• 2026年9月13日

【肝臓病専門医が解説】肝硬変とは?原因・初期症状・Child-Pugh分類から最新の治療法まで徹底解説

こんにちは。

神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

「肝臓の数値が高止まりしている」

「健康診断で肝硬変の疑いと言われた」

「家族が肝硬変と診断され、今後どうなるのか不安」

このようなお悩みを抱えていませんか?

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、慢性的なダメージを受けても初期にはほとんど自覚症状が出ません。そのため、だるさや黄疸、腹水、下肢のむくみなどの症状に気づいたときには、病状がすでにかなり進行しているケースが少なくありません。

しかし、肝硬変を正しく理解し、早期に適切な治療と生活管理を行えば、病気の進行を抑え、穏やかな生活を長く維持することが可能です。さらに近年では、従来の標準治療に加えて「再生医療」という新たな治療選択肢も広がっています。

今回は、肝臓病専門医の視点から、肝硬変の基礎知識から原因、分類、症状、検査法、そして最新の治療アプローチまで分かりやすく解説します。

■1. 肝硬変とは:肝臓が硬くなって変形していく病態

肝硬変とは、肝炎ウイルスやアルコール、脂肪肝などによる慢性的な炎症が長期間続いた結果、肝細胞が破壊と修復を繰り返し、「線維(コラーゲン)」という硬いタンパク質が肝臓全体に増殖してごつごつと硬くなり、次第に変形していく病態です。

正常な肝臓は、以下のような生命維持に欠かせない重要な働きを担っています。

  • 代謝・貯蔵機能: 食事から得た栄養素を体で使える形に変え、グリコーゲン等として蓄える
  • 解毒・排泄機能: アルコール、薬、体内の老廃物(アンモニアなど)を分解・無毒化する
  • タンパク質合成機能: 血管内の水分を保つ「アルブミン」や、出血を止める「血液凝固因子」を作る
  • 胆汁の生成・分泌: 脂肪の消化吸収を助ける胆汁を作る

肝硬変になると、これらの機能が著しく低下する(肝不全のリスク)だけでなく、硬くなった肝臓に血液が流れ込みにくくなり、腸から肝臓へ血液を送る血管(門脈)の圧力が高まる「門脈圧亢進症」を引き起こします。

■2. 肝硬変の2つのステージ:代償期と非代償期

肝硬変は、病状の進行度によって大きく2つに分類されます。

代償性肝硬変(初期〜中期)

肝臓の一部が線維化して硬くなっているものの、残された健康な肝細胞が働きをカバー(代償)し、肝機能を維持できている状態です。自覚症状はほとんどなく、血液検査や画像検査で初めて見つかることが大半です。適切な治療を行えば、この状態を長く維持できます。

非代償性肝硬変(進行期)

肝臓のダメージが限界を超え、残った肝細胞でも機能を補いきれなくなった状態です。黄疸、腹水、下肢のむくみ、肝性脳症、食道静脈瘤などの明確な症状が現れ、日常生活にも大きな支障をきたします。

重症度を測る「Child-Pugh(チャイルド・ピュー)分類」

肝硬変の重症度や予後を評価する国際的な指標として「Child-Pugh分類」が用いられます。

評価項目123
血清アルブミン値 (g/dL)3.5超2.8〜3.52.8未満
総ビリルビン値 (mg/dL)2.0未満2.0〜3.03.0超
プロトロンビン時間 (%)70超40〜7040未満
腹水なし軽度(薬で制御可)中等度以上(難治性)
肝性脳症なし軽度(1〜2度)重度(3度以上)

※アルブミンとプロトロンビン時間の組み合わせが治療後の肝機能回復に関連することは、院長の研究でも報告されています。

出典:

  • Child-Pugh A(5〜6点): 代償期(軽症)
  • Child-Pugh B(7〜9点): 非代償期への移行・中等症
  • Child-Pugh C(10〜15点): 非代償期(重症)

■3. なぜ肝硬変になるのか?主な原因疾患

かつてはウイルス性肝炎が大半を占めていましたが、近年は生活習慣病や飲酒に伴う肝硬変が急増しています。

【肝硬変を引き起こす主な原因】

  • 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD / MASH)

   ⇒ 酒を飲まない人の脂肪肝炎であり、糖尿病や肥満、脂質異常症を背景に急増しています。

  • アルコール性肝障害

   ⇒ 長期にわたる多量飲酒によるものであり、近年、肝硬変の原因の約35%を占めています。

  • ウイルス性肝炎(B型肝炎・C型肝炎)

