• 2026年5月25日

「肝硬変の末期」と言われたら?余命の不安に向き合い、進行を食い止めるための最新医療

「肝硬変がかなり進んでいます」「末期の状態です」——医師からこのような言葉を投げかけられたとき、目の前が真っ暗になるような思いをされるのは当然のことです。ご本人だけでなく、支えるご家族にとっても、そのショックや余命に対する不安は計り知れません。

しかし、現代医療において「末期」という言葉は、必ずしも「もう何もできない」という意味ではありません。今回は、肝機能の客観的な評価指標である「Child-Pugh(チャイルド・ピュー)分類」を正しく理解し、余命の不安に向き合いながら、進行を食い止めつつ改善させるための最新の治療法について解説します。

自分の肝臓はどのステージ?正確な指標「Child-Pugh分類」を知る

医学的に肝機能の重症度を判定する際、世界的に用いられるのが「Child-Pugh分類」です。以下の5つの項目を点数化し、その合計点でA、B、Cの3段階(グレード)に分類します。これらは、肝臓の「解毒する力」と「合成する力」がどれだけ残っているかを示す重要な指標です。

  • 脳症の有無(意識障害など):解毒機能の低下を表します。
  • 腹水の有無(お腹の張り):血管内に水分を保つ力の低下を表します。
  • 血清ビリルビン値:黄疸の指標であり、老廃物を処理・排泄する力の低下を表します。
  • 血清アルブミン値:栄養状態の指標であり、肝臓がタンパク質を合成する力の低下を表します。
  • プロトロンビン時間:血液の固まりやすさの指標であり、止血に必要なタンパク質を合成する力の低下を表します。

【ABCの3段階のクラス分け】

グレードA(軽度):5〜6点。通常の日常生活が可能です。
グレードB(中等度):7〜9点。適切な治療と安静が必要です。
グレードC(高度):10〜15点。これがいわゆる「末期」に近い状態とされます。

インターネット上には余命に関する様々な数字が溢れていますが、これらはあくまで統計上のデータに過ぎません。大切なのは、今の自分のクラスがどれで、どの数値を改善すれば次のステージへ戻れるのかを正確に把握することです。

肝硬変の進行を食い止め、QOLを維持するために

「末期」とされるグレードCの状態からでも、適切な管理によって病気の進行を緩やかにしたり、症状(合併症)を和らげたりすることは可能です。

1.合併症の徹底管理

腹水、黄疸、肝性脳症といった合併症を一つひとつ丁寧に取り除いていくことが、肝臓への負担を減らす第一歩です。

当院の院長は、肝硬変の深刻な合併症である肝性脳症の臨床研究において、潜在性肝性脳症の罹患率と、カルニチンによる潜在性肝性脳症の治療効果を世界で初めてで報告しています。

(出典:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224

こうした専門的な知見に基づき、一人ひとりの代謝状態に合わせた最適な合併症管理を行います。

2.栄養状態の改善と「深夜食(LES)」の重要性

肝硬変の患者様は、食事から得たエネルギー(グリコーゲン)を肝臓に貯蔵する機能が低下しているため、夜寝ている間だけでも極端な栄養不足(飢餓状態)に陥ります。すると、体は自分の筋肉を分解してエネルギーを作ろうとするため、こむら返りが起きます。また、自分の脂肪組織をも分解してエネルギーを作ろうとするため、ケトン体が発生することにより、倦怠感が出現します。そしてどんどん体力が奪われていきます。

これを防ぐために、就寝前に消化の良い軽食(おにぎりなど)を摂る「LES(Late Evening Snack:深夜食)」という食事療法を取り入れ、筋肉の分解を防ぐことが将来の見通しを大きく左右します。また、就寝前にLESの代わりに、経口栄養剤(アミノレバンEN)を内服することで、より一層エネルギー代謝を良くします。当院では、食欲低下がみられる肝硬変患者様に、就寝前のアミノレバンENの内服を強く推奨しています。

諦める前に知ってほしい、最新の「肝臓再生医療」

これまでの標準治療では、一度硬くなってしまった肝臓を元に戻すことは非常に困難でした。そのため、グレードCのような重症例では「肝移植」しか道がないと言われることも少なくありません。

しかし、新たな治療法として注目されているのが「幹細胞を用いた肝臓再生医療」です。

ご自身のお尻の脂肪から抽出し培養して増やした幹細胞を点滴で投与すると、幹細胞が分泌する成長因子(パラクライン効果)によって、肝臓の慢性的な炎症が鎮められます。さらに、硬くなった線維化組織に働きかけて柔軟性を取り戻すスイッチを入れることで、残された肝細胞が再び働きやすい環境を整えます。

再生医療は、既存の治療だけでは「限界」とされてきたステージの肝硬変患者様にとって、肝機能のグレードをまずはCからBへ改善し、QOL(生活の質)を高めて一歩前へ進むための有力な治療法になり得ます。

まとめ:一人で抱え込まず、肝臓病専門医と「これから」についてお話しましょう

「末期」という言葉に縛られ、絶望する必要はありません。肝臓は非常に我慢強く、そして再生の可能性を秘めた臓器です。正確な診断に基づき、最新の医療を組み合わせることで、残された肝機能を守り、穏やかな時間を積み重ねていくことは可能です。

「もう打つ手がない」と諦める前に、まずは今の状態を正しく評価し、どのような治療選択肢があるのかを一緒に考えていきましょう。

今の治療に「限界」を感じて諦めていませんか?

日々の診療の中で、「これ以上、今の標準治療だけでは肝機能を回復させることが難しい」と告げられ、流れに身を任せて諦めかけている患者様を数多く診てきました。

もうダメだと諦めかけている方は、標準治療のみで判断して決して諦めないでください。当院は、肝臓病に特化した再生医療を実践しており、症例数も多く、国内でリードしています。決して希望を捨てないでください。まだできることは残されていると思います。

さいとう内科クリニックでは、標準治療ではカバーしきれない進行した肝炎・肝硬変の患者様を少しでもサポートしたいという強い思いから、新たな治療法として「幹細胞を用いた肝臓再生医療」を提供しています。

「もう打つ手がないのだろうか」と一人で抱え込まず、まずは当院にご相談ください。遠方の方やご来院が難しい方でも、ご自宅からお話しいただける「オンライン事前相談」を受け付けております。また、お電話でも相談を受け付けておりますのでお気軽にお問い合わせください。外来診療がひと段落しましたら、再度かけ直させていただきます。

この記事の監修・執筆者

さいとう内科クリニック
院長:斉藤 雅也 Masaya Saito

  • 日本内科学会認定医
  • 日本肝臓学会専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本超音波医学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
院長 斉藤雅也 Masaya Saito

神戸大学医学部附属病院等の最前線で長年消化器・肝臓内科の臨床と研究に従事。医学博士。 標準治療では回復が困難な進行した肝炎や肝硬変に対し、新たな選択肢としての「肝臓再生医療」にいち早く取り組む。また、肝硬変患者さまの中で合併症(潜在性肝性脳症)を有する割合を明らかにし、カルニチンによる潜在性肝性脳症の治療効果を世界で初めて報告するなど、国際的な英文医学誌への論文掲載実績も多数(代表論文:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224)。科学的根拠に基づいた高度な専門知識と精緻な診断で、患者様の肝臓を守るサポートを行っています。
≫ 詳しい経歴や全研究実績はこちら

さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり)
電話
  • 電話:078-967-0019
  • 携帯電話:080-7097-5109
アクセス
当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。