• 2026年7月17日

【肝臓病専門医が解説】肝硬変は治るのか?Efruxiferminで肝線維化逆転の可能性と2026年最新治療情報


こんにちは。
神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

「肝硬変はもう治らない」と思っていませんか?2025年1月に発表されたEfruxifermin(EFX)の臨床試験データは、その常識を覆す可能性を秘めています。肝硬変患者様において「肝線維化の逆転」という驚くべき効果が示されました。また、2026年春には日本の肝硬変診療ガイドラインも改訂され、一般公開に向けて準備が進められています。このガイドラインの中には、新薬の情報が続々と盛り込まれています。本記事では、肝硬変の最新治療動向と当院の診療アプローチについてお伝えします。

■1. 肝硬変とは?発症のメカニズムと病態

肝硬変とは、長期間にわたる肝臓の炎症により、正常な肝細胞が線維組織(コラーゲン)に置き換わり、肝臓全体が硬くなった状態を指します。これは代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)、ウイルス性肝炎(B型・C型)、アルコール性肝障害、自己免疫性肝疾患(自己免疫性肝炎・原発性胆汁性胆管炎)などの慢性肝疾患が進行した「終末像」です。

肝硬変になると、肝臓本来の機能(タンパク合成・解毒・代謝・胆汁分泌)が著しく低下します。初期(代償性肝硬変)は無症状のことが多いですが、病気が進行すると(非代償性肝硬変)、黄疸・腹水・浮腫・食道静脈瘤・肝性脳症などの深刻な症状が現れます。

日本では肝硬変の患者数は約40万人とも言われており、年間約3万人がこれに関連した肝不全・肝がんで亡くなっています。肝硬変は命に直結する重大な疾患であり、早期からの適切な管理が求められます。 従来、「肝硬変は進行を止めることはできても、元に戻す(逆転させる)ことはできない」とされてきました。しかし近年の研究では、適切な治療によって肝線維化が一部逆転する可能性が示されてきており、医学の常識が変わりつつあります。

■2. Efruxiferminとは?肝線維化逆転の可能性

2025年1月、米国で発表されたEfruxifermin(EFX)の第2相臨床試験の結果が世界に衝撃を与えました。EFXはFGF21(線維芽細胞増殖因子21)の改良型アナログ薬で、肝臓の脂質代謝と炎症・線維化を抑制する作用を持ちます。

この試験では、肝硬変(F4相当の線維化)の患者様を対象に、EFXを投与したグループと偽薬(プラセボ)を投与したグループで比較が行われました。結果として、EFX投与群では39%の患者様で肝線維化の改善(逆転)が確認されました。これはプラセボ群(約15%)と比べて統計学的に有意な差であり、肝硬変が「治る可能性がある疾患」へと変わりつつあることを示しています。

さらに、EFXは肝臓の数値(ALT・AST)の改善、肝臓の炎症スコアの改善にも効果が認められました。重篤な副作用は少なく、注射薬として月1〜2回程度の投与が想定されています。現在は更なる大規模試験(第3相)が進行中であり、早期の承認・実用化が期待されています。

■3. 2026年肝硬変診療ガイドライン改訂:新薬と治療オプションの拡充

2026年春、日本肝臓学会による肝硬変診療ガイドラインの改訂がなされました。前回の2020年版から5年ぶりとなる今回の改訂では、以下のような新しい内容が盛り込まれました。

【血小板減少症への新薬:アバトロンボパグ(ドプテレット)】

肝硬変では血小板が減少することが多く、出血リスクが高まります。アバトロンボパグは、血小板産生を促進するTPOアゴニストで、手術前などに血小板数を短期間で増加させる効果があります。2026年のガイドライン改訂でその使用指針が明確化される予定です。

【肝腎症候群への新薬:テルリプレシン】

肝腎症候群は、肝硬変・肝不全に伴い腎機能が急速に低下する重篤な合併症です。テルリプレシン(血管収縮薬)は、腎血流を改善し肝腎症候群の治療に有効とされており、新ガイドラインでの推奨記載が見込まれています。

【抗線維化薬・TGF-β阻害剤の開発動向】

肝線維化を直接抑制・逆転させる薬剤の開発も進んでいます。Firsocostat(FASN阻害薬)やTGF-β阻害剤など、複数の候補薬が臨床試験段階にあり、近い将来の実用化が期待されています。

【免疫チェックポイント阻害薬】

肝硬変に合併した肝がんに対しては、2023年よりデュルバルマブ+トレメリムマブの免疫複合療法が保険適応となっています。薬物療法における第一選択として、新ガイドラインでも引き続き強く推奨される見込みです。

■4. 院長の研究:肝硬変・栄養管理と再生医療

院長は、肝硬変の患者様における栄養管理と治療成績の向上について長年研究してきました。肝硬変になると、栄養状態が著しく悪化し、そのことが病状の悪化・合併症の増加につながります。そのため、適切な栄養サポートが肝硬変管理の重要な柱となります。