   ⇒ 血液や体液を介して感染し慢性化します。現在は優れた抗ウイルス薬が登場しています。

  • 自己免疫性肝疾患

   ⇒ 免疫の異常で肝臓や胆管を攻撃することにより引き起こされます(自己免疫性肝炎: AIH、原発性胆汁性胆管炎: PBCなど)。

  • 薬剤性肝障害

   ⇒ 医薬品やサプリメント、健康食品の過剰摂取や体質不適合により、肝障害が出現します。

■4. 見逃してはいけない肝硬変のサインと合併症

肝硬変が進行すると、全身に様々なSOSサインが現れます。

  • 黄疸(おうだん): 肝臓で処理できないビリルビンが血液に漏れ、白目や皮膚が黄色くなります。皮膚の強いかゆみを伴うことも多いです。
  • 腹水・浮腫(むくみ): アルブミン低下と門脈圧亢進により、お腹に水が溜まり(腹部膨満感・息苦しさ)、手足がむくみます。
  • 食道・胃静脈瘤: 門脈の血流が滞り、食道や胃の血管がコブのように腫れ上がります。破裂すると大量吐血を引き起こすとても危険な合併症です。
  • 肝性脳症: アンモニアなどの有害物質が脳に達し、昼夜逆転、物忘れ、手の震え(羽ばたき振戦)、重症化すると昏睡に陥ります。初期の軽微な認知症状(ミニマル肝性脳症)は本人が気づきにくいため、見落とされがちです。院長は、肝疾患特異的なQOL問診票(CLDQ)がミニマル肝性脳症の早期スクリーニングに有効であることを国際医学雑誌にて報告しており、外来での問診にも活用しています。

※出典:

  • 皮膚・血管の異常: 首や前胸部に赤い斑点ができる「くも状血管腫」、手のひらの親指・小指の付け根が赤くなる「手掌紅斑」がみられます。
  • ホルモン代謝異常: 男性で乳房が膨らむ「女性化乳房」、性機能障害などがみられます。
  • 筋力低下(サルコペニア)とこむら返り: 肝臓のエネルギー代謝異常に伴い筋肉量が減少し、夜間の足のつり(こむら返り)も頻発します。

■5. 肝硬変の検査と診断:痛みのない最新検査へ

早期発見のためには、定期的な検査が欠かせません。

1.血液生化学検査:

AST、ALT、γ-GTPなどの肝酵素に加え、アルブミン、血小板数、プロトロンビン活性(PT%)、総ビリルビン、アンモニア、肝線維化マーカー(M2BPGiやFIB-4インデックス)を測定します。院長は、血液中の特殊なマーカー(NX-PVKA等)を組み合わせた非侵襲的な肝線維化予測モデルの研究を行っており、患者様に身体的負担をかけることなく肝臓の「硬さ」を評価するアプローチを外来に取り入れています。

出典:

2.腹部超音波検査(エコー):

肝臓の表面の凹凸、萎縮、腹水の有無、脾臓の腫大(脾腫)、腫瘍の有無・大きさを観察します。

3.超音波エラストグラフィー(SWE):

特殊な超音波・せん断波を用いて、「針を刺さず、傷も痛みもなく」肝臓の硬さ(線維化ステージF0〜F4)を数値化します。

4.CT・MRI検査:

肝臓の形態変化、シャント(異常血管)、肝がんの併発有無を精密に評価します。

■6. 肝硬変の治療:標準治療と栄養・生活習慣管理

肝硬変の治療目標は、「原因の除去」「肝機能の維持」「合併症の予防とコントロール」です。

原因に応じた根本治療

  • ウイルス性: B型肝炎に対する核酸アナログ製剤、C型肝炎に対する抗ウイルス薬(DAA)の内服治療が行われます。
  • アルコール性: 完全な「断酒」が最大の治療です。
  • MASLD/MASH: 食事療法、運動療法、減量、生活習慣病の厳格な管理といった地道な治療が行われます。

合併症の薬物療法

  • 腹水・浮腫: 塩分制限に加え、抗アルドステロン薬(スピロノラクトン)やループ利尿薬(フロセミド)、バソプレシン受容体拮抗薬(トルバプタン)の内服や、アルブミン製剤の点滴を行います。
  • 肝性脳症: 難吸収性二糖類(ラクツロース)、腸管非吸収性抗菌薬(リファキシミン)、エルカルニチン、亜鉛製剤の内服治療が行われます。
  • 食道・胃静脈瘤: 内視鏡的結紮術(EVL)や硬化療法(EIS)による予防的治療が行われます。

