• 2026年10月5日

【肝臓病専門医が解説】リリー・フランキーさんの「禁煙で14kg増・極度の脂肪肝」に学ぶ|急激な体重増加が肝臓を蝕むメカニズムとリセット法

こんにちは。

神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

先日、俳優のリリー・フランキーさん(62)がNHKスペシャル「病への挑戦」での取材にて、今年1月からの禁煙をきっかけに半年で14kg体重が増加し、健康診断で「極度の脂肪肝」と診断されたことを明かされました。

「持っている服がほぼ入らない」

「健康って難しいなって。早くたばこを吸わないと死ぬなって」

リリーさんらしいユーモアを交えて苦笑いされていましたが、診察室で日々患者様と向き合っている肝臓病専門医として、このニュースは非常に示唆に富む重要なテーマだと感じました。

「健康のために禁煙したのに、まさか肝臓を悪くしてしまうなんて…」

「たばこをやめたら一気に太ってしまい、健診の数値が跳ね上がった」

実は、当院の外来にもリリーさんと全く同じ悩みを抱えて受診される方が数多くいらっしゃいます。

禁煙自体は、肺がんや心筋梗塞、脳卒中などを防ぐために間違いなく素晴らしい決断です。しかし、「短期間での急激な体重増加」は、沈黙の臓器である肝臓にとって極めて大きな打撃となります。

今回は、なぜ禁煙後に急激に太ってしまうのか、その裏で肝臓に何が起きているのか、そして「極度の脂肪肝」から体を守るための具体的な対策について詳しく解説いたします。

■ 1. なぜ禁煙すると太り、肝臓に脂肪が溜まるのか?

たばこをやめると体重が増加する現象には、明確な医学的理由があります。

味覚や嗅覚が正常化し、食事が美味しくなる

タバコの煙による舌や鼻への刺激がなくなることで味覚が鋭敏になり、味の濃いものや白米、揚げ物、甘いものがこれまで以上に美味しく感じられます。

口寂しさによる間食の増加

口元が寂しくなることで、飴やチョコレート、スナック菓子、清涼飲料水などを無意識に口へ運ぶ回数が増えてしまいます。

ニコチン切れによる基礎代謝の低下

タバコに含まれるニコチンには交感神経を刺激して代謝を上げたり、食欲を抑制したりする作用があります。禁煙によってそれらの作用が抜けると、同じ食事量を摂っていてもカロリーが消費されにくくなります。

リリーさんのように「半年で14kg増」というペースは、1か月あたり2kg以上、体脂肪が蓄積し続けている計算になります。

急激に余剰となった糖質や脂質は皮下脂肪だけでなく、処理しきれずに肝細胞の中にも急速に中性脂肪として溜め込まれます。これが「短期間で極度の脂肪肝に陥る」メカニズムです。

■ 2. 「極度の脂肪肝」を放置してはいけない理由

脂肪肝はお酒を飲む人だけの病気ではありません。近年では、代謝異常を背景とした脂肪肝を「MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」と呼び、過食や肥満、運動不足によって誰にでも起こる国民病として警戒されています。

脂肪肝の恐ろしいところは、肝臓にどれだけ大量の脂肪が溜まっても、痛くもかゆくも自覚症状がまったくない点です。「服のサイズが合わなくなった」と外見の変化に苦笑いしている間にも、水面下では深刻な事態が進んでいる可能性があります。

脂肪肝から「脂肪肝炎(MASH)」への進行

肝臓に中性脂肪が過剰に溜まると、脂質が酸化して活性酸素を放出し、肝細胞が次々と破壊されて慢性的な炎症を引き起こします。

気づかないうちに「線維化(肝硬変)」へ

炎症が長期間続くと、傷ついた肝組織を修復しようとしてコラーゲン線維が張り巡らされ、肝臓が徐々に硬くなっていきます。これが線維化です。線維化が進行すると、元の柔らかい肝臓には戻りにくい「肝硬変」へ至り、将来的な肝がんの発症リスクが急激に跳ね上がります。

