- 2026年8月16日
肝臓の線維化を「痛みなし・傷なし」で早期発見!超音波エラストグラフィーという革命的検査法

こんにちは。
神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。
「肝臓の線維化」という言葉をご存知でしょうか。慢性的な肝炎が続くと、肝臓の中にコラーゲン線維が蓄積して肝臓が徐々に硬くなっていきます。
この「線維化」が肝硬変・肝がんへの前段階として非常に重要です。かつては肝生検(針を刺す検査)でしか正確に診断できませんでしたが、近年、超音波エラストグラフィーという技術により、体に傷をつけずに肝臓の硬さをリアルタイムで評価できるようになりました。今回はこの革命的な検査法について詳しく解説します。
■ 1. 肝臓の線維化とは何か?なぜ早期発見が重要なのか

肝臓の線維化とは、慢性的な肝細胞の炎症・壊死が繰り返されることで、肝臓内にコラーゲンなどの線維組織が蓄積し、本来のやわらかな肝臓が次第に硬くなっていく変化のことです。
原因となる疾患は多岐にわたります。B型慢性肝炎・C型慢性肝炎・MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)・アルコール性肝障害・自己免疫性肝炎・原発性胆汁性胆管炎(PBC)などが代表的です。
線維化の程度は国際的にF0〜F4の5段階で分類されています。
- F0: 正常
- F1: 軽度線維化
- F2: 中等度線維化
- F3: 高度線維化
- F4: 肝硬変
F4(肝硬変)に至ると、肝細胞がんの発生リスクが年率約5〜7%と著しく高くなります。また、肝硬変では腹水・食道胃静脈瘤・肝性脳症といった重篤な合併症が生じるリスクもあります。
特に重要なのは、F3以前の段階であれば、原因疾患を適切に治療することで線維化の進行を止めるだけでなく、線維化そのものを改善(逆転)させることができるということです。たとえば、C型慢性肝炎に対する直接作用型抗ウイルス薬(DAA)でウイルスを排除した後、肝線維化が改善した症例が多数報告されています。線維化の早期発見と早期治療こそが肝硬変・肝がんへの進行を防ぐ最大の武器です。
■ 2. 従来の肝線維化診断の限界:肝生検という「ゴールドスタンダード」の問題点

肝臓の線維化を診断する従来の「ゴールドスタンダード」は肝生検でした。肝生検とは、局所麻酔下で細い針を皮膚から肝臓に刺し、肝組織の一部を採取して顕微鏡で観察する検査です。
組織を直接見るため線維化の程度を最も正確に診断できますが、以下のような重要な問題点があります。
侵襲性の問題
肝臓に針を刺すため出血・疼痛・感染などの合併症リスクがあります。重篤な大量出血は0.1%以下と稀ですが、入院安静が必要となることが多く、患者さんへの身体的・精神的負担が大きい検査です。
サンプリングエラーの問題
肝臓は約1〜1.5kgという大きな臓器ですが、生検で採取できる組織はそのわずか約50,000分の1に過ぎません。肝臓内でも線維化の分布が不均一な場合、採取した部位によって線維化ステージの評価が異なることがあります。
反復検査の困難さ
痛みや出血リスクから定期的な反復検査が患者さんに受け入れられにくく、経時的な線維化の変化(治療効果の評価)を追うことが難しいという問題があります。
■ 3. 超音波エラストグラフィーの原理・種類と診断精度

エラストグラフィー(elastography)とは、組織の「硬さ(弾性:elasticity)」を測定・画像化する技術の総称です。肝臓が線維化して硬くなると、弾性波の伝わる速度が速くなる物理的性質を利用して、肝臓の硬さを客観的な数値(kPa:キロパスカル、または伝播速度 m/s)で示します。肝臓全体のおよそ500分の1を評価することができ、肝臓内での線維化の分布が不均一な場合であっても線維化ステージの評価が安定して得られます。
① トランジェントエラストグラフィー(FibroScan®)
専用探触子を右季肋部(肋骨の下・右脇腹)に当て、低周波振動を加えることで生じるせん断波の伝播速度を測定し、肝硬度(LSM: Liver Stiffness Measurement)をkPaで算出します。世界で最も普及している肝エラストグラフィー装置で、日本では2011年から保険診療(慢性肝疾患の線維化診断)が可能になりました。肝硬変(F4)の診断感度・特異度はともに80〜90%以上と高精度です。
② ポイントSWE(p-SWE)・2D-SWE(当院採用)
通常の腹部超音波(エコー)装置に搭載されたエラストグラフィー機能です。普通のエコー検査と同じ探触子・同じ検査室・同じ流れで行えるため、患者さんの追加的な負担がほとんどありません。FibroScanと同等の診断精度を持ちながら、腹水がある場合や肋間が狭い場合・BMIが高い場合でも測定しやすいというメリットがあります。当院ではこのSWE法によるエラストグラフィーを通常のエコー検査とセットで提供しています。
③ MRエラストグラフィー(MRE:Magnetic Resonance Elastography)
MRI装置を用いて肝臓全体の弾性を広範囲にわたり測定する方法で、現時点で最も高精度とされています。肝臓全体(約25〜30cm²以上の断面)を評価できるためサンプリングエラーが少なく、軽度〜中等度の線維化(F1〜F2)の検出にも優れています。ただし、MRI装置が必要なため検査コストが高く、施行できる施設も限られています。通常の超音波エラストグラフィーで評価困難な場合や、より精密な評価が必要な場合に行われます。
■ 4. 院長による非侵襲的肝線維化評価モデルと肝代謝に関する取り組み