特に肝性脳症(意識障害)とタウリンの関係についての研究では、タウリン補給が肝性脳症の改善に有用である可能性を報告しています。肝硬変で起こりやすい高アンモニア血症・脳症の管理において、栄養介入の重要性を示す成果です。

※参考論文(Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224: 肝性脳症・タウリン・栄養管理):

また、肝がん治療後の栄養管理においてBCAA(分岐鎖アミノ酸)製剤の有用性についても研究しており、治療後の肝機能回復を促進し生活の質(QOL)を向上させるためのプロトコルの確立に取り組んでいます。

※参考論文(Intern Med 2014; 53(14): 1469-75: BCAA・肝がん治療後の栄養管理):

■5. 当院の肝硬変に対する診断・治療アプローチ

さいとう内科クリニックでは、肝硬変の患者様に対して以下の包括的な診療を行っています。

【肝硬変の診断・重症度評価】

血液検査(肝機能・凝固能・栄養状態)、腹部超音波検査、腹部CT検査などを組み合わせて、肝硬変の重症度(Child-Pugh分類・MELD score)を評価します。合併症(腹水・食道静脈瘤・肝性脳症など)の有無も確認します。

【薬物療法・利尿剤・アルブミン補充】

腹水に対しては利尿剤(スピロノラクトン・フロセミド)、低アルブミン血症にはアルブミン補充製剤を用います。肝性脳症には分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤・ラクツロース・エルカルチンなどを用いた管理を行います。

【栄養管理・BCAA補充】

肝硬変では必須アミノ酸(特にBCAA)が不足します。当院ではBCAA製剤の処方に加え、食事内容の指導を行い、肝臓への負担を最小限にしながら必要なエネルギーを確保できるようにします。就寝前のLES(Late Evening Snack:就寝前軽食)も積極的にお勧めしています。

【肝臓再生医療(幹細胞治療)】

肝機能が低下した肝硬変の患者様には、肝臓再生医療もご提案しています。当院では、患者様ご自身のお尻の脂肪組織から抽出し培養した幹細胞を用いた「自己脂肪由来幹細胞点滴療法」を提供しております。CLiP細胞のような最新研究にも注目が集まる中、当院では今すぐ受けることができる再生医療としてすでに確かな実績を積んでおり、通常の薬物療法では改善が難しい進行した肝硬変の方にとって、新たな選択肢となりえます。ご希望の方には、治療内容・費用・期間について詳しくご説明いたします。

まとめ・受診案内

Efruxiferminの臨床試験データが示すように、肝硬変は「進行を止める」だけでなく「改善する(逆転させる)」可能性が出てきています。また2026年の肝硬変診療ガイドライン改訂により、肝硬変の合併症管理・治療選択肢はさらに拡充されます。

「肝硬変と診断されたが、どうすればいいか分からない」「標準治療だけでなく再生医療も試したい」「肝硬変の最新治療について相談したい」という方は、ぜひ当院にご相談ください。

神戸市西区のさいとう内科クリニックでは、肝臓病専門医として最新のエビデンスに基づいた診療を行っています。患者様の状態・ご希望に合わせて、薬物療法・栄養管理・再生医療を組み合わせた最適なプランをご提案します。遠方にお住まいの方や、すぐに来院が難しい方のために、Curon(クロン)を利用したオンラインでの事前相談も受け付けております。パソコンやスマホの操作に不慣れな方は、診療時間内であれば、お電話でお問い合わせいただけます。外来診療が落ち着きましたら、こちらからお電話をかけ直させていただきます。どうぞ、お一人で悩まず、お気軽にお問い合わせください。

この記事の監修・執筆者

さいとう内科クリニック
院長:斉藤 雅也 Masaya Saito

  • 日本内科学会認定医
  • 日本肝臓学会専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本超音波医学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
院長 斉藤雅也 Masaya Saito

神戸大学医学部附属病院等の最前線で長年消化器・肝臓内科の臨床と研究に従事。医学博士。 標準治療では回復が困難な進行した肝炎や肝硬変に対し、新たな選択肢としての「肝臓再生医療」にいち早く取り組む。また、肝硬変患者さまの中で合併症(潜在性肝性脳症)を有する割合を明らかにし、カルニチンによる潜在性肝性脳症の治療効果を世界で初めて報告するなど、国際的な英文医学誌への論文掲載実績も多数(代表論文:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224)。科学的根拠に基づいた高度な専門知識と精緻な診断で、患者様の肝臓を守るサポートを行っています。
≫ 詳しい経歴や全研究実績はこちら

さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり)
電話
  • 電話:078-967-0019
  • 携帯電話:080-7097-5109
アクセス
当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。