年末の人間ドックで異常がなかったとしても、半年で14kgも体重が増えれば、肝臓の内部環境は劇的に悪化してしまいます。決して「健診の注意書き」だけで片付けてはならない危険なサインです。

■ 3. 増えてしまった体重と肝脂肪をリセットするステップ

一度「極度の脂肪肝」と診断されても、絶望する必要はありません。

肝臓についた中性脂肪には「皮下脂肪よりも付きやすいが、落としやすい」という特徴があります。正しいアプローチを早期に開始すれば、肝臓本来の機能を取り戻すことができます。

ステップ①:まずは「現体重の5%減」を目標にする

いきなり増えた14kgすべてを落とそうとすると、無理な絶食に走り、かえって筋肉が落ちてリバウンドします。以前の報告では、現在の体重から「5%」減量するだけで肝臓の炎症を示す数値(ALTなど)が大幅に改善し、「7〜10%」減量すれば肝臓の炎症が正常化に向かうことが証明されています。まずは2〜3kgを確実に落とす計画を立てましょう。

ステップ②:液体の糖質と就寝前の間食を断つ

清涼飲料水、加糖缶コーヒー、エナジードリンク、フルーツジュースに含まれる果糖ブドウ糖液糖は、小腸で瞬時に吸収されて肝臓で直接中性脂肪に変換されます。水分補給は水やお茶、ブラックコーヒー(肝機能改善効果が報告されています)に切り替えましょう。

ステップ③:炭水化物の質を工夫する

白米や菓子パンをドカ食いするのではなく、食物繊維やレジスタントスターチ(難消化性デンプン)を多く含む食品を選びます。

  • 冷たいおにぎり(冷やすことでデンプンが食物繊維様に変化し、糖の吸収をブロック)
  • 青みが残るグリーンバナナ(腸内環境を整え、肝脂肪の蓄積を抑制)
  • もち麦、玄米、海藻類、ブロッコリーなどの緑黄色野菜

ステップ④:良質なタンパク質を意識する

鶏ささみ、豆腐、納豆、青魚(サバや鮭などオメガ3系脂肪酸を含むもの)をしっかり摂ることで、筋肉量を維持し、肝臓の再生を促します。

■ 4. 健診で「脂肪肝」を指摘されたら受けるべき精密検査

血液検査のASTやALTが正常範囲内、あるいはわずかな上昇にとどまっていても、肝臓の内部で線維化が静かに進行しているケースは珍しくありません。

健診で脂肪肝を指摘された場合は、一般的な血液検査に加えて以下の精密検査を受けることが推奨されます。

線維化スコアの確認(FIB-4インデックス、M2BPGi)

血液検査のデータ(年齢、AST、ALT、血小板数など)から計算するFIB-4インデックスや、採血によるM2BPGiを測定することで、肝臓の硬化リスクを早期に推測できます。

超音波エラストグラフィー検査

体に針を刺すことなく、痛みのない特殊な超音波を用いて、肝臓の硬さ(線維化)を数値とカラー画像で正確に測定します。

■ 5. さいとう内科クリニックからのメッセージ

禁煙を決意されたリリー・フランキーさんの行動は、心血管や呼吸器を守る上で間違いなく素晴らしい一歩です。せっかくタバコをやめられたのですから、次は増えてしまった体重と肝臓の脂肪をしっかりとコントロールし、本当の健康を手に入れていただきたいと願っております。

兵庫県神戸市西区のさいとう内科クリニックでは、日本肝臓学会認定の肝臓病専門医が、患者様一人ひとりの詳細な血液検査や腹部超音波検査、超音波エラストグラフィー検査をもとに、無理のない生活習慣指導や内服治療を行っています。

「禁煙してから一気に太ってしまい、健診結果が心配」

「脂肪肝と言われたが、何から手をつければいいか分からない」

そうした不安をお持ちの方は、症状が現れる前の今こそ、ぜひお気軽に当院へご相談ください。

また、すでに脂肪肝から慢性肝炎、肝硬変(Child-Pugh分類グレードCを含む)へと進行してしまった患者様に対しても、従来の標準治療を徹底した上で、ご自身の脂肪組織を用いた「自己脂肪由来幹細胞治療(肝臓再生医療)」という新しい治療選択肢をご提案しています。