私はこれまで、肝線維化の非侵襲的評価や肝臓病患者さんにおける栄養管理の研究に力を入れてきました。
【非侵襲的肝線維化評価モデルに関する研究】
腫瘍マーカーの一種であるNX-DCP(PIVKA-IIの変異型)を活用したC型慢性肝炎患者様における非侵襲的な肝線維化評価モデルを構築し、その臨床的有用性を検証しました。血液マーカーのみで肝線維化ステージを精度高く推定できることを示した研究であり、患者さんへの侵襲(身体的負担)を最小化した肝疾患管理につながる知見です。
※出典:
【BCAAと代謝改善に関する研究】
ラジオ波焼灼療法(RFA)を受けた肝がん患者さんにおけるBCAA(分岐鎖アミノ酸)補充療法がエネルギー代謝や血清アルブミン値に与える影響を検討しました。がん治療後の肝機能や肝代謝を維持・改善し、将来の再発治療に備えるうえで、適切な栄養管理がいかに重要であるかを示した研究です。
※出典:
これらの研究で得た知識を臨床に活かし、当院では血液マーカー(FIB-4インデックスなど)と超音波エラストグラフィーを組み合わせた「非侵襲的総合肝線維化評価」を提供しています。肝生検という侵襲的検査の必要性を最小限に抑えながら、正確な病態把握と適切な治療方針の決定を目指しています。
■ 5. 当院での肝線維化評価・エラストグラフィー検査の実際の流れ

さいとう内科クリニックでは、肝線維化の評価を以下のステップで行っています。
ステップ1:血液検査によるスクリーニング
肝機能酵素(AST・ALT・γ-GTP・ALP・LDH)、血清アルブミン、PT(プロトロンビン時間)、血小板数、ヒアルロン酸(肝星細胞が産生する線維化マーカー)、IV型コラーゲン7S(線維化の指標)を測定します。これらの結果から計算されるFIB-4インデックス(年齢・AST・血小板・ALTから算出)は、肝線維化の簡便なスクリーニング指標として用いています。
ステップ2:腹部超音波検査 + SWEエラストグラフィーの実施
FIB-4インデックスで肝線維化が疑われた場合(FIB-4 ≥ 1.30の場合は精査推奨)や、慢性肝疾患の経過観察としてSWEエラストグラフィーを実施します。この検査は通常の腹部エコー検査と同じ流れで行われ、お腹にゼリーを塗って探触子を当てるだけです。痛みなし・傷なし・放射線被曝はありません。所要時間は腹部エコー検査とSWEエラストグラフィーで約15〜20分です。
ステップ3:結果の評価と定期フォロー
エラストグラフィーの結果(数値)から肝線維化ステージ(F0〜F4)を推定し、原因疾患に応じた治療方針と次回受診間隔を決定します。治療開始後は定期的にエラストグラフィーを繰り返し、肝線維化の改善・悪化を客観的に評価します。「治療をがんばった成果が数値で見える」という点は、患者さんの治療に対するモチベーション維持にも大きく貢献します。
■ 6. まとめ・受診のご案内

超音波エラストグラフィーの登場により、肝臓の線維化診断は「針を刺す時代」から「痛みなしで計測する時代」へと大きく進化しました。高い精度で肝臓の硬さ(肝線維化の程度)を評価できるこの検査は、慢性肝疾患を持つすべての患者さんにとって重要なモニタリングツールです。
肝臓の線維化は早期(F1〜F2)であれば改善可能です。しかし発見が遅れれば肝硬変(F4)・肝がんへと進行してしまいます。
- 「健康診断で肝臓の値が高いと言われた」
- 「B型・C型肝炎のキャリアであることがわかっている」
- 「脂肪肝と言われているが詳しく調べたことがない」
- 「かかりつけ医から精密検査を勧められた」
という方は、ぜひお早めに当院にご相談ください。
さいとう内科クリニック(神戸市西区)では、肝臓病専門医として超音波エラストグラフィーを含む総合的な評価を行い、一人ひとりに合った治療・生活指導をご提供します。早期発見・早期治療で、あなたの大切な肝臓を一緒に守りましょう。
さらに、「肝硬変(F4)と診断されたが、どうすればいいか分からない」「標準治療だけでなく再生医療も試したい」「肝硬変の最新治療について相談したい」という方も、当院で相談可能です。
遠方にお住まいの方や、すぐに来院が難しい方のために、Curon(クロン)を利用したオンラインでの事前相談も受け付けております。パソコンやスマホの操作に不慣れな方は、診療時間内であれば、お電話でお問い合わせいただけます。外来診療が落ち着きましたら、こちらからお電話をかけ直させていただきます。
- 院長
- 斉藤雅也 Masaya Saito
日本肝臓学会 肝臓病専門医 Hepatologist, The Japan Society of Hepatology - 所在地
- 〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3
(駐車場18台あり) - 電話
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- 電話:078-967-0019
- 携帯電話:080-7097-5109
- アクセス
- 当院は、神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。
