- 2026年10月1日
肝硬変の原因が大きく変わっています
―「ウイルスの病気」から「生活習慣の病気」へ―

こんにちは。
神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。
肝臓病専門医として日々肝硬変の患者様を診察していますが、ここ十数年で「肝硬変になる原因」そのものが大きく変わってきたことを実感しています。
今回は、その変化を肝臓病専門医の視点から、最新のデータとともに徹底解説します。
■1.かつて肝硬変の主役は「肝炎ウイルス」でした

一昔前まで、肝硬変といえばB型・C型肝炎ウイルスが原因の大部分を占めていました。日本肝臓学会の全国調査によると、2007年までは肝硬変の73.4%がウイルス性肝炎に由来していました。
ところが、C型肝炎には飲み薬(直接作用型抗ウイルス薬)でウイルスを排除できる時代が到来し、B型肝炎も飲み薬(核酸アナログ製剤)でコントロールできるようになりました。抗ウイルス薬や核酸アナログ製剤の発展により、大多数の症例でウイルスの制御が可能となったのです。
■2.最新調査ではアルコールが第1位に

2023年の日本肝臓学会総会で5年ぶりの全国調査が行われ、2024年に論文として発表されました。全国75施設で2018年から2021年の間に新たに肝硬変と診断された15,517例を解析した結果は次のとおりです。
※引用文献
| 1位:アルコール 35.4% 2位:C型肝炎 23.4% 3位:脂肪性肝炎(旧NASH、現MASH) 14.6% 4位:B型肝炎 8.1% |
■3.約10年前と今を比べると
では、10年前と比べて具体的にどのくらい変わったのでしょうか。前回の全国調査で2014〜2017年に診断された約1万7千例のデータ(約10年前)と、最新の2018〜2021年のデータを並べてみます。参考として、2007年以前のデータも載せました。
| 成因 | 2007年以前 | 約10年前 (2014〜2017年) | 最新 (2018〜2021年) |
| アルコール | 13.7% | 24.9%(2位) | 35.4%(1位) |
| C型肝炎 | 58.6% | 40.2%(1位) | 23.4%(2位) |
| 脂肪性肝炎(NASH/MASH) | 2.0% | 9.1%(3位) | 14.6%(3位) |
| B型肝炎 | 13.6% | 9.0%(4位) | 8.1%(4位) |
図 約10年前(2014〜2017年)と最新(2018〜2021年)の比較

最も大きな変化はC型肝炎です。約10年前には肝硬変の40.2%を占める圧倒的な第1位でしたが、最新の調査では23.4%とほぼ半分近くにまで減りました。これは、C型肝炎を飲み薬で治せるようになった成果といえます。
その一方で、アルコールは24.9%から35.4%へ、脂肪性肝炎は9.1%から14.6%へと大きく増え、ついにアルコールがC型肝炎を抜いて第1位になりました。B型肝炎は9.0%から8.1%とわずかに減少しています。
さらに2007年以前と比べると、その変化はいっそう鮮明です。当時はウイルス性肝炎が肝硬変の7割以上を占め、脂肪性肝炎はわずか2.0%でした。それが今では約7倍に増えています。ほんの十数年のあいだに、肝硬変は「ウイルスの病気」から「生活習慣の病気」へと主役が入れ替わったのです。
なお、最新の全国調査は2018〜2021年に診断された方のデータで、次回の調査は数年後になる見込みです。C型肝炎の治療が進んでいることを考えると、現在はこの傾向がさらに進んでいる可能性があります。
■4.なぜアルコールや脂肪肝が増えているのか

お酒の消費量全体は減っているのに、アルコールによる肝臓病は減っていません。女性の飲酒や飲酒層の二極化、肥満人口の増加がアルコール関連肝疾患の増加に寄与していると考えられています。
また、脂肪肝は2023年に呼び名が変わり、NAFLD(ナッフルディー)はMASLD(マッスルディー)、NASH(ナッシュ)はMASH(マッシュ)へと変更されました。肥満・糖尿病・高血圧・脂質異常症といった代謝の異常が深く関わる病気であることを、名前に反映させたものです。
「お酒を飲まないから大丈夫」ではなく、「メタボがあれば肝臓も要注意」という時代になりました。さらに、代謝異常にある程度の飲酒が重なる「MetALD」という分類も新たに設けられています。
■5.気づかないうちに進むのが肝臓病の怖さ

