタンパク質で、細胞の正常な機能維持に不可欠な存在です。

順天堂大学・東京大学の研究チームは、ヒトとマウスを対象とした研究によって、KIF12の遺伝子変異が脂肪肝炎・肝硬変の原因となることを世界で初めて解明しました。具体的には、KIF12の機能が低下すると、肝細胞内の脂質代謝が乱れ、炎症が起こりやすくなり、最終的に肝臓の線維化(硬化)が進むことが分かりました。

これまで脂肪肝炎(MASH)や肝硬変の原因は「食生活の乱れ」「肥満」「遺伝的素因」などが複合的に絡み合うとされていましたが、分子レベルでのメカニズムの解明は限られていました。KIF12が病態の鍵となっていることが明らかになったことで、今後はKIF12の機能を保つ・あるいは高める治療薬の開発が期待されています。

研究チームは「KIF12の機能を保つ手法を開発することで、脂肪肝・肝硬変の治療に新たな道を拓ける可能性がある」としており、基礎研究から臨床応用への橋渡しが注目されています。

■3. 脂肪肝・肝硬変のリスク因子と対象者

脂肪肝・脂肪肝炎・肝硬変が進行しやすいのはどのような方でしょうか。以下のリスク因子を持つ方は特に注意が必要です。

【肥満・内臓脂肪過多】

体重が重い方、特にお腹まわりに脂肪がつきやすい内臓脂肪型肥満の方はリスクが高いとされています。BMI(体格指数)が25を超える方は要注意です。

【2型糖尿病・インスリン抵抗性】

血糖値が高い状態が続くと、肝臓への脂肪の蓄積が促進されます。糖尿病の方は脂肪肝炎(MASH)へと進行しやすく、肝硬変・肝がんのリスクも高まります。

【脂質異常症・高血圧】

コレステロールや中性脂肪が高い方、高血圧症の方も脂肪肝のリスクが高まります。これらは「メタボリックシンドローム」の構成要素であり、肝臓にも悪影響を与えます。

【遺伝的素因】

KIF12の研究が示すように、遺伝的な体質も脂肪肝炎・肝硬変の発症に関与している可能性があります。家族に肝臓病の方がいる場合は、特に定期的な検査を受けることをお勧めします。

【痩せ型の方も要注意】

「自分はやせているから大丈夫」と思っている方も油断は禁物です。筋肉量が少なく内臓脂肪が多い「隠れ肥満」の方や、急激な体重減少後に脂肪肝を発症することもあります。

■4. 院長の研究と論文紹介

院長は、肝臓疾患の研究を長年にわたって行ってまいりました。特に内臓脂肪と肝がんの予後(治療後の経過)に関する研究では、内臓脂肪の蓄積が肝がんの予後と密接に関係していることを報告しています。

脂肪肝から肝がんへの進行においては、内臓脂肪の管理が非常に重要であることが、私自身の研究でも示されています。日常の食事・運動習慣の見直しが、肝臓を守る最も基本的かつ効果的な手段であることを改めてお伝えしたいと思います。

※参考論文(J Cancer Ther 2015: 内臓脂肪と肝がん予後に関する研究):

また、MASLDと脂質代謝の関係についても研究を行っており、脂肪肝の治療戦略において脂質管理の重要性を論じています。

※参考論文(Curr Drug Targets 2015: NAFLD・脂質代謝に関する研究):

■5. 当院の診断・治療アプローチ

さいとう内科クリニックでは、脂肪肝・脂肪肝炎・肝硬変の早期発見・早期治療に力を入れています。

【血液検査(肝機能検査)】

AST・ALT・γ-GTP・ALP・総ビリルビンなどの肝機能マーカーを詳細に評価します。これらの値が高い場合、肝臓に何らかの炎症や障害が起きているサインです。特にALTが持続的に高い場合は、脂肪肝炎(MASH)への移行を疑い、精密検査を行います。

