- 2026年9月8日
【肝臓病専門医が解説】MELDスコアとは?肝移植の優先順位を決める重症度スコアと肝臓再生医療の可能性

こんにちは。
神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。
「医師からMELDスコアについて説明を受けたが、具体的にどのような指標なのか知りたい」
「肝硬変が進み、肝移植以外の治療選択肢がないか探している」
外来において、進行した肝硬変の患者様やそのご家族からこのような切実なご相談をいただくことが多くあります。
肝硬変の重症度を測る指標としては「Child-Pugh(チャイルド・ピュー)分類」が広く知られていますが、近年、肝移植の優先順位決定や末期肝不全の短期予後を正確に予測する世界基準として用いられているのが「MELD(メルド)スコア」です。
今回は、肝臓病専門医の視点から、MELDスコアの仕組みや計算方法、Child-Pugh分類との違い、そして当院が注力する「肝臓再生医療(自己脂肪由来幹細胞治療)」における意義について詳しく解説します。
■ 1. MELDスコアとは:客観的データで末期肝疾患の予後を予測する世界基準

MELDスコア(Model for End-Stage Liver Disease)は、米国メイヨークリニックで開発された、末期肝疾患の重症度および短期的な予後(3カ月死亡リスク)を予測するためのスコアリングシステムです。
もともとは門脈圧亢進症に対するカテーテル手術(TIPS)後の予後を予測するために考案されましたが、その高い予測精度が実証され、現在では米国臓器移植ネットワーク(UNOS)や日本臓器移植ネットワーク(JOT)において、12歳以上の脳死肝移植登録患者様の優先順位(医学的緊急度)を決定する最重要基準として採用されています。
■ 2. MELDスコアの計算式と構成項目

MELDスコアは、以下の「3つの血液検査データ」のみを用いて算出されます。
① 血清クレアチニン値(mg/dL):腎機能の指標
② 血清総ビリルビン値(mg/dL):肝臓の解毒・排泄力の指標
③ PT-INR(国際標準比):肝臓の血液凝固因子合成能の指標
PT-INRは「プロトロンビン時間(PT)」を国際標準化した数値です。フィブリノゲンや第Ⅱ・Ⅶ・Ⅹ因子など、肝臓でのみ合成される凝固因子の産生能が落ちると延長します。肝硬変の進行度を反映する鋭敏な指標として、MELDスコアの中でも特に重みが大きい項目です。
出典:
Serum albumin and prothrombin time as combined predictors of prognosis in liver cirrhosis
計算式は以下の対数計算に基づきます。
MELDスコア = 9.57 × ln(クレアチニン) + 3.78 × ln(総ビリルビン) + 11.2 × ln(PT-INR) + 6.43
※lnは自然対数。過去1週間に2回以上の血液透析を受けた場合はクレアチニン値を4.0として計算します。
算出された数値は四捨五入され、6点から40点の整数で表されます。数値が高くなるほど肝機能および腎機能の障害が深刻であり、短期的な生命予後が厳しいことを示します。
■ 3. MELDスコアとChild-Pugh分類の違い
臨床現場では、病態に応じてChild-Pugh分類とMELDスコアが使い分けられています。両者には明確な特徴の違いがあります。
・主観の排除と客観性
Child-Pugh分類には「腹水」や「肝性脳症」といった診察所見(自覚症状)が含まれるため、医師の判断による主観が入り込む余地があります。一方、MELDスコアは完全に数値化された血液データのみで算出されるため、評価者によるブレがなく、公平で客観的な評価が可能です。
・「肝腎連関(肝臓と腎臓の相互作用)」の評価
肝硬変が進行すると、腎臓の血流が低下して「肝腎症候群」と呼ばれる重篤な腎機能障害を併発しやすくなります。MELDスコアはクレアチニン(腎機能)を組み込んでいるため、肝臓だけでなく全身の生命維持能力をよりシャープに反映できます。
一般的には、日常診療の病期把握にはChild-Pugh分類が、肝移植の適応検討や緊急度の判定にはMELDスコアが用いられます。
■ 4. スコアの目安と臨床的判断
MELDスコアの点数と病態の目安は以下の通りです。
・9点以下:軽度〜中等度の肝障害。比較的病状が安定している状態です。
・10〜14点:肝機能低下が目立ち始める段階。慎重な経過観察と専門的治療が必要です。
・15点以上:進行した肝不全状態。国内外の基準において「肝移植を本格的に検討する境界ライン」とされています。
・20点以上:短期的な死亡リスクが急激に上昇する重篤な状態で、一刻を争う集学的管理が求められます。
肝移植待機リストにおいても、スコアが高い患者様ほど上位に位置づけられ、病状の変化に応じて定期的なスコアの再提出と更新が行われます。
■ 5. 肝臓再生医療(自己脂肪由来幹細胞治療)とMELDスコア