アルコールや脂肪肝による肝障害は、自覚症状がほとんどないまま進行します。肝炎ウイルスのように「陽性・陰性」で見つかる仕組みもないため、気づいたときには肝硬変になっていた、という方も少なくありません。
肝硬変に至ると肝予備能の低下と門脈圧亢進によってさまざまな症状が現れますが、いまだ根本的な治療法は存在せず、肝硬変に至る前に治療介入することが重要です。日本肝臓学会は2023年に「奈良宣言2023」を発表し、健診などでALT(GPT)が30を超えたら、まずはかかりつけ医に相談することを呼びかけています。健康診断の結果をぜひ一度見直してみてください。
■6.肝硬変と診断された方へ

一方で、すでに肝硬変と診断された方にとっても、原因がわかることには大きな意味があります。禁酒や体重・血糖の管理など、原因に応じた対策を続けることが、肝臓の状態を保つための土台になるからです。
当院では、こうした基本的な治療に加えて、ご自身のお尻の皮下脂肪組織を採取し、抽出し培養した幹細胞を点滴で体内に戻す肝臓再生医療にも取り組んでいます。アルコール、脂肪肝、ウイルスなど肝硬変の原因は問いません。
肝臓再生医療の対象となる条件として、基準はシンプルに2つだけです。
| 条件1. 当院までご来院いただける体力があること (ご家族の付き添いや車椅子での来院も可能です) 条件2. 体内に活動性の悪性腫瘍がないこと (肝がんを含め、現在治療中や厳重な経過観察中のがんがないこと) |
当院では、腹水や下肢のむくみ、黄疸、肝性脳症といった自覚症状のある非代償性肝硬変の患者様も対象としており、豊富な診療実績を有しています。
また、保険診療での基本的な治療と再生医療の両方ともに精通している院長自らが、血液検査、腹部超音波検査、超音波エラストグラフィー検査による精緻な診断から、生活習慣改善、栄養指導、新しい再生医療まで、患者様お一人おひとりに寄り添った医療を一貫してご提供いたします。
遠方にお住まいで通院が難しい方のために、自宅にいながらスマートフォンで受診できるオンライン事前相談(Curon)を受け付けております。また、診療時間内にお電話でのお問い合わせも可能です。院長の外来診療が落ち着きましたら、こちらからお電話をかけ直させていただきます。肝硬変の治療について相談したい方はお気軽に当院までお問い合わせください。
【当院の肝臓再生医療について】
| 治療名: 自己脂肪由来幹細胞を用いた肝機能障害治療(再生医療等提供計画番号 PB5230080) 費用(自由診療・税込): ・初回330万円(脂肪採取・培養・1回目の幹細胞点滴) ・2回目以降の幹細胞点滴は1回につき110万円。 ※状態によって脂肪採取前に輸血が必要な場合は別途費用がかかります 治療効果とリスク: 治療効果には個人差があり、すべての方に同一の改善効果を保証するものではありません。病状や体質によっては、期待される変化が見られない場合もあります。また、脂肪採取部位の内出血や感染、幹細胞点滴時のアレルギー反応や発熱の副作用が生じるリスクがあります。詳しいリスクについては、事前の診察時に院長より丁寧にご説明いたします。 |
■肝硬変の原因の変遷と、肝臓再生医療がもたらす新たな希望

ここ十数年の間に、肝硬変の主な原因はウイルス性肝炎から、アルコールや脂肪肝(MASLD/MASH)を背景とした生活習慣病へと大きく変化しました。特に脂肪肝は、お酒を飲まない方や痩せている方でも発症するリスクがあり、放置してMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)へ進行すると、肝硬変や肝がんへと至る危険性が高まります。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、初期段階では自覚症状がほとんど出ないため、定期的な健康診断を受け、ALT(GPT)の数値が専門医の推奨する理想値(16 U/L以下)を超えている場合は、放置せずに早めに専門医へ相談することが重要です。
万が一、進行した肝硬変と診断された場合でも、当院では患者様ご自身の脂肪組織から採取・培養した幹細胞を用いる「自己脂肪由来幹細胞治療」という新たな選択肢を提供しており、拒絶反応のリスクを抑えつつ、慢性的な炎症の抑制や線維化の改善による肝機能やQOL(生活の質)の向上が期待できます。
- 院長
- 斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology - 所在地
- 〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり) - 電話
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- 電話:078-967-0019
- 携帯電話:080-7097-5109
- アクセス
- 当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。