栄養療法と運動(筋肉を守る)

肝硬変患者様では、夜間にエネルギーが枯渇して筋肉の分解が進みやすいため、「就寝前軽食(LES: Late Evening Snack)」や「BCAA製剤(アミノレバンEN、リーバクト等)」によるアミノ酸補給が推奨されます。また、無理のない範囲でのウォーキングや軽い筋トレ(スクワット等)を行い、第二の肝臓である筋肉量を維持することが大切です。

■7. 進行した肝硬変に対する新たな治療選択肢「肝臓再生医療」

「標準治療を続けているが、肝機能の数値が改善しない」

「非代償期に入り、腹水やだるさが辛い」

かつて肝硬変は「一度硬くなったら二度と元に戻らない不可逆的な病態」とされてきました。しかし近年、再生医療の進歩により、新たな希望が生まれています。

当院では、国の「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、厚生労働省に治療計画を提出・受理された医療機関として、「自己脂肪由来幹細胞治療(自由診療)」を提供しております。

当院の肝臓再生医療の特徴

  • ご自身の脂肪細胞を使用: お尻の皮下脂肪組織を採取し抽出した幹細胞を培養して点滴投与するため、拒絶反応のリスクが極めて低い治療です。
  • 抗炎症・線維化抑制・組織修復: 幹細胞が傷ついた肝臓に集まり(ホーミング効果)、慢性的な炎症を抑え、肝臓の線維化の進展抑制や組織修復を促します。
  • 徹底した安全性(XF無血清培地の採用): 提携培養施設(CZEN Cell Processing Center)にて、塞栓症やアレルギーリスクを抑える安全な培養技術を採用しています。
  • 進行した肝硬変(Child-Pugh C)にも対応: 再生医療を実施するにあたり、侵襲の大きい肝生検などを伴わないため、進行した肝硬変の患者様にも広くご相談いただけます。

■8. まとめ・肝臓病専門医からのメッセージ

肝硬変は命に関わる重篤な疾患ですが、決して「診断されたら終わり」ではありません。

早期に発見して適切な原因治療を行えば進行を食い止めることができ、進行した状態であっても、徹底した標準治療・栄養管理、そして再生医療を組み合わせることで、QOL(生活の質)の改善と未来への希望をつなぐことができます

「健康診断で肝機能の異常を指摘された」
「原因不明のだるさやむくみが続いている」
「肝硬変の最新治療について詳しく聞きたい」

このような方は、どうぞ一人で抱え込まずに当院へご相談ください。

神戸市西区のさいとう内科クリニックでは、従来の標準治療と再生医療の両方ともに精通している院長自らが、血液検査・腹部超音波検査・超音波エラストグラフィーによる精緻な診断から、生活習慣・栄養指導、真新しい再生医療まで、患者様お一人おひとりに寄り添った医療を一貫してご提供いたします。

遠方にお住まいで通院が難しい方のために、自宅にいながらスマートフォンで受診できるオンライン事前相談(Curon)を受け付けております。また、診療時間内にお電話でのお問い合わせも可能です。院長の外来診療が落ち着きましたら、こちらからお電話をかけ直させていただきます。肝臓再生医療の専任スタッフがおりますので、臆することなく、お気軽にご連絡ください。

この記事の監修・執筆者

さいとう内科クリニック
院長:斉藤 雅也 Masaya Saito

  • 日本内科学会認定医
  • 日本肝臓学会専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本超音波医学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
院長 斉藤雅也 Masaya Saito

神戸大学医学部附属病院等の最前線で長年消化器・肝臓内科の臨床と研究に従事。医学博士。 標準治療では回復が困難な進行した肝炎や肝硬変に対し、新たな選択肢としての「肝臓再生医療」にいち早く取り組む。また、肝硬変患者さまの中で合併症(潜在性肝性脳症)を有する割合を明らかにし、カルニチンによる潜在性肝性脳症の治療効果を世界で初めて報告するなど、国際的な英文医学誌への論文掲載実績も多数(代表論文:Hepatol Res 2016; 46(2): 215-224)。科学的根拠に基づいた高度な専門知識と精緻な診断で、患者様の肝臓を守るサポートを行っています。
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さいとう内科クリニック
院長
斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology
所在地
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり)
電話
  • 電話:078-967-0019
  • 携帯電話:080-7097-5109
アクセス
当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。