当院で実際に肝臓再生医療を受けられた患者様(30名)で、幹細胞点滴後、半年から1年を経て、肝臓の数値の改善や、倦怠感、腹水、下肢のむくみ、黄疸、肝性脳症の改善がみられるケースを多数報告させていただいており、大いに期待できる治療法だと自負しております。

遠方にお住まいの方や、長時間の移動が体に堪えるという患者様のために、当院ではご自宅にいながらスマートフォンで受診できる「オンライン事前相談」を導入しています。

お手元にある直近の血液検査結果データや画像データ(CT・MRI・エコー等)をご用意いただき、現在の全身状態や体力を丁寧に伺った上で、再生医療の適応があるかどうかを肝臓病専門医である院長が総合的に判断いたします。

また、「インターネットやスマートフォンの操作が苦手」という患者様やご家族様は、どうぞ直接、診療時間内に当院へお電話をおかけください。

お電話をいただきましたら、まずは再生医療に精通した専任スタッフが状況をお伺いし、院長から詳しくご説明させていただくお時間をご案内いたします。

他院で治療法がないと言われた患者様も決して諦めないでください。

大切な肝臓を守るために、そして、あとから後悔しないように、今日から二人三脚で治療に取り組みましょう。

■ 6. 肝臓再生医療に関する重要事項(費用・リスク・承認状況)

患者様に心からご納得いただいた上で治療を選択していただくため、当院では治療のメリットだけでなく、費用や限界、リスクについても包み隠さず事前にお伝えしております

・診療区分および費用:

本治療は公的医療保険が適用されない「自由診療」です。

・脂肪採取と初回投与:3,300,000円(税込)
・2回目以降の追加投与:1回につき 1,100,000円(税込)

・医薬品医療機器等法上の位置づけ:

本治療で用いる自己脂肪由来間葉系幹細胞は、医薬品医療機器等法上の承認を受けたものではなく、確立された標準治療ではありません。

・効果とリスクについて:

治療効果には個人差があり、すべての方に同一の改善効果を保証するものではありません。病状や体質によっては、期待される変化が見られない場合もあります。また、脂肪採取部位の内出血や感染、細胞点滴時のアレルギー反応や発熱などの副作用が生じるリスクがまれにあります。詳しいリスクについては、事前の診察時に院長より丁寧にご説明いたします。

・法的手続きおよび管理体制:

医療法人社団好也会 さいとう内科クリニック
自己脂肪由来幹細胞を用いた肝機能障害治療
再生医療等提供計画番号:PB5230080
審査:日本再生医療協会 特定認定再生医療等委員会(認定番号 NA8200001)
特定細胞加工物製造事業者:CZEN CLINIC Cell Processing Center(施設番号 FC3220189)
この記事の監修・執筆者

さいとう内科クリニック
院長:斉藤 雅也 Masaya Saito

  • 日本内科学会認定医
  • 日本肝臓学会専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本超音波医学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
院長 斉藤雅也 Masaya Saito

神戸大学医学部附属病院等の最前線で長年消化器・肝臓内科の臨床と研究に従事。医学博士。 標準治療では回復が困難な進行した肝炎や肝硬変に対し、新たな選択肢としての「肝臓再生医療」にいち早く取り組む。また、肝硬変患者さまの中で合併症(潜在性肝性脳症)を有する割合を明らかにし、カルニチンによる潜在性肝性脳症の治療効果を世界で初めて報告するなど、国際的な英文医学誌への論文掲載実績も多数(代表論文:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224)。科学的根拠に基づいた高度な専門知識と精緻な診断で、患者様の肝臓を守るサポートを行っています。
≫ 詳しい経歴や全研究実績はこちら

さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり)
電話
  • 電話:078-967-0019
  • 携帯電話:080-7097-5109
アクセス
当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。