【腹部超音波(エコー)検査】

腹部超音波(エコー)検査は、脂肪肝の診断に非常に有効です。脂肪肝では肝臓が白く明るく映る「輝度上昇」が認められます。当院では、肝臓の形態・大きさ・エコー輝度を詳しく評価し、脂肪肝の重症度を判定します。

【肝線維化評価(FIB-4スコアやエラストグラフィ)】

血液検査の数値を組み合わせて計算するFIB-4インデックスや、超音波で肝臓の硬さを直接測るshear waveエラストグラフィ検査などで、肝線維化(肝臓の硬化)の程度を推定・評価します。

【生活習慣指導・食事療法・運動療法】

脂肪肝の治療の基本は、食事療法と運動療法です。1か月につき体重の3〜5%の減量で、脂肪肝が大幅に改善することが多くの研究で示されています。当院では、院長が、血液検査に基づいて患者様一人ひとりに詳細な問診を行いながら、個別性の高い食事・運動指導を行っています。

【肝臓再生医療(幹細胞治療)】

肝硬変が進行している方には、肝臓再生医療もご提案しています。当院では、患者様ご自身のお尻の脂肪組織から採取した幹細胞を用いた「自己脂肪由来幹細胞点滴療法」を提供しております。CLiP細胞のような最新研究にも注目が集まっていますが、Child Pugh Cといった進行した肝硬変患者様には治療適応がありません。当院ではChild Pugh Cといった進行した肝硬変患者様であっても、今すぐ受けることができる再生医療としてすでに確かな実績を積んでおります。当院で肝臓再生医療を受けられた患者様は、幹細胞点滴後、半年から1年くらいで、肝臓の数値の改善のみならず、倦怠感や腹水、黄疸、肝性脳症といった合併症の改善が得られるケースを多数報告しています。標準的な薬物療法では改善が難しい進行した肝硬変の方にとって、現実的な新しい治療選択肢となっています。

■まとめ・受診案内

今回ご紹介したKIF12分子モーターに関する研究は、脂肪肝から肝硬変へと進行するメカニズムを分子レベルで解明した画期的な成果です。この発見が新たな治療薬開発へとつながることが期待されます。

一方で、現時点では脂肪肝・肝硬変の予防・治療の基本は「生活習慣の改善」にあります。食事・運動・睡眠・禁酒を意識した日常生活の改善が、肝臓を守る最も確実な方法です。

「健康診断で脂肪肝を指摘された」「肝機能の数値が気になる」「肝硬変と言われた」という方は、ぜひ一度当院へご相談ください。神戸市西区のさいとう内科クリニックでは、肝臓病専門医として患者様一人ひとりに合わせた丁寧な診察・治療を行っています。

遠方にお住まいの方や、すぐに来院が難しい方のために、Curon(クロン)を利用したオンラインでの事前相談も受け付けております。パソコンやスマホの操作に不慣れな方は、診療時間内であれば、お電話でお問い合わせいただけます。外来診療が落ち着きましたら、こちらからお電話をかけ直させていただきます。どうぞ、お一人で悩まず、お気軽にお問い合わせください。

この記事の監修・執筆者

さいとう内科クリニック
院長:斉藤 雅也 Masaya Saito

  • 日本内科学会認定医
  • 日本肝臓学会専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本超音波医学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
院長 斉藤雅也 Masaya Saito

神戸大学医学部附属病院等の最前線で長年消化器・肝臓内科の臨床と研究に従事。医学博士。 標準治療では回復が困難な進行した肝炎や肝硬変に対し、新たな選択肢としての「肝臓再生医療」にいち早く取り組む。また、肝硬変患者さまの中で合併症(潜在性肝性脳症)を有する割合を明らかにし、カルニチンによる潜在性肝性脳症の治療効果を世界で初めて報告するなど、国際的な英文医学誌への論文掲載実績も多数(代表論文:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224)。科学的根拠に基づいた高度な専門知識と精緻な診断で、患者様の肝臓を守るサポートを行っています。
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さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり)
電話
  • 電話:078-967-0019
  • 携帯電話:080-7097-5109
アクセス
当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。