「MELDスコアが高くなり、肝移植を勧められたがドナーが見つからない」
「高齢や全身状態を理由に移植手術が難しく、別の治療手段を探している」
「移植に至る前の代償期〜移行期の段階で、なんとか病勢を押しとどめたい」
従来の標準治療では、利尿薬やアルブミン製剤、分岐鎖アミノ酸製剤の投与など「機能を失いつつある肝臓を外から補助する対症療法」が主体であり、肝硬変を根本から改善させる内科的手段は存在しませんでした。
そこで当院がご提案しているのが、厚生労働省に再生医療等提供計画を受理された医療機関として実施する「自己脂肪由来幹細胞治療(肝臓再生医療・自由診療)」です。
・幹細胞がもたらす組織環境の改善
患者様ご自身のお尻の皮下脂肪組織を採取し抽出した幹細胞を安全に培養し、点滴で体内に投与します。幹細胞は傷ついた肝組織へと集まり(ホーミング効果)、慢性的な炎症を抑えるとともに、線維化(硬化)を抑制・修復するシグナルを分泌します。肝臓内の微小循環を改善し、残された肝細胞の機能を活性化させるアプローチです。
・MELDスコア構成因子の総合的ケア
幹細胞治療によって肝臓の微細な血流や機能が安定すると、
・総ビリルビンの排泄がスムーズになる
・凝固因子の合成能(PT-INR)が改善する
・門脈圧のコントロールにより腎血流が保たれ、クレアチニンの悪化を防ぐ
といった好循環が期待されます。MELDスコアを構成する肝機能・腎機能の数値を多角的にモニタリングし、病勢の安定・改善を目指します。
■ 6. まとめ・受診のご案内

MELDスコアは、肝臓と腎臓が現在どれだけの余力を残しているかを客観的に教えてくれる極めて重要な指標です。
肝硬変が進行し、数値が悪化傾向にある場合でも、早期に的確なアプローチを行うことで、病態の悪化スピードを抑え、生活の質(QOL)を維持できる可能性があります。
・血液検査からMELDスコアやChild-Pugh分類の正確な状態を知りたい
・肝硬変と診断され、将来の悪化や移植といった治療選択肢に不安を感じている
・身体への負担が少ない再生医療という新たな治療法を検討したい
神戸市西区のさいとう内科クリニックでは、院長が精密な血液検査や腹部超音波検査、超音波エラストグラフィー検査を駆使して的確に診断し、治療計画を立てています。そして、従来の標準治療と最先端の再生医療の両方ともに精通している院長が、患者様一人ひとりに合わせた治療プランをご提案しています。当院では、症状がまだ現れていない肝炎や代償性肝硬変の患者様だけでなく、腹水や足のむくみ、黄疸、肝性脳症など症状のある多くの非代償性肝硬変の患者様にも、再生医療による治療実績があります。幅広い肝硬変患者様にとって可能性を秘めた治療法であると考えています。
遠方にお住まいで直接の来院が難しい方に向けて、自宅にいながらスマートフォンでご相談いただける「オンライン事前相談(Curon)」体制を整えております。また、診療時間内にお電話でのお問い合わせも受け付けております。院長の外来診療が落ち着きましたらこちらからお電話をかけ直させていただきます。どうぞ一人で抱え込まずにお気軽に当院までご相談ください。
- 院長
- 斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology - 所在地
- 〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり) - 電話
-
- 電話:078-967-0019
- 携帯電話:080-7097-5109
- アクセス
- 当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。
